原油価格はどこまで上がるのか?
ロシア原油を直接対象にした制裁措置が打ち出される可能性
ロシアのウクライナ侵攻に対する西側先進国の対ロシア制裁により原油価格が値上がりしている。EUは原油、天然ガスの対ロ依存度が高く、ロシアからのこれらエネルギーの供給が途絶えることを恐れて、当初、制裁に後ろ向きだった。
だが、対ロシア批判の世論が高まり、制裁を強化せざるを得なくなった。3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網SWIFTから排除することが決まった。
ただ、それでもエネルギー調達への影響をできるだけ抑えるため、最大手のズベルバンクとエネルギー部門に強いガスプロムバンクの排除が見送られている。なお腰が引けた状態に変わりない。
米バイデン政権も、米国内のガソリン価格値上がりが11月の中間選挙に悪影響を及ぼすことを懸念して、エネルギー関連の制裁については慎重だった。
しかし、米議会は世論に敏感だ。ロシア産の原油や石油製品の輸入を制限する法案が上下院でそれぞれ複数提出されている。サキ米大統領報道官は3月4日の記者会見で、ロシア産原油の輸入制限を検討していると述べた。
近いうちにロシア軍はキエフなどの都市部に侵攻し、一般人を含めた犠牲者が急増する懸念がある。西側先進国の国民世論の反ロシア感情は一段と高まると予想され、EU首脳や米バイデン政権も、ある程度の国内経済への悪影響を覚悟したうえで、一段と強力な制裁を打ち出さざるをえない。
ロシアにとっての急所がエネルギー分野であることは明らかだ。
ロシアの西側への石油輸出は日量556万バレル
ではその際、原油価格はどの程度に値上がりするのか?
まず、ロシアの石油がどの程度、西側諸国に輸出されているのかをみてみよう。IEAによれば、ロシアの石油生産(原油、石油製品の合計)は日量1,130万バレル/日(2022年1月時点)で、米国の1,760万バレル、サウジアラビアの1,200万バレルに次ぐ世界第3位の石油生産国だ。
ロシア石油生産1,130万バレルのうち輸出は780万バレルで、原油が500万バレル、石油製品が280万バレルとなっている(21年12月時点)。
表1は、21年11月時点での先進国各国の石油輸入全体、そのうちロシアからの輸入がどの程度かをみたものだ。
欧州先進国の石油輸入は全体で1,319万バレル、うち34%をロシアからの輸入に依存している。これに対し、米国は石油輸入は全体で853万バレル、うちロシアからの輸入は63万バレルと依存度は7%にとどまっている。
SWIFTから排除を厳格化するなどの形で、ロシアから先進国への石油輸出ができなくなる場合、対象になるのは先進国がロシアから輸入している石油556万バレルになる。
制裁強化の場合、ロシアはこれを中国など他国向けに切り替えようとするだろう。ただ、556万バレルすべてを切り替えることはできないとみられる。過去、2018年から20年にかけての、対イラン経済制裁の際には、イランの原油生産量は約380万バレルから約190万バレルへとほぼ半減した。
そこで、今回の対ロシア経済制裁でも、先進国に輸出されていた556万バレル中、約半分の280万バレルが輸出できなくなると仮定する。
結果として、ロシアの原油生産が280万バレル減少、世界全体の原油生産も280万バレル減少すると考えてみよう。世界の原油生産は現在約1億バレルであるため、その際、世界の原油生産は2.8%減少することになる。
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2022/03/07の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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