ドイツは3党(SPD・緑の党・FDP)連立政権か
★★★上級者向け記事
動き始めた連立交渉
ドイツ連立政権への組み合わせを巡って、SPD(社会民主党)とCDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)の上位2政党が各々動き始めた。
ただ、SPDとCDU・CSUは16年間のメルケル政権のうち、12年間も大連立を組んだことや、特にSPDが存在基盤を危うくする局面を何度も経験したことから双方連立の可能性は、低いと見られる。
となると、これまでの安定した二党連立体制に終止符が打たれ、ドイツ史上初となる三党連立政権に移ることはほぼ確実と見られている。
第三党の緑の党および第四党のFDP(自由民主党)の連立入りの可能性が高く、これら政党が中道左派(SPD)あるいは中道右派(CDU・CSU)のどちらと連立を組むかに注目されている。
ただしSPDのショルツ首相候補は、CDU・CSUのラシェット候補に比べ、格段に国民からの人気があるため、主導権争いという点からもSPDに分があることは確かである。
連立協議には数週間から数ヵ月かかるとみられているが、最も実現性の高い組み合わせは「SPD・緑の党・FDP」である。緑の党も気候変動政策や富裕税などの政策が一致するSPDとの連立を望んでいるという。
この三党連立政権が誕生した場合、前回から7割増に近い得票率を獲得した緑の党の発言力が
高まり、環境問題への配慮が強まることにもなろう。緑の党は、党の名前の由来どおり積極的な環境政策を進めており、選挙公約では2030年までに内部燃料型エンジン自動車の販売禁止を打ち出している。
EUは低炭素経済への移行に向けた法案パッケージの一環として2035年以降は、ハイブリッドを含むゼロエミッション車以外の販売を実質的に禁止する方針を示しているが、この目標を大幅に前倒しすることとなる。
さらに同党のベーアボック共同党首は、電気自動車(EV)への切替えを加速させるために、燃料税の引上げを示唆するなど極めて厳しい公約も掲げている。このため、日本を含む欧州での自動車メーカーは、戦略転換を図る必要がでてくる可能性がある。
また緑の党およびSPDが公約で掲げている富裕税に関して、ドイツの資産家は警戒している。
コロナ禍での財政支出を補うため、SPDは200万ユーロ(約2.6億円)以上の保有資産に対して、年間1%の富裕税導入を公約しており、成功した起業家をはじめ富裕層は警戒を隠せない。既に一部は隣国スイスに資産を退避させるなど、予防措置をとっている。
一方、FDPのリントナー党首は、連立への参加にあたり、減税や新たな公約債務への抑制、一時停止中の債務ブレーキの再開、自身の財務相就任といった厳しい条件を挙げている。こうなってくると、SPD・緑の党・FDPの三党連立政権なんぞスタートできるわけがないと思えるのだが…
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(この記事は 2021年10月05日に書かれたものです)