地球温暖化で函館にワインの銘醸地誕生か
なぜ、いま函館なのでしょうか
まず、第一に、そもそも北海道はブドウの生育期である4月から10月、特に収穫期の秋における雨量が本州と比べて少ないことから、平均気温が低い以外はブドウ栽培に適していると言われてきました。
そこに地球温暖化の進行によって気温の上昇が加わり、北海道の気候がますますブドウ栽培に適するようになってきた為です。
特に高級品種であるピノノワールの栽培にはブドウの生育期間の平均温度が14℃以上であることが必要ですが、函館では数年前からこの要件も満たしてきてるのです。
そして、第二にそもそもフランス、ブルゴーニュのワインメーカーとしても海外にブドウ畑を求める事情があるのです。
1.フランス銘醸地のブドウ畑の価格の高騰
ブルゴーニュの畑の1haあたりの価格は一般的な場所で約1億円、グランクリュになると8億円、一部には30億円以上で取引されている畑もあります。
これは海外投資家やファンドによる投資の対象になってしまったことが一因ですが、ここまで価格が上昇してしまうと特に家族経営が多いブルゴーニュ地方では新しい畑の取得はもちろん無理で、現在の畑を維持するにも通常のワインづくりからの収益では相続税が払えなくなってきているのです。(フランスの相続税は累進課税で約1.2億円相当を超える相続部分には40%以上の税金が課されます。)
今後は小規模生産者が優良な畑を維持してワインを造り続けていくのは困難な時代となりそうです。
2.温暖化による優良ブドウ栽培に対する危機感
優良なブドウの栽培にはブドウが完熟するための気候の温暖さばかりではなく、爽やかな酸を残すために朝夕の涼しさが必要です。
いわゆる1日の中の温度差である日較差があることによって、ぶどうの成熟による豊かな果実味や高い糖度とそして酸味が両立するのですが、温暖化が進むとこの酸味の維持の点が問題となるのです。十分な酸味のないワインは、ぼやけた味わいのワインとなってしまうのです。
今回、函館に進出してきたワインメーカーはブルゴーニュの造り手ですが、実はブルゴーニュ地方に限らず、フランスの他の銘醸地のワインメーカーも大規模生産者も含めて地球温暖化への対応を急いでいます。
例えばボルドーの有名シャトーは数年前からスペインの土着品種であるテンプラニーニョの試験的栽培を行ったり、シャンパーニュ地方の大手シャンパンメーカーがやはり温暖化でスパークリング用ブドウが栽培可能となったイギリス南部のブドウ畑取得に動いたり、こういった動きは益々活発になってきています。
北海道と言えば世界最高水準の雪質を誇るニセコやトマムの町の名が世界に知れ渡って久しいですが、今度はワインでも函館が世界屈指の銘醸地として名を馳せる日が来るのでしょうか。
もともと北海道好きのワイン愛飲家AIとしてはますます北海道から目が離せない状況です。
ブドウは通常、苗木での植樹後3年で実を付けるほどに成長しますので、冒頭のブドウ畑では、来年には初収穫できるはず。早ければ再来年2024年にもこの畑でできたブドウのワインが楽しめるかもしれませんね。
ワイン愛飲家AI:
約10年前に仕事上の事情で、とあるワインスクールに送り込まれたことがきっかけでワインを飲み始めた。ワインの持つ人と人を繋ぐ力に魅了され、仕事の話や肩書一切抜きでワインを共にする仲間を増やし今日に至る。休暇を利用してワインや人との出会いを求め、ワイナリー巡りをするのが趣味。今までにイタリア、フランス、ドイツ、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、モルドバ、日本のワイナリー100軒以上を訪問。
好きな言葉は Half full, half empty.
日本ソムリエ協会 : ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA、ワイン検定講師
英国 Wine Education &Trust: WSET Level 4 Diploma Candidate、 WSET Level 3 Award in Sake