FOMCインフレ抑制に楽観的
FOMCは米経済のソフトランディングを予想するが…
3月15~16日のFOMCメンバーの経済・金利見通しは、米国経済が概ねソフトランディングに成功するという、無難な内容だった。
まず、成長率(メンバー予想の中央値、各年10~12月の前年比)は、22年2.8%(前回12月見通しは4.0%)、23年2.2%(同2.2%)、24年2.0%(同2.0%)となり、22年見通しのみ大幅に下方修正された。
21年10~12月実績は5.6%であり、22年から23年にかけて成長テンポは、1.8~1.9%程度とされる潜在成長率に近づく形で大幅に減速するというイメージだ。
失業率(各年10~12月)については、前回見通しとほぼ変わらず、直近2月の実績(3.8%)から22年末にかけ幾分低下したあと、22年末以降は3.5%程度でほぼ横ばいのまま推移するという見通しだ。
コアPCE(各年10~12月の前年比)については、22年4.3%(前回12月見通しは2.6%)、23年2.7%(同2.3%)、24年2.3%(同2.1%)となり、22年が大幅上昇修正され、23、24年も小幅上方修正された。コアPCEデフレータの1月実績は5.2%で、この先、上昇率が鈍化していくという見方だ。
FF金利については、22年末1.875%(前回12月見通しは0.875%)、23年末2.75%(同1.625%)、24年末2.75%(同2.125%)、長期が2.4%(同2.5%)だった。
年内はFOMC会合ごとに0.25%の利上げを実施し、来年は年内2~3回の追加利上げを行うが、利上げはそれで打ち止めとの予想だ。
23、24年末の2.75%というFF金利予想は、長期のFF金利予想である2.4%より高い。長期の予想が中立金利だとすると、23、24年末の2.75%は中立金利より高いため、引き締め的な政策になると評価する向きもある。
全体的にみると、今後の経済は成長率が2%程度に鈍化するが、インフレ率もやや高めながら鈍化していき、経済は概ねソフトランディングするという見通しだ。
一方、金融政策については、インフレに対応して正常化を進めていくという見通しだ。経済がソフトランディングに向かうという見通し、また、インフレ対応でこれまで後手に回っていたFRBがインフレ退治に乗り出すこと、などを株式市場も好意的に評価したようだ。
パウエル議長は相変わらず「インフレが一過性」と考えている?
だが、この見通しには少なくとも2つの大きな疑問点がある。1つは、22年から23年にかけてインフレ率が鈍化する理由が不明だ。
失業率は2月の3.8%から今年年末にかけて3.5%に低下するという見通しであり、労働需給は一段と逼迫する。このため、賃金上昇率は加速することが予想され、こうした点ではインフレが鈍化する可能性は低い。
さらに、ここへきての原油高が全般的な物価上昇率をも押し上げる可能性もある。だとすると、コアPCEデフレータは1月実績の前年比5.2%から、FOMC見通しのように22年末4.3%、23年2.7%と鈍化していく理由がわからない。
パウエル議長は「インフレは一時的」との表現を使うことこそやめたが、見通しとしては基本的に「インフレが一時的」という見方を変えていないのではないかと思われる。
いまだに「時間が経てば供給網の混乱が解消される」とか「消費者の間に根強いディスインフレ志向が残っている」といった考えに捉われているのかもしれない。
そうした見方に従って、この一年間、金融緩和を続けたために、FRBはインフレ対応で後手に回った。同じ間違いを繰り返す可能性は大きい。
・・・・・
2022/03/22の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
【 関連記事 】
https://real-int.jp/articles/1226/