米国5月コアCPIでの動揺はない
★★★上級者向け記事
ベージュブックで物価上昇に警戒
2013年5月の「テーパータントラム」(FRB議長が資産買入額の縮小を突然示唆したことによる金融市場の大混乱)は、もう再発はしないものと思われるが、コロナ禍という滅多にない感染ウイルスのパンデミック下での米国や、世界経済の推移状況が読み切れず市場は、「リスクオフ」シナリオを抱えたままにある。
つまり、経済データや高官発言に一喜一憂しているのが現実である。足元では今週10日に発表される米国5月のCPI(消費者物価指数)に注目が集まっている。
FRBが物価動向で最も重視しているのが「コアPCE(個人消費支出)デフレーター」であり、最近はNY連銀の「基調的インフレ率」も重視しているようだが、4月の消費者物価が予想以上に上昇したことで、市場が気にし始めたということであろう。
その動向を予測するには2日にFRBが発表した「ベージュブック」(4月上旬~5月下旬の地区連銀経済報告)をベースにするのがベストだろう。
今回の報告では、米経済が一段と上向いたとの判断を示した。ワクチンが普及し景気が回復する一方、サプライチェーンの逼迫など企業がコスト増に直面しており、一段の物価上昇圧力に警戒感を示す一方、前回(2月下旬~4月上旬)より幾分速いペースで緩やかに拡大したと総括。
飲食サーピス業、ホテル・レジャー産業、小売業の伸びが力強く、製造業も良好。ニューヨーク地区の小売りチェーンは「海外からの観光需要が弱いにもかかわらず、売り上げは計画を上回った」とした。
ホテルの客室稼働率も回復しており、「出張、会議、イベントの予約も増え始めた」(アトランタ地区の旅行業者)という。景気回復に伴い雇用は確実に増えた一方、人手不足も鮮明。
企業からは「異常なほど労働者を見つけるのが難しい」(ボストン地区の製造業)との声もあがった。低賃金労働者や運転手、専門技能を持つ労働者の採用が難しく、求人が埋まらず需要増に応じて増産できなかったり、時短営業に追い込まれたりする企業が出ているとも記している。
人手不足で賃金上昇圧力も強まっており、「時間給14ドルでも未熟錬労働者の求人が埋まらない」(ダラス地区の製造業者)といった例も聞かれた。より高い賃金や適職を求めて転職する人も増えており、ニューヨーク地区では主要産業の相当数の企業が賃上げを計画しているといる。
半導体などの部品調達難も深刻になっている。報告書には「半導体の不足が将来の生産計画の制約となっている」(フィラデルフィア地区連銀)「半導体不足で新車の供給が減り、在庫は極めて低水準だ」(リッチモンド地区)といった内容が盛り込まれた。
特に建設資材や原材料の急騰を指摘する声が目立った。輸送、梱包の費用や石油化学製品も値上がりした。人件費や調達難に伴い、物価上昇圧力は強まっている。「部品メーカーが(人手不足により)以前よりも頻繁に価格を上げてきている」(クリーブランド地区の製造業)といった指摘が目立った。
強い需要を背景に製造業や建築業、輸送業などの企業の多くがコスト上昇分を商品やサービス価格に転嫁しており、報告書は足元で「物価上昇圧力が一段と強まっている」と指摘した。
コスト増と価格上昇は今後数カ月続くとの見方が多い。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部を抜粋しています。
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(この記事は 2021年6月8日に書かれたものです)