FRBインフレ抑制に失敗?
FRBは政策をインフレ抑止重視にシフトしたが…
バイデン大統領が再任の方針を示したパウエルFRB議長は、1月11日の米上院銀行委員会の指名承認公聴会で、FRBの責務である最大雇用について「非常に急速に近づいている」と述べる一方、もう一つの責務である物価安定については「インフレは深刻な脅威だ」と述べ、政策スタンスをインフレ抑止重視へとシフトする考えを示した。
市場で広がっている3月利上げ開始の是非については明言しなかったが、「高インフレが予想より長く続くと判断した場合、時間をかけてより多くの利上げが必要になるかもしれない」と述べ、複数回の利上げの可能性について言及した。
既定路線になりつつある量的引き締め(QT)についても、「FRBが現在保有する9兆ドル近い保有資産は必要な水準をはるかに超えている」と述べ、「おそらく年後半に保有資産の縮小を開始するだろう」と年後半からのQT開始を示唆した。
1月5日に発表された12月FOMCの議事要旨によれば、利上げやQTといった引き締め策を「より早期に、速いペースで進める方針」が明らかにされており、パウエル議長の発言はこれに沿ったものだと言える。
一方、FRB副議長に指名されたブレイナード理事は、13日の米上院委員会の指名承認公聴会で「FOMCは向こう1年間に数回の利上げを予想している」とした上で、「(3月に)資産購入が終了し次第、われわれはそれを行える立場になる。今後1年間、データから何が求められているかを見ていく必要がある」と、3月利上げの可能性に含みを持たせた。
ブレイナード理事は雇用・労働者重視のハト派として知られるが、「インフレ率は高過ぎて、全米の勤労者は自分たちの給与がどの程度までそれを反映することになるのか心配している」「当局の金融政策運営は誰も置き去りにすることのないような景気回復を維持しつつ、インフレ率を2%に落ち着かせることに重点を置いている。これがわれわれの最も重要な課題だ」と述べ、労働者の立場からもインフレ抑制が必要との考えを示した。
また、「われわれには強力な手段があり、今後インフレ率を押し下げるためそれを活用していく」と述べ、利上げやQTにより金融引き締めを進める意向を示した。
パウエルFRB議長はなおインフレが
自然に沈静化することを期待している様子
では、FOMCの想定するような年3回程度の利上げと年後半からのQTによって、インフレは沈静化するのか。
ブレイナード理事は物価圧力が向こう半年間程度高止まりするとの見方を示した上で、金融当局者が昨年12月の時点でインフレ率が22年末までに2.5%近くまで鈍化すると予測した点に言及したが、「われわれはこうした予想を慎重に受け止めるべきだと思う」と述べ、インフレの沈静化を予想しながらも、それを確信しきれない様子だ。
一方、パウエル議長は「現在の高いインフレ状況は需要と供給のミスマッチで生じている」「いまは賃金上昇が持続的なインフレを助長する展開には至っていない」と述べた。
賃金インフレを否定し、ミスマッチの解消によりインフレは沈静化するとのパウエル議長の見通しは、今となっては、かなり楽観的な見通しのように思える。
12月の雇用統計によれば、失業率は3.9%と前月の4.2%から低下した。
「最大雇用」について、クラリダFRB副議長は昨年8月の講演で「失業率が3.8%に低下するとFOMCが予想する22年末に最大雇用が達成されるだろう」と述べ、間接的にしろ、「失業率3.8%」を最大雇用の目安として示していた。
パウエル議長が述べるように、最大雇用に急速に近づいていることは確かだ。12月の時間当たり給与の前年比上昇率は4.7%と前月の5.1%から鈍化したが、これは前年12月は感染拡大の影響でヘルスケアサービスの賃金が急上昇したためで、その反動によるものだ。
3か月年率換算での12月の賃金上昇率は6.2%と高水準だ。失業率が4%割れの状態で、賃金上昇率やインフレ率がともに6%台に上昇していた、1960年代後半に匹敵する状況になりつつあるのは明らかで、「賃金上昇が持続的なインフレを助長する展開には至っていない」というパウエル議長の発言には違和感を感じざるをえない。
・・・・・
2022/01/19の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。