電力逼迫の危機 本当の狙い
政府は6月7日、今年の夏と冬に想定される電力需給の逼迫に備えた総合対策を決定した。7~9月に家庭や企業で生活や経済活動に支障のない範囲で節電を要請する。
家庭では、
- 室内温度28℃
- カーテンやすだれで遮光
- 不要な照明を消す
- 冷蔵庫の設定を「強」から「中」に
オフィスでは、
- 照明を半分程度に間引く
- パソコンの電源をこまめに切る
其の他、スーパーでは業務用冷蔵庫の効率引用、飲食店では看板や外部照明の消灯など実に細かい指示が記載されている。
ようするに「緊急電力需要逼迫対策」の発動だ。理屈としては、「燃料調達の不安定化に加え、発電設備の余力も薄くなっている電力自由化と再エネ導入拡大により、火力発電所の廃止が続いている」とのこと。
経産省の資料には「2016年度からの5年間、休止等状態の火力が増加しつつ、毎年度200~400万キロワット程度の火力発電が廃止となっている」とある。
こうした状況から、予備率(最低でも3%)は低下を続けており、今年3月22日の段階で早くも「電力需給逼迫警報」を出したうえ、来年1月、2月には東京電力管内の予備率はマイナス1.7%、マイナス1.5%になるとの見通しを示していた。
国民に前倒しで広報することによって周知徹底を狙ったのだろう。こうした状況において、我が国では既存の原発を活用すべしとの声も上がっているが、実際、原発を緊急活用することは可能なのだろうか。
原子力規制委員会の審査の状況等により、具体的にどの程度が「戦力」として見込めるか。
原発は直ちに作動再開可能?
自民党の電力安定供給推進議員連盟は、今年3月15日、「ロシアによるウクライナ侵略等を踏まえた原発の緊急的稼働について」と題する緊急決議を取りまとめ、萩生田経産相に申し入れを行っている。
政治が動くということは、国内の世論も変化しつつあるということだろう。3月28日の日経世論調査結果によると、安全が確認された原発の再稼働について、「再稼働を進めるべきだ」が53%、「進めるべきでない」が38%だった。
2021年9月調査では44%、46%だったことを踏まえれば、エネルギー供給危機や、価格高騰を経験し、国民の危機感が高まり、原子力の活用を求める声が強まっているのだろう。
日本は原子力を活用すべきだとの論は海外からも提起されており、フィナンシャル・タイムズ(英)は3月末、「日本は世界第2位のLNG(液化天然ガス)の輸入国であるが、原子力を再稼働すれば輸入量を減らすことができるため、その分を欧州に回すことができる」と指摘する記事を掲載している。
欧州だけでない。エネルギー資源の争奪戦は購買力の低い途上国を直撃している。代替手段を持つ国はそれを活用することで、資源の需給バランスを確保することに貢献すべきとの声は当然ある。
しかし、具体的に早期稼働は可能なのか?
福島第一原発事故を契機に、日本は原子力規制に関する抜本的見直しを行い、現在各原発において新規制基準に適合するよう対応が進められているところであり、工事の進捗も立地地域の理解も様々だ。
自民党電力安定供給推進議連は、原子力規制委員会(以下・規制委)に対して、大きく二つの対応を求めている。
一つは、発電用原子炉の設置許可に係る期間の短縮だ。標準処理期間は2年と定められているが、それを大幅に超えて長期化する事例が多発している。
事業者の対応の遅延や、双方のコミュニケーションの問題もあるが、規制委も認めているとおり、その審査活動には改善すべき点も多い。
もう一つの喫緊の対応として自民党議連が提案したのは、「安全の確保を優先しつつ、
稼働に係る規制上の制約を一時的に除外する等の措置を講ずること」だ。
具体的な例として、「再稼働後の発動プラントが、特定重大事故等対処施設の設置期限を超えることで、設置完了まで停止を余儀なくされている現状に鑑み、設置期限の見直しを図るなど、稼働継続を可能とする措置を講ずること」があげられている。
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(この記事は 2022年6月19日に書かれたものです)
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