7月FOMCで再度0.75%利上げへ
タカ派スタンスだったFRB議長
今回のFOMCの主なポイントは以下の通り。
- FRBは75bp(0.75%ポイント)の利上げを決定した
- FRB議長は会見で7月FOMCでも75bp
もしくは50bpの利上げをする公算が大きいことを示唆した - ただし、「75bpが一般的になるとは思っていない」とも述べた
- ドットチャートが3月時点の内容から大幅に引き上げられ、
中立金利(潜在成長率を維持する政策金利)もこれまでの2.375%から2.5%に
引き上げられた - メンバーによる経済見通しでは、22年と23年の米実質GDP成長率が各1.7%、
1.7%と大幅に引き下げられた - メンバーによるインフレ予想も22年のコアPCEデフレータ―が4.3%と、
前回予想の4.1%から上方修正された。
もっとも、市場の注目はパウエルFRB議長の記者会見。この内容で大体、FRBの本音がわかるからだ。以下、3点について取り上げてみた。
更なるペースアップを躊躇しないと強調
第一点に、パウエル議長は今後の利上げペースはデータ次第であり、インフレ抑制のためには更なるペースアップを躊躇しないと強調したことである。会見の冒頭で、議長は今回の75bpの利上げは異例の大きさであり、この利上げ幅が今後もベースラインになるとは考えていないと述べた。
またブラックアウト期間(FOMC会合前の一定期間、メンバーは一切の関係発言をしてはいけないことになっている)中にデータを得たことも異例であり、今回のような事態が頻繁に起こるとは思えないとも述べた。
こうした会見内容の流れから、金融市場ではFRBが身構えていたほど、タカ派化するわけではないとの安堵感が生まれたかもしれない。
しかし、記者会見の内容をよく聞くと、パウエル議長は今後の75bpの利上げを全く否定しておらず、むしろ今回のように、強いインフレを示すデータが今後も出てくれば、利上げペースを速める可能性が高いことが示唆された。
議長は冒頭、インフレ率は極めて高いと述べ、高インフレによって多くの国民が困難に直面しており、これを是正することがFRBの使命であること、インフレ圧力が明確に弱まっているという説得力のあるデータが得られるまで機敏に対応する必要性と、不確実性を増すことを避ける努力を続けると強調した。
そして、今回の75bpの利上げの背景には6月10日に発表された5月CPIと6月のミシガン大学の長期期待インフレ率の上振れが材料になったとも指摘した。
パウエル議長は、前回のFOMC時も、必要と判断したなら、今後躊躇なく迅速に金利を中立的な水準まで引き上げると発言していた。
今回の会合と同様に、今後、インフレに関わる経済データが上振れすれば、また75bpの利上げ議論が沸騰する公算は十分に予想されよう。
インフレ期待の高まりへの警戒を強調
第二点に、インフレ期待の高まりへの警戒を強調している点だ。
議長は、ミシガン大学の長期期待インフレ率(3.3%、5月は3%だった、08年以来の高水準)は、非常に目を見張る結果だったとし、深刻に受け止めなければいけないと述べた。
インフレ期待が一段と上昇すれば100bpの利上げも視野に入るのか?との質問に対して、議長は数字で示すことを避けたが、データ次第であると回答した。こうした発言内容から、インフレ期待の上昇を何としても抑制するとの決意が示されたと言ってよい。
この期待インフレの議論に関連して、興味深いのはインフレ率のヘッドライン(総合指数)と、コア指数のどちらを重視するかについてだ。議長はヘッドラインのインフレ率が期待インフレにとってより重要となり、その影響を注視する必要があると指摘した。
本来、コアに含まれない部分はFRBの制御可能範囲外となるため、コアを重視するのが金融政策の常識ではあるが、現状は食品価格やガソリン価格が大きく上昇しており、法律上はヘッドラインインフレ(総合物価指数)に責任を有するとも述べた。
以上の発言内容を考えれば、ヘッドラインのインフレ高止まりによって期待インフレ率が明確に低下しなければ、結果的に利上げペースが加速するとも捉えられる。
そのことを議長から聞かされているバイデン政権が、ドル高(輸入物価抑制)容認と、ガソリン価格抑制策の早期実現に必死なのは当然といえよう。
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(この記事は 2022年6月21日に書かれたものです)
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