不動産の価格を決める2つの方法と経費の考え方
不動産の価格を決める2つの方法
不動産の価格を決める方法は2つあります。
比準価格と収益価格
マンションの場合は、比準価格と収益価格になります。
・比準価格:近隣のマンションと比べる方法
・収益価格:賃料から決める方法
積算価格と収益価格
そうではなく、アパートや1棟のマンションの価格を決めるには、積算価格と収益価格で決めます。
・積算価格:土地の価格+建物の価格
銀行によって違いますが、ほとんどの銀行は担保評価の時にこの価格を採用します。よって、銀行のローンが出やすい物件は、土地の面積が大きいものが多くなります。田舎で土地の面積が大きく、建物が新しいと、まず融資が出てきます。ただ最近では、多少古い物件や、変わった物件でも銀行側が融資をしており、少し異常な状況となっています。
・収益価格:年間の収益を利回りで割った価格
利回りについては、2つの利回りがあるので後ほど説明します。銀行によってその評価は違いますが、例えば、りそな銀行は、積算価格ではなく収益価格で評価すると表明しています。銀行によって積算価格を重視するのか収益価格を重視するのか異なるので、それによって融資が受けられる物件と受けられない物件があります。
積算価格について、土地の価格と建物の価格を決める方法
積算価格を算出するために必要な土地の価格と建物の価格を決める方法について説明します。
土地の価格を決める方法
鑑定士であれば簡単に決められますが、みなさまでも決められる方法があります。銀行が採用している方法です。それは、土地の価格を決めるときに相続税路線価を採用することです。
相続税路線価は、WEBサイトから調べることができます。相続税路線価×1.25 (銀行によって異なる)が土地の価格として対応しているようです。
ただ、これは住宅地だけのものであり、商業地の場合は容積率が大きいので上に立っていきます。
建物の価格を決める方法
一方で、建物の価格は以下の方法で決めます。
建物の単価×延べ床面積×(残存耐用年数÷法定耐用年数)
残存耐用年数とは、例えば築2年のアパートの価格を決める際に、平米単価が20万円、木造のアパートの税務上の法廷耐用年数が22年の場合、以下のような計算となります。
20万円×100㎡×(20/22)≒1800万円
積算価格は、土地の路線価格から決めた土地の価格に建物の価格を足します。税務上の法定対応年数は、インターネット上に載っています。
・rc :47年
・木造:22年
・軽量鉄骨造:19年
・重量鉄骨造:30年(鉄骨はその骨格材の厚みによって法定対応年数が異なる)
これで建物価格を決めます。そうすると、軽量鉄骨が一番不利になります。鑑定すると、実は木造の方が耐用年数は軽量鉄骨よりも短く計算しますが、税務上は決まっているのでこれは採用せざるを得ないです。ただし銀行によっては、これを長くしてくれるところもあり、これは銀行によって異なります。
相続税路線価を調べる方法
相続税路線価をどのように調べるのかというと、国税庁のホームページに財産評価基準というものがあります。日本全国の地図が載っており、地域ごとの路線価格を確認することができます。
ただ、これは住宅だから採用できるものであり、商業ビルでは採用できません。どうしても採用したい場合は、掛ける係数を1.25ではなくて1.5、2、銀座の場合は3、4のように上げる形になります。つまり、路線価格の4倍など、そのような形になっていきます。
収益価格の2つの利回り
おさらいですが、収益価格とは年間の収益を利回りで割った価格のことを指します。収益価格については、とても大切なのでぜひ覚えてください。収益価格には、2つの利回りがあります。
表面利回りと実質利回り
この利回りは、表面利回りと実質利回りというものに分かれています。表面利回りでいくらなのかざっくり計算して使うほうが楽なので、そのように判断することが多いです。しかし、本当は実質利回りまできちんと計算して、購入する時はそちらで判断していく必要があります。
表面利回りが簡単なのは、ただ単に年間家賃を不動産価格で割っているだけだからです。それに比べて、実質利回り(ネット利回り)は、少し面倒です。なぜかというと、年間家賃から経費を引かなくてはいけないのです。それは、ちゃんとオープンになっていればいいのですが、なかなかオープンにするためには書類など色々と提供する必要があります。
マンションの場合は簡単です。例えば年間家賃から管理費修繕積立金、固定資産税、管理会社に管理を頼む場合は pm フィーがかかってきます。加えて厳密に言うなら、空室率、空室になった時のお掃除費用、それを不動産価格で割ったものが実質利回りになります。だいたい区分所有のマンションの場合は、この差が年数によって違いますが2%~3%くらいとなります。
表面利回りと実質利回りの計算方法
では、実際にどのように計算するのかというのを見ていきます。例を使って説明します。
・年間家賃:90万円
・価格:750万円
この場合、
表面利回りは90万円÷750万円=12%
実質利回りは、(90万円‐経費)÷750万円=8.5%前後となります。
実際こういう時は、実質利回りで判断します。そうでないと、ローンなどを組んでしまって表面利回りで判断すると大変なことになります。区分所有のマンションの場合は、新築の場合はこの差がとても小さくなります。なぜかというと、管理費修繕積立金が新しい建物のほうが安くなるためです。それが古くなると少しずつ上がっていきますので、この差がだんだん大きくなっていきます。
不動産投資で認められる経費
次に、不動産投資で認められる経費について説明します。皆さんが大家さんになったあとで年末調整をする際に、何が経費になるか説明していきます。(結構経費になるものがあります)
不動産投資で経費になるものは?
・土地建物の固定資産税、都市計画税の税金
・修繕費(小さな修繕費は経費となる。大規模なマンションの場合、例えば外壁を塗り直したり屋根を取り壊してしまったりなどの大きな修繕の場合は、減価償却していかなくてはいけないので経費とまた違う分野になる)
・損害保険料(掛け捨てのものでその年の部分のみ経費となる。損害保険料は、長期で入っておいた方が割安。)
・マンション全体の管理費修繕積立金
・入居者募集のための広告宣伝費(以前は、広告宣伝費は貸主が1ヶ月分払えばよい方だったが、現在では、なかなか決まらない場合は2ヶ月程度払う場合もあるので、費用としては発生する可能性あり)
・減価償却費
・借入金金利(金利の部分だけ)
・税理士に頼んだ場合は、税理士費用
・その他の雑費(自分で掃除した際の掃除費用、消耗品費、交通費、通信費など)
減価償却費とは?
この中で気をつけていただきたい項目が、減価償却費となります。経費とついていますが、実際には経費としては出ていきません。土地と建物のうち、建物だけが減価償却できますが、毎年建物の価格を少しずつ減価していくとみて、経費にしていくというようなイメージです。
減価償却費は、実際には出て行かないなので、節税効果があると言われています。対象は「建物のみ」(土地は対象外)なので、減価償却費が大きいということは、実際には出て行かないのに費用として計上できるので、あがりが増えます。加えて、減価償却の年数というのは建物の構造により決まっており
・鉄筋コンクリート:47年
・重量鉄骨造:34年
・木造アパート:20年
・軽量鉄骨造:19年
となっています。りそな銀行を例にあげると、年数がきちんと決まっていて、これを超えたものに関してはローンをこれ以上貸し出ませんという銀行もあります。一方で、築22年経っている木造アパートにも、まだ20年ローンを融資するような銀行もあります。
減価償却費の残存耐用年数を計算する方法
次にその減価償却費の残存耐用年数を、どうやって計算するのかについて説明していきます。
・中古の木造アパート(築10年)の計算方法
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
(22年-10年)+10年×20%=14年
法定耐用年数を超えたアパートは、減価償却が全くないのかっていうと実はそうではありません。法定耐用年数を超えたアパートも、一応減価償却があります。少ないですが、その計算の仕方は、法定耐用年数×20%です。
・法定耐用年数を超えたアパート(築30年)の計算方法
法定耐用年数×20%
22年×20%≒4年(小数点以下切り捨て)
よって、古いアパートは4年間減価償却できます。建物価格が大きければ、これを4年間で償却するので、実は節税効果がとても大きくなります。ですが、普通はでその残存対応年数がもう切れたようなアパートの建物価格はほとんどゼロに近いです。たまにそこで調整してくれて、建物価格が大きければ節税効果が大きくなります。
ただし、5年以降から減価償却がゼロになってしまうので、一気に費用が少なくなり、手残りが少なくなるということがあります。なので、減価償却は少し気をつけなくてはいけません。皆さんがシミュレーションする時には、この減価償却もシミュレーションしていかなくてはいけません。
土地と建物の配分方法
その減価償却について、もう少し説明していきます。土地と建物に配分して、建物のみが減価償却できるということでした。そこで、土地と建物をどうやって配分するのか?ということになると思いますが、通常不動産会社は、固定資産税の割合を掛けているので、土地・建物の価格に固定資産税の割合をかけて土地・建物の価格を決めています。ですが、これは決まっているわけではありません。
これにしておけば何も言われないというだけでこの価格にしていますが、実は運営側に交渉してみるということができます。ただ、区分所有マンション200~300万ぐらいのものを交渉するとちょっと嫌がられる可能性はあります。例えば、割と大きな物件では、建物価格を多くしてもらったけど、売主が業者の場合に建物価格が大きくなると、契約時の消費税が高くなるという欠点があるので、そこの兼ね合いで考えてみるのもいいと思います。
建物と附属設備の償却期間
減価償却期間については、先程説明しましたが、建物は実は本体と付属設備に分けます。こちらも明確な決め方はないようですが、鑑定では割と明確です。
・本体の償却期間:47年、34年、22年、19年
・設備の償却期間:15年
・設備の償却期間方法:定額法、定率法のいずれかを選択
・本体と設備の割合:決まっていないがRC造は70:30、木造は80:20がひとつの参考になる
ただ、一棟のアパートや一棟のマンションの場合、マンションの場合で区分所有の場合は、面倒なので、一律に定額法で分けずに進める方法がほとんどだと思います。しかし、もっと規模の大きい場合は、定率法を使って計算した方が手残りは多くなると思います。