円安にはブレーキが期待できないのか
投機筋の円キャリー取引が主役
ドル円が遂に1ドル=135円20銭を上抜け(13日東京市場)し、1998年10月以来23年8ヵ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。もう、こうなってくると経済・金融的側面からの分析は通用しなくなる。
シカゴIMM筋を中心とした「投機」が主流・主役ということになり、彼らが一体、どこまでの円安を狙っているのか、ポジション整理に何を材料として使おうとしているのかを見定めていく以外に見通しの手法などない。
つまり、150円説でも120円への円戻り説でも、それを否定しうる根拠が通用しなくなったと言っていい。これまでは、ドル円レートと米長期金利は極めて相関が強く、円安レベルもほとんど米長期金利上昇度合いで説明できてきた。
しかも米長期金利の上限は様々な分析によって、3%超あたりが限界と考えていた。ゆえにドル円はトレンドの推移から1ドル130円あたりが上限だとの見方を取ってきたし、今でも、この予測は常識的と自負している。
したがって、135円20銭という大きな節目をいとも簡単に抜けてきたという事態は理屈ではあるまい。投機的な円キャリー取引が主因とみる。
ECBは6月の理事会で7月1日にも量的緩和を終了すると決定した。そして7月中に政策金利を引き上げる構えをみせている(マイナス金利は9月に脱却)。すると、秋以降、ゼロ金利近傍で資金調達ができるのは、日本円だけになる。
日米の政策金利差は拡大していくゆえ、円資金を調達し、米ドルで短期運用して2~3%の利鞘を獲得できる機会が生まれる。
こうした運用環境を使って、海外投資家(窓口はIMM投機筋)による円キャリー取引が拡大していくと為替は小刻みなコレクションを伴いながら確実に円安を強めていくことになる。
難しいのは、そうした円キャリー取引がどのくらいの円安を誘発するかである。見通しなど無い。無いなりに過去を探ってみると、2002年1月~4月頃のドル円が目に止まった。このときは、米長期金利で推計した円安水準から10円~15円の乖離水準まで円安が進行した。
当時も「IMM投機筋の仕業」とされたが、これと同じ現象が起きると仮定するなら「米長期金利動向による推計130円+10~15円」=1ドル140円~145円今年年末にかけて起こるということになりかねない。
6月FOMCと原油価格動向に注意
投機筋が目先的材料視しやすいイベントや流れとして「6月FOMC」と、「原油価格のさらなる上昇予測」を取り上げておこう。
6月FOMC(14日・15日)は当レポート発行時点で終了しているが、もう一段のドル上昇を誘い込む可能性を指摘したい。決定される事項自体は織り込み済に近い。
50bp(0.5%ポイント)の第3次利上げを決め、さらに7月27日・9月21日のFOMCも利上げ継続の方針を告知するものとみられる。なお、7月27日は50bpの利上げであろうが、9月については利上げ幅が特定されないであろう。
量の対応では、7月と8月は月間475億ドルのFRBのバランスシート縮小、9月以降950億ドルの縮小とする方針を保持しよう。問題は9月以降の金融政策を、FOMCがどのように告知するのか否かだ。
その意味でメンバーによるSEP(経済見通し)とドットチャート(政策金利見通し分布)が注目されよう。
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(この記事は 2022年6月14日に書かれたものです)
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