米利上げ 今後の焦点
FOMC結果はメインシナリオ通り
ほぼ事前のメインシナリオ通りとなりましたが、引き締め(利上げ)の速度、バランスシート縮小の工程がみえないところが変数といえます。
・3月FOMCでの利上げ示唆
It will soon to be appropriate to raise the target range
「政策金利の目標レンジを引き上げることがこの先適切となる」
と次回3月会合での利上げを示唆してきました。
・テーパリングの3月終了
こちらも予想通りでした。
・バランスシート縮小
バランスシート縮小に関しては、償還国債のなかで再投資を減額していくという前回2010年代と同じ手法と採用予定しています(あくまで現状)。
FOMC声明文はタカ派
この先の金融政策運営に関し、金融市場にはかなりタカ派と受け止められ、短期を中心に金利は上昇となっています。
FF金利の誘導目標レンジ引き上げ、近く適切になる
委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。これらの目標実現を支えるため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジをゼロ-0.25%に据え置くことを決めた。インフレ率が2%を大きく上回り、労働市場に力強さが見られる状況で、委員会はFF金利の誘導目標レンジ引き上げが近く適切になると見込んでいる。委員会は月間の資産純買い入れペースを引き続き落とし、3月の早い時期に購入を終了させることを決定した。
出所 ブルームバーグ
声明文中のヒント
声明文の中に、“measured”や“gradual”の文言があれば、ある程度ヒントになったのですが今回は入っていませんでした。
measuredは2000年代の引き締め局面の中でよく使われていました。
measuredが入るとmeasured pace、つまりFOMC毎ということになり、おおむね毎回の会合で利上げという意味になります。
gradual(段階的)が入ると今年の場合だと文字通り3、6、9、12月の4回ということになります。
このあたりの文言があると示唆的だったのですが、今回は無かったので、声明文やパウエル議長の会見から読み解くしかありません。
3月会合までの変数抱える
パウエル議長、3月利上げ支持を示唆-毎会合での利上げ排除せず
パウエル議長は、FOMCには3月に政策金利を引き上げる準備が整っているとしたほか、毎会合で利上げを決定する可能性も排除しない姿勢を示した。
出所 ブルームバーグ
FOMC後のパウエル議長会見の質疑のなかで、「25bp(0.25%)の毎回の利上げを排除しない」という発言があり、次回3月から、残り7会合連続で利上げをする確率が残りました。
さらに3月のFOMC会合までは、雇用統計、CPI(消費者物価指数)の発表が2回あり、(上振れという)大きな変数をかかえてしまったことになります。これらが織り込みに影響してくる可能性もあります。
7月以降の利上げに焦点
・3月に利上げは89.6%でほぼ確実
・5月までに2回利上げが61.2%とメインシナリオになってきている
・6月まで 3回利上げは59.3%
3、5、6月の3回連続で利上げをすることが金融市場がほぼ織り込んでいる状況で、7月以降がどうなるかに焦点が集まってきました。
23年末、24年末の利上げ織り込み
利上げが前倒しになってきているので、長期の部分では回数を織り込んでおらず、24年末では7.51回とピークを超えてきていません。これがドル円が115円に乗ってこない理由のひとつといえます。
米国の長短金利差は縮小
米国の長短金利差(10年債利回り-2年債利回り)は、2021年4月のピーク1.6%に迫る水準から0.7%水準まで縮小しています。利上げが進むごとに短期金利は上昇しますが、長期金利の上昇はよりゆるやかになりますので、長短金利差が縮小してきます。
この先、1.0%を超えたり、1.6%まで戻るのは難しく、縮小する一方だと考えられられます。これは株が弱くなってきているひとつの背景でもあります。
今後の変数
上述の3月までの経済指標の結果次第では、利上げの織り込みは一段と加速する可能性もありますが、FRBがみる長期で均衡する政策金利は2.50%となっています。
すると現時点で最大に織り込んでも超長期でも10回(=2.50/0.25)、徐々に上限に迫りつつあります(3月のFOMCで上方修正した場合は別)。
ただ、今年単年では、何回の利上げとなるか全く見通せず、大きな変数として残ってしまいました。
毎度のことながら、通貨高が加速するのは利上げの織り込みが進むとき、年内4.23回を織り込んだ以上、ここからのドルの上昇は限られたものとなる可能性があります。
また、バランスシート縮小が強化されるようだと株にはネガティブ要因となるでしょう。
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