「共同富裕」ドクトリンのインパクト
★★★上級者向け記事
経済情報統制強化と景気変調
「 中国経済を歪曲した海外報道を転載してはならない 」
中国の国家インターネット情報弁公室が8月27日、取り締まり強化を発表した。
「経済の先行きを悲観した報道や書き込みによって金融市場が混乱するのを避けるため」とし、具体的には
- 当局の経済政策やマクロ統計を勝手に解脱し中国経済の減速を唱える
- 海外で歪曲して分析された中国経済の報道をむやみに紹介する
- 巷の情報などを大袈裟に報じて人心を惑わす
- 経済ニュースを断片的に伝えたり悪意をもって改ざんしたりする
などの行為を厳しく禁じるという。
当局はこれまでも中国のネット業界に対する締め付けを強めてきたが、今回は経済報道に対する監視強化に乗り出す。
これを受け、短文投稿サイトのウェイボ(微博)など主要な会員制サイトは次々と、経済衰退を吹聴するような書き込みを排除すると宣言した。
こうした動きのなかで中国の経済実態に明らかな変調が目立ってきた。とりわけ8月の製造業のPMIは衝撃だ。国内、輸出とも新規受注が振るわず、多くの企業が、先行きに自信が持てなくなっている。
さらに非製造業のビジネス活動指数は実に47.5と前月より5.8ポイントも悪化し、昨年2月(コロナ禍発生時)以来の50割れとなった。観光や飲食業の不振が続いている。
中国経済の変調は7月の統計で、すでにその兆候を見せ始めていた。固定資産投資の伸びが一段と減速したほか、消費は1ケタの増加率にとどまった。成長加速の伸びが一段と減速。
なんとか8月の輸出増加で底割れを回避したが、コロナ禍が鎮静化した国・地域が、輸出を再稼働させており、代替生産による中国の輸出押し上げ効果は当面、期待できない。
国内各地で散発するデルタ株感染も輸出に影響必至の状況にある。8月中旬、浙江省の巨大港で働く荷役作業員がコロナ感染。当局が防疫体制を強化したことから、同港の一部のコンテナターミナルが、操業停止に追い込まれた。
この港のコンテナ取扱量は上海港、シンガポール港に次ぐ世界3位。ちょうど欧米のクリスマスシーズン向けに玩具など消費財の出荷がピークを迎えており、同港に近い上海港、福建省アモイ港を臨時使用して何とか8月の出港に間に合わせた(ゆえに8月の輸出は増加の結果に)のが実情。
海運だけでなく、上海の浦東国際空港でも8月下旬、荷役作業員らの感染が確認され、貨物ターミナルの受託業務や国際航空貨物便の運航が一時停止された。
景気の変調を受けて、海外の金融機関の間では2021年の中国実質GDP成長率見通しを引き下げる動きが相次いでいる。
JPモルガンとGSは、それぞれ9.1%→8.9%、8.6%→8.3%へ下方修正。UBSグループのチーフ中国エコノミストも9%→8.2%に下げた。
人民銀行は預金準備率の複数回の引き下げで資金供給して対応する方針にあるが、「8.17習講話」が一気に中国全土で具体化するゆえ、その程度の金融緩和で、「経済・社会構造の大転換」によるトリクルダウンをリカバーできるとは思えない。
8月27日の「経済情報統制令」は、そのことを予見したからである。
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(この記事は 2021年9月13日に書かれたものです)