日銀はコストプッシュインフレへの対応が必要に
日本の実勢インフレ率はすでに2%を超えている
国際商品市況高騰と円安に伴う輸入物価上昇が進むなかで、日銀の対応が難しくなっている。
2月の全国消費者物価は、日銀が目標とするコアベース(生鮮食品を除くベース)で、前年比0.6%と1月の同0.2%から伸びが加速した。
全国消費者物価に比べ約1か月早く発表される東京都消費者物価は、コアベースの前年比で1月0.2%、2月0.5%、3月0.8%と伸びが加速している。
全国と東京のコア消費者物価前年比上昇率はほぼ同じ水準と考えられる。4月22日発表予定の3月の全国コア消費者物価前年比は、東京とほぼ同じ水準の0.8%程度になると見込まれる。
3月までのコア消費者物価前年比上昇率が加速しているのは、ほとんどエネルギーと生鮮食品を除く食品の値上がりによる。
欧米の「コア」基準である、食品とエネルギーを除くベース(日本ではコア・コアと呼ばれる)の全国消費者物価前年比は、1月マイナス1.9%、2月マイナス1.8%と大幅なマイナスが続いている。
昨年4月から10月までに断続的に行われた携帯電話料金引き下げにより、消費者物価は計1.5%ポイント程度押し下げられた。この一過性の携帯電話料金引き下げ分を除いた実勢としての消費者物価前年比上昇率は、3月時点で2.3%(=0.8%+1.5%)程度とみられる。
昨年の携帯電話料金引き下げの反動により、消費者物価の前年比は4月時点で1%程度押し上げられ、最終的に10月までに消費者物価の前年比は1.5%程度押し上げられることになる。
エネルギーと食品の物価上昇は、エネルギー・食糧などドル建てでみた国際商品市況の上昇に加えて、米金利先高観によるドル高・円安が原因だ。
こうした物価上昇は、いわゆるコストプッシュインフレであり、個人消費や設備投資などの需要の盛り上がりによるディマンドプルインフレではない。
物価上昇とは言っても、政府・日銀が目指す「デフレ脱却」に当たらず、日銀も現時点では、こうした物価上昇で政策を変更することは考えていない。
輸入価格上昇分の全部転嫁で5.4%、半分転嫁で2.7%の物価上昇に
だが、今の状態がデフレ脱却と言える経済状態での「良い物価上昇」であるかどうかはともかく、インフレ率が目標である2%を超えて上昇し、2%超えの状態が続くと見込まれるのであれば、日銀はそれに対応する必要がある。
では、このままではどの程度の物価上昇になるのか。
日本はエネルギー、食糧などの国内需要分のほとんどを輸入に依存している。日本の通関輸入総額は20年68.0兆円から21年には84.8兆円と16.8兆円(前年比24.6%)増加した。うち輸入価格は前年比18.6%上昇しており、16.8兆円中12.7兆円は価格上昇による増加である。
つまり、エネルギー、原材料、食糧などの国際商品市況の上昇によって、日本は同じ量の輸入をするのに、昨年12.7兆円余計に輸入代金を支払わなければならなかった。
直近2月の輸入価格は前年比35.2%上昇しており、昨年1年間の上昇テンポ(18.6%)を大きく上回っている。
今回のウクライナ危機に伴う一段の国際商品市況高騰と円安により、今後も輸入価格の大幅上昇が続く可能性が高い(図1参照)。
仮に、今後、国際商品市況の騰勢がやや収まるとみて、今年の輸入価格が昨年並みの18.6%上昇にとどまると考えても、所得流出は15.8兆円(84.0兆円×18.6%)に上る計算だ。
もし日本の消費が堅調で、企業が輸入価格上昇によるコスト増分を消費者にすべて転嫁できるようであれば、15.8兆円分は個人消費全体(292兆円)の5.4%に相当するため、消費者物価上昇率を5.4%ポイント押し上げる計算になる。
だが、実際には、企業がコスト増分をフルに転嫁できるほど、日本の消費は堅調ではなく、ある程度を企業自身が負担せざるをえないだろう。
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2022/03/28の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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