3月の大幅利上げ必要なのか?
高成長と低失業率、高インフレ、高賃金上昇率は米国経済の「過熱」を示唆
米国経済は今や「コロナショックからの順調な回復」を通り越して「過熱」している。昨年10~12月の実質GDPは年率6.9%と7~9月の同2.3%から加速した。伸び率としてはコロナショックの落ち込みの反動で急増した20年7~9月(同33.8%)以来の高い伸びだ。
そして、オミクロンウイルスの影響が懸念された1月の雇用統計では、非農業雇用者数が前月比46.7万人増と大幅に増加した。前月分の統計では低迷しているとされた、昨年11月、12月の雇用も上方修正され、2か月分を合わせると71万人の上方修正となった。
しかも、企業の求人は実際に採用されている人数をはるかに上回っている(図1参照)。
このため雇用の大幅な増加傾向は簡単に変わらないだろう。
1月は雇用増加を上回る労働力人口増加となったため、失業率は前月比でみるとわずかに上昇した(4.9%→5.0%)。だが、移民の減少や早期退職者の増加などから労働力人口が伸び悩んでいるため、失業率は昨年7月からの半年間で見た場合、1.4%ポイント低下(5.4%→4.0%)した。
労働需給はひっ迫しており、賃金上昇テンポは加速している。1月の時間当たり賃金の上昇率は前月比0.7%と、伸び率は昨年10月0.6%、11月0.4%、12月0.5%のあと、伸びが加速した。
前年比でみた賃金上昇率は5.7%と、感染拡大の影響で医療従事者の賃金が増加した20年12月の反動で伸びが鈍化した前月(4.9%)に比べ、伸びが加速した。
失業率と賃金上昇率の関係を示したフィリップス曲線の動き(図2参照)をみてみよう。
2010年代は景気が回復し失業率が低下しても賃金上昇率はほとんど高まらず、フィリップス曲線が水平になったのではないかと言われた。だが、今回は1960年代後半の両者の関係に類似してきている。
1960年代後半には、失業率が4%以下に低下し、賃金上昇率が6~7%に高まった。この3か月間(昨年10月~今年1月)の賃金の3か月前比年率上昇率は6.9%であり、すでに1960年代後半の領域に入っていると言える。
ちなみに、1960~70年代はケインズ経済学が流行した時代だ。経済はモデルなどによる計算で管理でき、不況になったとしても適切な需要喚起策によって完全雇用状態に戻すことができると信じられた。
だが、実際にはモデルによる計算は間違うことが多い。臨機応変な対応をしなければ、金融政策は大きな間違いをおかしてしまうことになる。
パウエルFRB議長自身、議長就任当初の2018年ジャクソンホール講演で、次のように述べていた。
「自然失業率の推計値を信じたあまり、間違った政策を続けたのが1970年代だった」
「1970年代は自然失業率の推計値を重視し、その自然失業率を低く見過ぎて、
金融緩和政策を続け、インフレを加速させてしまった」
「当時の推計によれば、実際の失業率は自然失業率を上回っていた」
「これは一段の金融緩和によって景気を刺激しても良いことを示唆するものだった」
「しかし、改めて推計した最近の自然失業率の推計結果によれば、
同推計値は上方修正され、1960年代から70年代前半にかけ、
実際の失業率は自然失業率を下回っていたことになった」
「つまり、景気抑制策が必要だったことを示唆していた」
こうした間違いが起きることを自覚していたにもかかわらず、パウエル議長は同じような間違いを犯してしまったことになる。
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2022/02/07の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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