モーリタニアに富をもたらした日本人
日本人による8割砂漠の国を豊かにするミッション
アフリカの北西部にモーリタニア(モーリタニア・イスラム共和国)という国があります。
人口400万人、国土は日本の約3倍ありますが、その約8割が砂漠です。
1960年、モーリタニアはフランスから独立しましたが、耕地可能面積が国土の約1%に過ぎず、国を支える産業がない貧しい国でした。
西側には豊かな海に面しているのですが、もともとサハラ砂漠の遊牧民のため牛・羊・ラクダの肉を食べ、魚介類を食べる文化がなく、海辺のごく一部の人が小船で漁をする程度です。
1978年、海外漁業協力財団から一人の日本人、中村正明さんがモーリタニアに派遣されました。
日本の漁業技術を指導して、国を豊かにすることがミッションです。
モーリタニアに住んだ最初の日本人となりました。
世界有数の魚場を活用
中村さんは、モーリタニアには世界有数の漁場があるので漁業をやれば良いと思うのですが、魚介類を食べない彼らは、全く興味がありませんでした。
ある日、中村さんは海岸に打ち上げられた古タイヤの中にマダコが入っているのを発見します。良質なタコで、日本での需要が高いものでした。
中村さんはタコ漁をすることを思いつきました。
日本のタコ壷漁は、壷を沈めて引き上げるだけなので、設備や技術やお金がないモーリタニアの人達にはぴったりです。
しかも、通常の網漁ではタコの体が傷付き傷みやすいため、タコ壷で捕獲されたタコは「幻のタコ」と珍重され、人気があります。
モーリタニアの人たちにとって、タコは見た目が気持ち悪いため食べるどころか、触ることさえ嫌がったので最初はとても抵抗されました。
しかし、こんなモノが売れるかと思っていたタコを試しに売ってみると、びっくりするくらい高く売れたのです。
そこで漁師になる人が増えていきました。
壷を沈めて引き上げて、壷の中に入っているタコを売るだけでお金になるのです。
タコ漁が盛んになるだけではなく、タコ壷生産工場も沢山できました。
搾取ではなく現地の一大産業にした
中村さんは7年間タコ漁を指導し、モーリタニアの一大産業にしました。
漁船も日本から無償提供され現在は大型トロール船による底引き網漁も行っています。
世界で水揚げされるタコの60%は日本で消費されていますが、日本が輸入するタコの35%がモーリタニアでダントツのトップシェアです。美味しく安いからです。
日本企業を誘致してタコを捕るのではなく、地元民の産業としてタコ漁を推進したことで、モーリタニアに大きな富をもらすことになりました。
年間輸出額は100億円以上で国の収入の半分がタコの輸出の売り上げです。
搾取するのではなく現地の産業を育てたことで、モーリタニア国は潤いました。
貧困から救ってくれた日本に感謝
その功績に感謝してモーリタニア政府は2010年、国家功労賞を中村さんに授与しました。
モーリタニアで尊敬された中村正明さんの名前を知らない人は、ほとんどおらず子供に「ナカムラ」や「マサアキ」と名付ける人も少なくありません。
日本は地球の裏側ですが貧困から救ってくれた日本に感謝する気持ちを持っています。
1993年のパリ・ダカールラリーで日本人のドライバーが運転する四輪駆動車が、モーリタニアの小さな漁村近くで砂漠から突き出た大岩に激突し大破する事故がありました。
ドライバーとナビゲーターの2人は重傷を負い、車は潰れ自力で車外に出られません。
そこに通りかかった少年が村人たちを呼んできました。
父親が乗っている漁船と同じマーク「日の丸」がついた自動車が岩に突っ込んだことを村人たちに告げたのです。
日本の車と聞いて、村人たちは漁に出ている者も呼び戻して総出で救出に向かい2人の日本人は助かったのです。
普段から日本人に感謝する気持ちがあって恩返しをしたくてもできなったことが、この事故で恩返しするチャンスとなったのです。
現在、日本の遠洋マグロ船団がモーリタニアの海域に入れるのは、モーリタニア政府の日本に対するお礼なのだと思うと中村さんは語っています。
また、2011年東日本大震災の時には、モーリタニアの日本大使館に多くの人がきて
「わたしは日本の友人です。日本への恩返しです。」
と言って義援金を寄付したのです。
皆が見向きもしないものが宝となり、純粋に与えることがお互いの富を拡大したのです。
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