後付けの情報に惑わされるな “大外れ”テスラ株急落の原因
先週、米テスラ社の株が急落した時に新型コロナウイルスの影響だという記事があったので驚きました。新型コロナウイルスの報道で米国株全部(ニューヨークダウなど)が暴落している最中に、テスラ株は急騰していたのです。
そしてニョーヨークダウが急落後、いったん底を打って急反発して目先の天井まで上昇した時にテスラ株は急落しました。つまり、テスラ株は新型コロナウイルスの影響を受けた株とは全く逆の動きをしていたのです。
テスラ株のチャートだけではなく、ニューヨークダウのチャートを併せて見れば、新型コロナウイルスが原因ではないことが明白です。実際には、テスラ社は売りポジション、つまりテスラ株が下落すると利益になるポジションを大量に持っていた投資家たちが、株価上昇して踏み上げられたことによる「買い戻し」が急騰の原因だと考えられ、急騰の買われすぎから急落しただけだったのでしょう。
テスラ株の急落は新型コロナウイルスと無関係なのに、それが原因だと判断されたわけですが、これを「後付け」といいます。後付けとは、例えば株価が上昇したら、それらしい原因を上昇の原因とすることです。相場は報道やファンダメンタル的材料をもとに動いていないことが多く、それらしき材料があっても、それが真の材料ではないことも多いのです。
また、ファンダメンタルだけではなく、チャート分析においても、後から上昇の原因をチャートで解説することも後付けで、世の中の多くは後付けの解説ばかりです。事前に「○○が原因で今から株は上がる」という報道はなく、後付けの情報ばかり得ることで大衆心理となり、確信を持って間違えることになります。
報道は正しいものと信頼して受け取る人が多いのですが、新聞でもテレビでも実践的な投資に疎い記者・コメンテーターが多く、またファンダメンタル的に正しくても相場は反対に動くことが多いものです。従って、多くの人が投資では天井で買って底で売ることになります。激動の時代は正しい投資リテラシーを身に付けることが大切で、そのためには正しい情報を得ることと、報道のどこが間違いかという視点で自分の頭で考えるとよいでしょう。
日刊ゲンダイWEB版にも掲載