中国の大変化に疎い米国市場関係者
★★★上級者向け記事
米欧の景況見通しは下向き
それにしても9月FOMC(21・22日)後の市場のセンチメントは、「11月FOMCでのテーパリング決定、来年半ば頃にテーパリング終了、早ければ来年後半にも利上げ」というFOMCメンバーの多数派の見通しそのものになった。もう、それ以外の見通しは考えられないかの如くだ。
米国債ディーラーの中には、こうしたセンチメントを利用して、債券のショートポジションを積み上げ始めた向きもあって、28日の米国10年国債利回りは一時、1.56%(8月当初は1.17%台)まで上昇。ドル円も111円台後半まで円安となった。
しかし、米欧と中国の足元の景況や見通しをチェックすると、どうしてそんなに早期テーパリングを断言できるのか理解できない。確かに足元のインフレ率は上昇トレンドの中にあり、雇用も曲がりなりにも回復傾向にある。
だが一方で、インフレ率も雇用も相当に歪んだ内容を含んでおり、テーパリング開始の条件には程遠い。ましてや、世界経済の中で中心的存在である米欧・中国の景況見通しが下向きの中で、米国がテーパリング開始を急ぐメリットが一体、どこにあるというのか。
英IHSマークイットが23日公表した米国と欧州の9月の購買担当者景気指数(PMI、速報値)はそろって悪化した。新型コロナウィルスの感染拡大による需要の鈍化やサプライチェーンの混乱などが、景況感に影を落としている。
米国のPMI総合指数は54.5となり、8月比0.9ポイント下がった。4ヵ月連続の低下で、1年ぶりの低水準になった。製造業は60.5、サービス業は54.4と、ともに前月比で下落した。
製造業は5ヵ月ぶりの低水準だった。需要は強く、新規受注や輸出は好調だが原材料不足など供給制約が生産を鈍らせている。調査した多くの企業が労働者の確保や既にいる従業員の維持の難しさを指摘し、賃金を引き上げて採用していると報告した。
サービス業はコロナのデルタ型の感染拡大が重荷となり、1年2ヵ月ぶりの低水準となった。人手確保に伴う賃上げでコストが上昇しており、複数の企業は顧客に提供するサービスの価格転嫁を検討していると報告した。
ユーロ圏の景況感も悪化している。PMIは56.1で8月の59.0から急落して5ヵ月ぶりの低水準となった。サービス業は56.3で8月と比べて2.7ポイント低下、製造業は58.7も同じく2.7ポイント低下した。好不況の分かれ目とされる50は依然として上回っているが、回復の勢いは衰えつつある。
HISマークイットの担当者は「価格や供給面の逆風が緩和の兆しを見せなければ、今後数ヵ月は成長がさらに弱まりそうだ」と警戒を示した。しかもユーロ圏経済の中軸国である独仏が冴えない点が気にかかる。
ドイツのPMIが2月以来の水準に落ち込んだ。フランスも4月以来の低水準だ。ドイツでは8月の乗用車生産が前年同月比で32%も減少するなど、半導体などの供給制約の影響が深刻になっている。
今後、電力料金の値上がりなどがさらに追い打ちをかける可能性もある。
中国情勢が最大のネックに
そして、何よりも懸念されるのが「第二の文化大革命」に突入したGDP大国=中国の動向である。
グローバリゼーション下で米国の多くの製造企業が中国に進出し、米国経済を支えている現実は、どの国のエコノミストでも知り抜いている。
胴元でもある米国のエコノミスト、ましてやFOMCのメンバーたちは、誰よりも分析力を持っているはずである。
彼らが、どうして中国の動向を織り込んでいないのか、不可思議である。
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(この記事は 2021年9月28日に書かれたものです)