食糧不足!ガソリン危機!パニック状態の英国の現状とポンドの動き
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食糧不足!ガソリン危機!パニック状態の英国の現状とポンドの動き
世界的にもいろいろ問題が多い
●長期金利が上昇に転じた
日本は、日銀が長期金利を操作しているため、あまり上がっていませんが、それ以外の国は、中央銀行のQE策で国債をどんどん買っているにも関わらず、異様な速度で上がっています。
私が住んでいる英国でも0.8%で長らく低空飛行していましたが、とうとう3日前に1%を超え、アメリカに追いつく勢いで上がり始めています。
●主要国の中央銀行が緩和策からの出口戦略を発表し始めた
アメリカ : 早ければ11月にもテーパリングの発表
英国 : 早ければ来年の2月にも利上げ
ノルウェー : 既に利上げを開始
NZ : 昨日利上げを開始
カナダ : 既にテーパリングを開始
●インフレ率が中銀のインフレ目標を超えてきた
インフレ率が中央銀行のインフレ目標2%を軽く超え、2倍までいくのではないかという勢いです。
●エネルギー不足懸念により、最近のインフレ率上昇が本当に「一過性のもの」であるのか自信がなくなっている
●アメリカの債務上限問題
昨日、マコーネル上院院内総務がしばらく凍結すると仰っていたようですが、凍結しても、期日がくると、また騒ぐ問題だと思っています。そういうサイクルでいつもくる問題という印象が少しあります。
●サプライチェーン逼迫が収まらないため、生産者価格が上昇しそれが小売価格の引き上げを生んでいる
イギリスでは、5月からサプライチェーン逼迫が問題となってきましたが、今では世界的な現象になってきています。
サプライチェーンの逼迫の影響で物が入ってこないため、ようやく入ってきた原材料の仕入れ価格が非常に値上げされています。それを使ってつくる生産者は小売業に渡す際に生産者価格に仕入れの値上げ分を上乗せ。
イギリスの場合、今までは、小売り業者が値上げの部分をのんでいましたが我慢できなくなり、8月くらいから物価上昇を体感し始めました。イギリスでは、確実に小売価格の引き上げがありました。アメリカでもその他の国でも起きているのではないのでしょうか。
英国を取り巻く厳しい環境
Brexitの影響
英国内、またヨーロッパから物が運ばれる物流の運転手さんは、東欧出身の方がメインだったようですが、Brexitが始まり10万人単位で東欧に帰ったことが初めてわかりました。
イギリスのスーパーに並ぶ食料品の70%がオランダ、フランスのいずれかの港から入ってくるものというのも私は初めて学びました。その物流のトラックや船の運転手がいなくなったために入ってこなくなり食料棚が空になっていきました。
昨年のロックダウンの時にも同じ現象がありましたが、その際は、トラックの運転手さん不足ではなく、そもそも物がなくなってきたということが問題でした。現在は運転手の方が居ないため、ヨーロッパに物はあるけれども、イギリスに入ってこないという状況があります。
そして、大型のトラックの中でも特殊技術を要する石油タンカートラックの運転手の方も東欧の方が非常に多かったということで、ガソリンはイギリス国内にあるけれども、スタンドまで運ぶ人がいないという状況です。
運転手さんのライセンスは、爆発物の取扱なのでメンタルヘルスなどもあるらしく、一朝一夕で取得できるものではないらしいです。ヨーロッパに対して5000人分のビザを特別に受け入れますとしたのですが、申請してきたのは127名だそうです。
ヨーロッパの中も運転手さんが逼迫していて、ひとりでも多くの運転手さんが欲しいのでポルトガルやイタリアも物凄く高給で雇ってもらえるそうです。中には英国が提示した好条件より3割ぐらい給料が良いところもあるので、英国に国境を跨いでくる人がますますいない状況です。
そして、とうとう今週の月曜日から軍の大型機を運転する方が、特殊な爆発物取り扱いのライセンスを急遽取得し、運び始めているようです。北はだいぶ、うまり始めてきたけれどロンドンとロンドンから南は、国民の人口比でガソリンスタンドの数が圧倒的に少ないことと、人口が集中しているためガソリンが未だに足りなくてパニック状態です。ガソリン不足が始まって、ちょうど2週間が経ちました。
日本でガソリンスタンドが2週間もの間、閉鎖していることを想像してみるとお分かりいただけるでしょう。私も日本に帰国する前にガソリンが4分の1しかなく、緊急時以外は運転せずにスーパーにはバスで行っていました。幸い、トイレットペーパーや水などはコストコで多く買っており、魚や野菜の購入のみだったので、問題はありませんでした。
自分で買いにいけないのであれば、オンラインで購入してスーパーに配達してもらえばよいのですが、スーパーのデリバリーの車のガソリンもありません。そのため、デリバリー枠も少なくなっていました。こういう時に、イギリスは奉仕の精神が強いため、お年寄りや身体が不自由な方たちに優先的に枠を与えます。私みたいな年齢の人には回ってきません。
友人は、ガソリンスタンドが近所の半径3キロに5軒あり、全て閉鎖されていて仕方なく高速に乗って探したが、見事にすべて閉鎖されており、ガソリン使っただけで終わり、泣きながら帰ってきたと話していました。
サプライチェーンの逼迫でモノ不足で物価が上昇していることに加え、あいているガソリンスタンドでは、便乗値上げしています。200円/ℓ程度だったのが280円/ℓ程度になっているのは、単純なる便乗値上げだと思います。物価が計算できないほど、値上げしている感じです。人間の住む場所ではないくらいのパニックです。
ガス電気代
イギリスにはOfgemというところがあり、ここは無謀に高いガス・電気代を顧客に押し付けていないか取り締まるところでしたが、今は逆です。年に3回程度見直しするのですが、仕入れ価格が上昇していることを受け、10月から値上げすると発表しました。来年の4月の見直しでも、大幅値上げは避けられないであろうと言われています。
ガソリン価格も上昇し、ガス電気代も値上げされると、増税のような感じがしています。
労働者不足
労働者不足というのは、Brexitの影響もありますが、熟練した方たちがヨーロッパへ帰ってしまいました。トラックの運転手の方たちだけではなく、医療従事者、マネジメントクラスの方たちも帰ってしまいました。野菜の収穫者である季節労働者は東ヨーロッパの方たちでしたが、帰ってこないため、今年は多くの野菜や果物が腐ったまま放置され、その分の値上げもありました。
多方面で労働力が不足しているため、一時金を出して雇ってはいます。英国は16歳で義務教育が終了し、大学進学率は4割程度なので、大工・左官工・工務店など手に職をつけている人は多くいます。しかし、マネジメントクラスになると人材不足で、そういう方たちのお給料は上がっていますし、好条件で求人しても応募してきません。ガス電気代の高騰に加えBrexitの不足でダブル・トリプルパンチになっている状況です。
2016年に繰り返し言われていたのが、英国がEUに払う拠出金が浮くので、その分を医療にまわしますということで、国民はブレグジットを了解したのですが、食べる物がなくて車が運転できないという状況になるとは思わなかったです。
そして、医療は未だに崩壊したままで、その分の増税が来年の4月からあるので踏んだり蹴ったりで、人が住む最低基準ができていないような状況です。G7の一員である英国が、普段の生活が送れないということは、あってはいけないことだと思います。
英中銀ポンド実効レート
いま、ドル高だからポンドが下がっているという方もいますが、ポンドもきちんと下がっていることが分かると思います。
緑色の80.9836がずっと抜けなかったのですが、9月29日に抜けました。今は戻っていますが、イギリスに住んでいて実感するのが、ポンドはファンダメンタルズ的にもよくないですし、テクニカル的にも下抜けしているので、今はポンドを買うことは私はしたくありません。
食料品不足のスーパーの棚
こちらはデパ地下スーパーで、普通のスーパーよりも品物が溢れているようなところなのですが、そこでさえ、このような状況です。
左下の「THANK YOU FOR BEARING WITH US」というのは、とにかく今はどれだけ頑張っても物が入ってこないので、パニックをして買わずに限りあるものを皆さんで分けましょうということです。
ロックダウンの時は、数量制限がありましたが、現在はありません。しかし、スーパーで買い物をしている人のカートを見ても、買いだめしている人は誰もおらず、自分の必要な分だけ買い物をしています。こういうところは、英国人はすごいなと思います。
ガソリンスタンドでもあいているところは、ひとり30ポンドまでというところが結構あるらしいです。30ポンドだと、小型車でも半分ぐらいの量しか買えません。
色んな意味で今の英国は異常事態だと思っています。