ワイン選びのコツ 専門家への伝え方
前回の記事はこちら。
AI流ワインの選び方と頼み方
https://real-int.jp/articles/1045/
1.3 ワインの頼み方
前回、ワインショップやレストランでワインを選ぶ時は、できる限りソムリエバッジをつけているような専門家の方を見つけてお願いした方がよくて、その際には以下のポイントを押さえておきましょう。と言うところまででした。
① 予算
② 目的
③ 好み
④ 合わせたい料理があればその内容
1.4 専門家の確保の仕方
それでは、それぞれの内容についての説明を始める前に、まずは「ソムリエバッジをつけているような専門家」の確保のしかたです。
ワインショップの場合、たいがいは高価なワインがお店の奥のガラス張りの冷蔵庫のようなセラーに入っています。そのあたりでたたずんで誰かを探している振りをすると、何分もしないうちにお店の方、それも詳しい担当者が声をかけてくれるはずです。
高級ワインの場合、詳しく説明ができる人はショップの中でも上級者であることが多いので、山積みになっている特売品ワインの前で待つよりも、専門家を確保できる可能性が高いのです。もちろんお店の規模にもよりますが。
急いでいる場合は、入店後まっすぐにレジカウンターまで行って贈り物のワインを探しに来たとか言うと、売り場の方は他の仕事を放り出してでも相手をしてくれるはずです。
レストランの場合は、食事のメニューを渡されたときに「ワインリストありますか?」と言うと、多くの場合はソフトドリンクやビールなどと一緒にハウスワインが掲載された、いわゆるドリンクメニューとは別のワインリストが出てきます。
ワインリストが来たら、「ワインのこと聞いても良いですか?」と言えば、それなりに自信がある人が対応してくれるはずです。詳細に好みを伝えることができればワインリストにないワインを紹介してもらえることも良くあります。
ワインショップでもレストランでもお店の人に探してもらうメリットは、いままで知らなかった素敵なワインに出会えることだと思います。
経験上、自分の感性に近い感性を持っていると思えるソムリエさんに紹介してもらうと素敵なワインと出会える可能性が高いので、恋愛指南ではないですが、自分と合うソムリエさんはどこかに必ずいると信じていろいろなお店でトライしてみてください。
1.5 専門家に伝えたい内容
それでは、ワインを選ぶ際に専門家に伝えたい各項目の説明です。
① 予算
ワインの価格帯はかなり広いです。一般的なワインショップでも1千円台から10万円を超えるものまでの品揃えが普通にありますので、まずは価格帯で絞り込む必要があります。
筆者の場合、ワインショップでは、特に探している銘柄がある時以外は、5~8千円の範囲で探してもらいます。このレンジであれば秀逸なワインが見つかることが多いですね。
ところで、値段だけにフォーカスすればリアルのワインショップよりもネット通販の方が安いことが多く、自分にとって既に定番になっているワインを買う場合は安いネット通販で買うのはアリだと思います。
一方で、まだ定番ワインが見つかっていない方や、新しいワインとの出会いを求めている方であればワインショップ(専門店)は利用価値が高くてお勧めです。
価格に関してさらに言えば、レストランのワインリストのプライスはワインショップでの販売価格の2-3倍ですので、筆者の場合、気持ちよくその差額を支払いたいと思える料理やサービス、情報などの付加価値を提供してくれるお店に限定して、多くの場合はBYOB(Bring Your Own Bottle)ができるレストランかワインショップ併設で抜栓料が一定のレストランを利用するようにしています。(これについてはまた別の機会に)
② 目的
特に、贈り物の場合は、伝えたいメッセージをワインの銘柄やエチケット(ラベル)、ワインに隠されたストーリーを通して伝えることもできますので、これこそ専門家の出番です。
自分で飲む場合も例えば「楽しいエピソードのあるワインを紹介して」などのリクエストもありだと思います。
ちなみに、筆者は職場の若いカップルの結婚に際してはフランス・ボルドーワインで「カロン・セギュール」という、ラベルの真ん中に大きなハートマークが描かれたワインを贈ったことがありますし、知人の同僚である著名なビジネスウーマンが退職するときは、ヴーヴ・クリコと言うシャンパン・メーカーの「ラ・グランアム(偉大な女性)」を贈ることを薦めたりもしました。
これは18世紀、まだ女性がビジネスの世界で活躍することなど考えられなかった時代に27歳で未亡人となり大胆な決断で大成功したクリコ未亡人が有名にした作り手ヴーヴ・クリコが女性を称えるために送り出したシャンパンです。
③ 好み
一番難しいのは贈り物にする場合ですね。贈る相手の嗜好を知っていれば、例えば「濃い赤ワインが好きな方」だけでも良いと思います。分からなければ、「分からない」と伝えれば、きっと標準的な味わいのワインを選んでくれるはずです。
次に意外と難しいのが自分の好みを伝える時です。希望するワインの種類の赤、白、ロゼ、泡(スパークリングワイン)の別はすぐに言えても、味わいの好みになるとなかなか表現が難しいですよね。
例えば「樽香のきいた、ニューワールドのフルボディのシャルドネが飲みたい!」と言えれば全く問題ないですが、それが分からない方は、少し手間ですが、以下の様に味わいの要素に分解して、それぞれについて伝えるようにしましょう。
かなり好みに近いワインを選んでくれるはずです。これだけの内容をその場で答える自信がない方はメモ帳などに書いておくとよいと思います。
a. 香り:例えば顔にグラスを近付けただけでフルーティーで華やかな香りが伝わってくるようなワインを求めるのであれば、そのように伝えて、和食のような繊細な香りの食事に合わせたいときは落ち着いた控えめの香りのワインを求めると良いと思います。
ちなみに、筆者が好きな華やかで香りの強いワインは、ブドウ品種で決まっていて、リースリング、ゲヴェルツ・トラミネール、ソーヴィニオン・ブラン、トロンテスの4種類(すべてブドウ品種の名前)です。華やかな香りのワインが好きな人はぜひ試してみてください。
b. 甘さ:一般的な甘くないワインを希望する方はドライなワインと言えば良いです。少し甘味の残るワインを求める方は、オフドライやミディアムドライと言う言葉を覚えておくとよいと思います。食後に飲む甘ーいワインを希望する場合はデザートワインと言えば伝わって、アイスクリームのように甘ーいワインを探してくれます。
c. 酸の強さ:ワインは酸味が弱いとぼやけた味わいになりがちですが、強すぎる酸が不得意な人はそのように伝えましょう。ただし、甘めのワインが好みの人は、ワインは甘くなればなるほど酸味の強くなる傾向があることを覚えておいてください。その場合でも酸味が突出して飲みにくいということはないはずです。これは甘味と酸味は一体となって味わいのバランスを作り出しているからです。
d. タンニン:赤ワインの渋みの量と質についてです。黒ブドウの皮や種から出てくる成分で、濃いワインはだいたいタンニンが多めです。タンニンの質については、多少ざらつく位アグレッシブな方が良いとか、ソフトでスムースなタンニンが良いとかで伝えます。
筆者がワインを飲み始めたころはとにかくタンニンの強いブドウ品種で造られたワインばかり飲んでいました。カベルネ・ソーヴィニオンとかネッビオーロとかいう品種で、この辺は大体アルコール度数も高いので食事中に飲むというよりはワインだけで楽しんでいた記憶があります。
e. アルコールの強さ:一般的なワインのアルコール度数は11~15%程度ですので倍も違わないのですが、11%と15%ではのど越しの熱くなる感じが大きく違います。筆者も以前は比較的アルコール度数の高いアメリカのカリフォルニア州で造られるワインを好んで飲んでいましたが、最近は食事と合わせて飲む機会が増えた結果、アルコール度数の低いワインを選ぶことが増えてきました。
f. 味わいの濃さ:香りの強さとも関係しますが、スパイシーさなどはワインが口の中に入って温度が上がることによって広がります。通常はワインを中心に楽しむ方であれば味わいは濃い方が満足度は高いと思いますし、筆者も普段は味わいの濃いワインを好んで飲みます。ただ食事も飲み物も薄味好みの方は濃くない味わいのものが良いかもしれません。
g. ボディの強さ:これはワインの甘辛の度合い、酸味の強さ、アルコール強弱やタンニン、味わいの濃さなど複数の要因が合わさって創り出された印象のことを言います。どっしりしたタイプであればフルボディ、軽快な感じであればライトボディ、その中間であればミドルボディと三つから選んで伝えます。
h. 他に何かあれば:例えばバニラ風味の白ワインが好きとか、しっかりとしたボディのロゼワインが飲みたいとか、必ずしもお望みのタイプのワインがあるとは限りませんが、言うだけ言ってみましょう。的外れな希望なのではないかと心配したり、恥ずかしいと思う必要は全くありません。日本ソムリエ協会のソムリエさんたちは、ワインの普及を目的とした専門的なアドバイスを提供する使命を負っていますので初心者にも優しく対応してくれるはずです。
④ 合わせたい料理
フランス語で「マリアージュ」、イタリア語では「アッビナメント」などと呼びますが、料理と相性に良いワインの組み合わせについてはやはり、プロのアドバイスがあると良いでしょう。
贈り物でローストビーフを頂いたから、ワインと一緒に楽しみたいとか、テレビで見た〇〇とワインのマリアージュを自宅でも試してみたいとか。辛口のスパイシーなカレーに合わせたいとかでも大丈夫。
希望があればなんでも言ってみてください。(ちなみに、最後の晩餐はカレーライスと決めている筆者は、超辛口カレーとイタリアのランブルスコ、またはオーストラリアのスパークリング・シラーズを合わせて飲むのがお気に入りです。いずれも珍しい赤色のスパークリングワインで1,000~2,500円程度で購入できます。)
特に、レストランであればその日に頼もうと思っている料理をひと通り伝えれば、いくつかのアイテムに合うワインを選んでくれるはずです。
本来であれば、ワイン選びに迷っているお客がいれば、お店側から積極的に以上のようなポイントのヒアリングを通してワインを選んでくれても良いと思うのですが、先方もなぜか遠慮してそこまで踏み込んでこない方々が多いですね。
以上のポイントは全て伝えることができればパーフェクトですが、一部でも伝えればワイン選びがスムーズになって身近になると思います。
ワイン愛飲家AI:
約10年前に仕事上の事情で、とあるワインスクールに送り込まれたことがきっかけでワインを飲み始めた。ワインの持つ人と人を繋ぐ力に魅了され、仕事の話や肩書一切抜きでワインを共にする仲間を増やし今日に至る。休暇を利用してワインや人との出会いを求め、ワイナリー巡りをするのが趣味。今までにイタリア、フランス、ドイツ、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、モルドバ、日本のワイナリー100軒以上を訪問。
好きな言葉は Half full, half empty.
日本ソムリエ協会 : ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA、ワイン検定講師
英国 Wine Education &Trust: WSET Level 4 Diploma Candidate、 WSET Level 3 Award in Sake