円安継続 年末のドル円は120円へ
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11月2日、3日にFOMCがありますが、テーパリングを開始するということは、これまでの金融政策を変えてくるということですので、各国の動きを見てみましょう。
FOMC(9月21-22日分)議事要旨(13日)
「インフレの上サイドのリスクを指摘」
「インフレが来年も高水準を維持すると指摘」
「インフレ見通しを引き上げるとともに一過性と判断」
「テーパリングは国債が月額100億ドル、MBSが50億ドルで実施される見通し」
パウエル議長もずっと言っている通り、高水準のインフレが続くが「一時的」で、来年には少し収まってくるという認識です。
実際、テーパリングを始めるかどうかについては、先週パウエル議長がやると言っているので、それは変わらないと思います。
ちょっとサプライズだったのは、「テーパリングは国債が月額100億ドル、MBSが50億ドルで実施される見通し」というところです。前回から議事要旨に書いているので、この通りにやっていくということはほぼ決定事項なのだと思います。
パウエルFRB議長(25日)
「テーパリングを開始し、2022年半ばには完了する」
「高インフレは来年まで続く可能性が高いが、緩和していく可能性が高い」
「持続的な高インフレとなれば手段を行使する」
今週はブラックアウト期間なので発言は出ていませんが、一番最後にパウエル議長がこのように発言しています。一時的でなくなるのであれば、どんどん利上げ等々をしていくということになっていますが、それが持続的に行われるのかに注目です。
クオールズFRB理事(前副総裁)(20日)
「来春のインフレ率が4%に止まる場合、FRBは金利上昇経路を再評価する必要」
4%というのは続かないと思いますが、仮にそうなった場合、再評価するというのは、金利を引き上げていかないとという意味です。
ウォーラーFRB理事(19日)
「インフレが2022年にかけて2%を大幅に上回った場合、早期利上げを支持」
「必要に応じた利上げを可能にするため、2022年半ばまでにテーパリングを終了することを支持」
「11月の会合でテーパリングを開始すべき」
2022年に2%というのは、CPI、PCEコアデフレーターのことを言っていますが、現在も3.5%と完全に2%を上回った状態です。それが収まらない場合は早期利上げを支持すると言っているように、内部からも利上げを前倒しする発言がかなり出ています。
ブラード米セントルイス連銀総裁(13日)
「テーパリングを2022年第1四半期までに終了したい」
世界的なインフレリスク懸念の台頭
IMFは、各国中銀にインフレリスクに対処する時期に入ったと警告しています(世界経済見通し)。日本以外は世界中どこを見ても、コロナ禍からの回復の中でインフレリスクに対処しなければならないと世界的に警告を発している状況です。
FRB (アメリカ連邦準備制度理事会)
*テーパリングは11月開始、2022年9月までに完了
⇒国債100億ドル・MBS(不動産担保証券)50億ドルを毎FOMC会合で減額
⇒終了時期を巡ってサプライズ?
*利上げは2022年11月以降100%織込み(FF金利先物)
*高インフレは「一時的」ではなく、かなり長引く方向に転換せざるを得ないのではないか
⇒グリーンスパン元FRB議長やサマーズ元米財務長官も持続的なインフレに懸念表明
⇒声明文のインフレに対する表現に変化があるかどうか
BOC( カナダ中銀)
*量的緩和の終了を表明。今後は再投資のみ実施。
利上げ時期の前倒し(2022年後半から2022年半ば)27日
昨日、原油価格が急落してカナダドルが売られていましたが、この発言があってからは一気にカナダドルが買われました。
BOE(英中銀)
*年内にも利上げの必要性
(ベイリーBOE総裁「必要なら躊躇なく利上げする」)
RBNZ( ニュージーランド準備銀行 )
*0.25%利上げ(6日:追加利上げも示唆)
ノルウェー、ハンガリー、ポーランド、チェコ、アイスランド、ブラジル、メキシコ、チリ
*9月下旬から10月中に利上げ
昨日ブラジルも予想以上に値上げしましたが、こういった新興国やその他の国に関しても利上げを始めています。
MAS(シンガポール通貨庁)
*実質実効為替レートの傾斜をゼロから若干傾け(実質的金融引き締め)
BOJ(日本銀行)
*最も金融引き締めが遅れること確定的
世界中どこを見渡してもIMFが言っているように金融の引き締めに動き始めていますが、日銀に関しては最も金融引き締めとは関係ないアナザーワールドにいるような状況です。
金融政策だけ考えても、円売りになるのは当然かなという感じです。では、金融政策が遅れてきている中でのドル円の動きを見てみましょう。
ドル円チャート日足1
9月の後半から動き始めて、10月に入ってから一気に抜けてきました。ヘッジファンド等々が意識していたのは、2020/2/20の112.23円という高値です。
ここはコロナでマーケットがおかしくなった時で乱高下していますが、その時に急落して急騰してということで高値も安値もレンジを作ってしまっています。
その高値も安値も抜けないまま、コロナ禍が過ぎていきましたが、コロナ禍のはじまりの乱高下の高値が2020/2/20の112.23円です。
これを抜けたことによって、かなり急激な上昇となりました。ここをブレイクしたので皆買い始めました。
ドル円チャート日足2
10月に入って上がり始めましたが、2021/10/11に一気に上抜け。
10/12、13で113円台のところをサポートされて上値を試しました。
造船や、飛行機、石油会社など、長期に渡って為替を買っていかないといけない輸入企業は「長期為替」と言って何年も先まで為替を同じレートで買えるような予約をとっていることが多いです。コストを安くするために制限をかけて予約しています。
例えば今年に入ってドル円が上がってくる中でドルを買わなければならない時に、コロナ禍の高値112.23円まで行くことはないだろう、ここを抜けてもバッファーを取って113円は抜けないだろうということで、
113円についたら為替の予約が無くなってしまうというコストを安くした予約「ノックアウト」をかなり国内の輸入企業がしていたと考えられます。
それを抜けたことによって予約が無くなってしまったので、いまの113円で買わなければならないという状況になってきています。
113円を上抜けたことによって需給関係がコロッと変わりました。それまでは111円、112円になると輸出企業が売っていて上がらないという話がずっとありましたが、いま輸出企業はすごく売っているということではなさそうです。
そして、いま日本は貿易収支が赤字なので、需給的にはドル買いがどんどん増えています。しかも直近113円のノックアウトをつけたことによって、113円のところが止まっている形になっています。
10/11に113円を上抜けて、10/12に113円ちょうどでピタリと止まって、そこから114円まで一気に上がっていきました。そのあと今は揉み合いをしています。
ドル円チャート週足
ここでもう少し長めのチャートを見てもらうと分かるのですが、マーケットが重要視していたのが 2018/10/4の114.55円、2017/11/6の114.73円のところです。
2016/12/15に118.66円をつけたあと、1回下がって戻したのですが、戻したときに何度も115円をつけれらなくて、その時の戻りが114.55円と114.73円でした。
そこからまたコロナ相場が始まってしまったのですが、今回抜けたことによってコロナ相場が終わり、114円、115円のところにもう一度トライし始めています。
今月10/20に114.70円まで上がりましたが、114.73円の手前で止まりポジション調整が少し出ています。
チャート的に見ても1、2回では抜けないと思うので、何度もトライをしながら最終的には抜けてきて2016/12/15の118.66円がターゲットになると見ています。
ここを抜ければ、 125.86 円までないので120円台という話になってくると思います。
いま日本は貿易赤字国で輸出で売るものが無くなってきているとともに、原油や天然ガスなどの原材料はどんどんレベルが違う高さになってきていて、でも日本は買わざるを得ない状況です。
しかもEV(電気自動車)も完全に後塵となってしまっていて、トヨタにしてもいまだにハイブリッドを売ろうとしています。
世界的に電気自動車しか買わない時代になってきているにも関わらずそういう状況が作られていないので、日本が売るものが無くなってきて、そういった貿易構造の中で、必然的に円売り状況にならざるを得ないと見ています。