ウクライナ自由の精神を称えるモルドバワイン
3か国の平和を象徴する赤ワインFreedom Blend
Freedom Blendと言うワインがあります。
モルドバにある1827年創業のChateau Purcari(シャトー・プリカリ)という老舗ワイナリーが造っているワインです。モルドバ、ジョージア、そしてウクライナが1991年に旧ソ連邦から独立したことを祝して独立20周年目の2011年に初リリースされました。
モルドバ土着品種のララネアグラ、ジョージア土着品種のサペラビ、ウクライナ土着品種のバスタルドの三つの品種で造られた赤ワインで、エチケットの上部には平和の象徴である白い鳩が描かれていて、下の方にはウクライナ、モルドバ、ジョージアの国旗が控えめに描かれています。派手さはありませんが、この3か国の未来永劫の平和を祈念している造り手の思いが伝わってくるデザインです。
Purcariはこのワインをジョージアの心、モルドバのテロワール、そしてウクライナの自由の精神を持ったワインとして造っていると言っています。
モルドバのワインというと馴染みのある方は少ないかもしれませんが、モルドバは現在世界最古のワイン生産地として認知されているジョージアと同時期にワイン醸造が始まった地域であると言われています。
日本からは遠く西方の国で日本からの直行便はなく、筆者もロシアのモスクワ、オーストリアのウィーン、ドイツのフランクフルトやミュンヘン、そしてトルコのイスタンブールを経由して訪れた記憶があります。
ラテン系のルーマニア人が8割近くを占めて人柄がとても明るくフレンドリーで、東日本大震災の時にも寄付金を送ってくれていた親日国です。面積で日本の九州程度、人口で沿ドニエストル共和国を除くと260万人程度です。
またこのPuricari Freedom Blendと言うワインは「日本で飲もう最高のワイン2019」でフルボディ赤ワインの部のベストワインとしての受賞歴もある、知る人ぞ知る人気ワインなのです。
このPuricari Freedom Blendを造っているChateau Purcariというワイナリーは、1827年創業のモルドバでも老舗のワイナリーで、首都キシナウからは南東にクルマで約120キロ揺られていくウクライナとの国境に隣接するプルカリと言う地域にあります。
モルドバとウクライナとの国境となっているドニエストル川沿いに位置するこのワイナリーからは、川向こうにウクライナの草原が見渡せるくらい国境に近く、むしろウクライナの有名な港湾都市オデッサから西へ80キロいったところと言った方が分かりやすいかもしれません。
Chateau Purcariのシャトーの建物は100人以上を収容することのできるレストランや10室のゲストルームがあるワインリゾートとして人気がある場所ですが、現在それらの施設はウクライナからの難民受け入れのために利用されているとのことです。これはこのワイナリーがウクライナとの国境に近いことによる特別な状況かと言えばそうではないようです。
3月9日時点で、ウクライナからのモルドバへの避難者の流入の数は既に自国民人口の10%にあたる26万人に達しているとのことです。いかなる国であれ自国民の10%に当たる難民を受け入れるという事は、実に大変なことだと思います。
ワインの話に戻りますが、Chateau Purcariから日本に輸出されるワインは通常ウクライナの港湾都市であるオデッサまで陸送されここで船積みされます。その後、貨物船で黒海からイスタンブールを経て地中海に出てりスエズ運河を通りインド洋、そして太平洋を渡って日本までやってきます。
それがいま、この戦乱の影響で大量のワインがオデッサに足止めになっていて、残念ながら日本ではFreedom Blendを含むいくつかの商品が既に品切れとなっているとのことです。一日も早くウクライナ、ジョージア、そしてモルドバ3か国に平和が戻り、この3か国の平和を象徴するこのFreedom Blendが日本の市場に戻ってくることを願ってやみません。
今回の戦乱が示す意味の大きさや重さの受け止め方は人それぞれと思いますが、ひとりのワイン愛飲家としてモルドバのワインを遠く離れた日本で口にするとき、ぶどうの生産地のテロワールや造り手がワイン注ぎ込む情熱以外にも、感じるべき実に多くのストーリーがあるのだと思います。
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