米国金利の上昇トレンドは当分ない
中国の景気減速は要注意
8月27日のFRB議長ジャクソンホール演説については、言うまでもないゆえ言及しないが、9月3日に発表された雇用統計の内容には当面の見通しにつながる、いくつかの懸念材料がシグナルとして出現しているゆえ要注意である。
そして、もう一つ、世界経済の回復プロセスへのリスクとして、COVID19のミュー型変異株拡大がニュースとして始まった点も気にかかる。
つまり、米国金利の上昇が難しくなる見通しが強まりつつあり、中でも、早々にボディブロー的に影響し始めたのが中国の景気減速懸念である。
中国経済に対する懸念が金融市場で急速に高まっている。
中国当局が実態とは異なる情報に神経を尖らせるのは当然だろうが、経済の実態を映す各種の統計では、そんな当局の神経を逆なでするような不安な数字が目立ってきた。
とりわけ8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は衝撃だ。
50.1と5ヵ月連続で前月より悪化し、景気判断の節目である50を割り込む寸前にまで下がった。国内、輸出とも新規受注が振るわず、多くの企業が先行きに自信を持てなくなっている。
英調査会社マークイット社の8月財新製造業PMIは49.2と、前月から-1.1ポイントも低下して16カ月ぶりに50を下回る水準となった。
足下の生産動向を示す「生産指数」は47.7(前月比-1.1)、先行きの生産に影響を与える「新規受注指数」も48.0(同-2.3)と6ヵ月ぶりに50を下回っている。
しかも、減産の動きにも拘らず「完成品在庫指数」は50.7(前月比+2.6)に上昇するなど在庫が積み上がっている動きが確認されるなど、先行きは在庫調整の動きが強まることが懸念される。
さらに、国際原油価格は上昇の動きが一服しているものの、「投入価格」は前月比+0.6上昇するなど高止まりしている一方、「出荷価格指数」は前月比+1ポイント上昇するなど価格転嫁を進める動きもみられるが、当局が価格転嫁を事実上抑制している上、内需の下押しにより、価格転嫁が難しくなることも予想されるなど、企業業績が圧迫される可能性もある。
また、減産の動きが強まっていることを受けて「雇用指数」も、49.8と前月比-0.3ポイント低下し5ヵ月ぶりに50割れとなるなど調整圧力が強まる動きが確認されており、家計消費をはじめとする内需の重石になることは避けられない。
ASEANをはじめとするアジアの新興国での変異株によるコロナウィルス感染拡大の動きは、サプライチェーンを通じて外需の足かせとなる動きに繋がっているほか、中国国内においても変異株による感染再拡大を受けて行動制限が再強化されている上、洪水など自然災害の頻発も影響して幅広い経済活動の重石になっていることが、企業マインドの悪化を招いたとみられる。
減産の動きを反映して「購入量指数」は49.5と前月比-1.1ポイントと5ヵ月ぶりの50割れ。中国向け輸出に依存する国々や資源国にとっては景気の足を引っ張る動きになりかねない。
中国クレジットインパルスと米金利
こうした中国経済減速懸念が米国金利低下の一因となるという相関グラフが存在する。
「中国クレジットインパルスと米金利」というもの。
中国クレジットインパルス指標とは分子が社会融資総量(銀行貸出、シャドーバンキング、株式、社債、国債の合計=ストック)の前年同月対比の増加額、分母は名目GDPで算出される指標であり、ようするに中国の信用の方向性を測る指標だ。
市場では、同指標が中国政府の政策スタンスを示すものとして捉えられており、同指標が加速傾向となれば、政策スタンスが景気浮揚に傾いていると解釈され、市場では景気拡大期待が高まる。
しかし、2020年末から同指標は明確に減速している。
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(この記事は 2021年9月5日に書かれたものです)