ウクライナ侵攻で世界経済はどうなる?
経済制裁は強力なものにせざるをえず、その副作用も大きくなる
仮にロシアによるウクライナ侵攻はあったとしても、それは小規模・限定的なものにとどまるとみていたが、その見方は見事に外れた。
プーチン大統領がロシア国民向けに軍事作戦実施を表明した日本時間24日昼前のテレビ演説直前までは、確かに、世界的に株価が軟調で、金価格や穀物価格が上向き気味だったものの、原油や天然ガスなどエネルギー価格は小動きにとどまっていた。
これは、経済制裁が限定的、つまり、侵攻があったとしても限定的との市場の見方を反映していた。
しかし、ウクライナ東部だけでなく、ウクライナの首都であるキエフ付近など、多方面で軍事衝突が起きているとの報道を受けて、原油や天然ガスなどエネルギー価格が急騰し、世界的に株安に拍車がかかり、ユーロが売られた。
ロシアによるウクライナ全土占領を目的とした軍事侵攻が行われているかどうかについてはなお不明だが、明らかに局面が変わったことを示している。
西側諸国は22日のロシアによるウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認などを受け、対ロシア経済制裁第一弾を発表していた。
ロシア銀行最大手ではないが、軍需産業との関係が深いロシア大手銀行2行との取引を制限するほか、プーチン大統領の側近ら5人を金融制裁対象に指定していた。プーチン氏本人への制裁はその時点では見送られていた。
しかし、今回の侵攻により、経済制裁はより強力なものにせざるをえない。
今後は、西側がロシアに対してどのようなる経済制裁を実施するのか、そして経済制裁が西側の経済にどのように跳ね返ってくるのか、経済制裁の報復としてロシアがどのような報復を実施するのか、にかかってくる。
さらに、今回のロシアによるウクライナ侵攻によって起こるであろう経済混乱がどの程度続くのか、世界的な株価下落に対応した金融緩和などがあるのか、なども注目されている。
経済制裁により跳ね返ってくるダメージが最も大きいのは欧州
ロシアに対する最も強力な経済制裁の1つは、ロシアの収入源である原油・天然ガスなどエネルギー輸出をできなくすることだ。
そのためには、まず、ロシアからエネルギーを輸入しないようにすることが考えられ、実際、ドイツはノルド・ストリーム2の承認手続きを停止している。
また、ロシアが輸出する原油や天然ガスなどの代金を受け取ることができないようにする方法もあり、国際銀行間通信ネットワークであるSWIFTからロシアの銀行を排除する、といったことも考えられている。
ただ、前者の方法をとるにせよ、後者の方法をとるにせよ、エネルギーをロシアから輸入しようとする国は、それができなくなる。
ロシアからエネルギーを輸入していた国の生産活動には相応の悪影響がある。経済制裁の効果が確実であり、強力であればあるほど、制裁を実施する方に返ってくる副作用も大きくなるというわけだ。
そこで問題になるのは西側諸国のロシアとの経済的な結びつきの程度が、国、地域によって大きく違う点だ。経済制裁が強力になればなるほど、ロシアとの経済的な結びつきが強い地域が受ける副作用は大きくなる。
IMFの統計によれば、ロシアの21年1~10月の輸出全体に占める地域別シェアをみると、EUが37%と高いのに対し、米国が4%、日本が3%と低水準で、中国は14%と意外に高い。
同輸入全体に占めるシェアは、EUが33%とやはり高いのに対し、米国が6%、日本が3%とやはり低水準で、中国は23%と輸出比率以上に高い。
また、BISによれば、ロシアの21年9月末の対外銀行債務889億ドル億ドル中、62%に相当する555億ドルが欧州の銀行からの債務だ。ロシアと欧州との経済的な結びつきは非常に強い。
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2022/02/24に書かれた記事です。
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