世界の脱炭素計画がインフレをもたらす?!Drカッパーが示す金利上昇サイン
2021年3月25日に大橋ひろこさんに解説いただいた内容を記事にアップしました。動画でご覧になりたい方はこちら↓
米金利上昇の時代へ
今年は金利の上昇がどこまであるのかというのが1つ大きな注目点です。こちらはアメリカの長期債利回りのチャートです。
債券が買われると金利が下がります。
債券が売られると金利が上がります。
ついこの間まで金利が下がり債券が買われて債券はバブル状態でした。
リーマンショックがあり欧州債務危機があり、 トランプ大統領が出てきて景気が良くなって、1回債券は売られて金利が上がって来ましたが、またコロナショックで一時0.36%まで下がりました。
ところが、米国では今足元でものすごい勢いで金利が反発しているということが話題になっています。この金利がどこまで上がっていくのかというと短期的にはこの間上がった1.75%が短期的なピークで、一旦下がってくると思っています。
ただ、超長期的には上がっていくとみています。景気が良くなっていくと色々なテーマで新しい需要を喚起していくというのが主な金利上昇の背景にあるとみています。
新興国は利上げに踏み切る
新興国ブラジル、トルコ、ロシアは、相次いで利上げに踏み切らざるを得ない状況になっています。これはなぜかというとアメリカの長期債利回りが上がるとドルに資金が集まっていき、ドル高になると新興国の通貨は売られるからです。
新興国通貨が売られてどんどん安くなるとインフレが起きてインフレになると色々外から買えなくなります。
トルコは特に原油などを持っていないので買わなければいけないのに通貨がどんどん安くなります。これは困るので利上げに踏み切らざるを得なかったのですが、トルコのエルドアン大統領がそれを気に入らなかったようで、利上げした中央銀行総裁を更迭して混乱しています。
けれども、常識的に考えるとインフレがひどくなったら利上げせざるを得ないということは当たり前のことです。ブラジル、ロシアは利上げに踏み切っているという状態です。
NZ住宅価格抑制へ
新興国は本当にインフレに苦しみ始めていますが、先進国でも住宅市場はすでにバブルです。ニュージーランドはバブルを何とか抑え込もうと優遇措置を廃止するとか、近いうちに中央銀行RBNZもローンに対する規制案を発表すると言っています。
株とか不動産は早いのでバブルの芽と言うのはもう出てきているようです。コロナで世界中でばら撒きをやったので資産は上がっています。
金利上昇は世界的傾向 ~ただし足元は調整
資産の価格がどんどん上がってきて世界の長期金利も上がり出していますが、これはアメリカだけではありません。金利上昇は、上からオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、日本、ドイツの順で並んでいます。
日本は日銀がイールドカーブコントロール政策をやっているので、0%ラインのところにずっと張り付いていて上げないと言っていますが、他の国は長期債利回りで上がってきました。
3月はリバランス時期にて足元一服も世界の金利も上昇
足元で上昇が止まったように見えるのは3月は年金GPIFなどがリバランスをする時期と言われているからです。
右側の表は昨年の12月末にGPIFがどれだけ資産を持っていたかというものですが、内側の円が目標です。国内債券、外国債券、国内株式、外国株式を25%ずつ持ちましょうという目標がありますが、昨年の12月末の時点で外側の円の外債が25.71%ということで、外債の比率が結構高まっていました。これを25%にしましょうというリバランスが色々あったと思います。
アメリカではSLR(補完的レバレッジ比率)の特別措置を、期限の3月末で延長せずにやめたということもあって債券市場で売りが出た時期だったと指摘されています。
特殊要因がこの3月の金利急騰をもたらしてた可能性があるので、一旦は急騰のピッチが早かったのが、SLRの廃止に伴う売りや、リバランスの売りなどで、それが止まって落ち着いています。長期的にはまた上がっていくとみています。
3月など期末、決算期は特殊な動きが出やすく、4月からガラッとムードが変わったりするので、また4月になってから考えたいと思っています。
米国の政治、地政学の転換で円安の時代へ
こちらはドル円相場のプラザ合意の時からのチャートです。日本はこんなに長い間、円高だったかというと、武者リサーチの武者さんがレポートで書かれていましたが、地政学といいますかアメリカとの政治的要因が大きかったと言わざるを得ません。
プラザ合意はまさにそうですし、クリントンさんが就任した93年1月も最初の日米首脳会談で貿易不均衡の是正で円高にしろと言ってきたということもあり、また円高にいきました。
その後リーマンショックがやって来て、また自然的に円高になってきたということで、全部アメリカ要因という感じがあります。
そのアメリカが自身で崩壊したということがあって、長い期間、円高と言う時代を強いられてきたのですが、これが変わってきたのが3月12日QUAD日米豪印協調で「対中包囲網」です。
そして3月22日は米、英、カナダ、EUが対中共同制裁ということで、今度はその矛先が中国に向かっています。日本の円高圧力が無くなっていくということが、政治的地政学的に言えると思います。
円高にすると日本の競争力が無くなっていきますが、これからは日本に力を持ってもらって一緒に、中国に対峙していかければならないので、円高にはしないで円安を容認していくと思われます。
この長期レジスタンスは、2015年からずっと三画持ち合いのようになってきましたが上に抜けるのではないかと思っています。
ちょうど時代が符合して、先ほど説明したようにアメリカの金利も上がってきているので、日本のイールドカーブコントロール政策、プラスアメリカの金利が上がっていくのであれば、日米金利差拡大で円安という材料は強固になるとみています。
さらに、金利がさらに上がる可能性があるとすれば、景気が本当に良くなっていくということの裏付けが必要になってくるのですが、それを見る上で重要なコモディティの代表選手が銅です。
景気先行指標Dr.カッパーと米長期債利回り
銅の95年からのチャートを見ると、第1次第2次銅上昇の時は中国が解放されて経済発展していく過程で大きなトレンドを作っています。
EV(電気自動車はガソリン車の4倍の銅を使用
今回は、イギリス、ヨーロッパ、そしてアメリカのテスラ、日本もこれに参画していかなければいけないという時代の流れでEV車。これまでのガソリン車の4倍の銅を使います。
太陽光、風力発電は化石燃料発電の5倍の銅を使用
再生可能エネルギーという「脱酸素」が世界中のテーマになってきていますが、太陽光と風力発電というのは化石燃料発電の5倍の銅を使うそうです。
中国、今後10年間に風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの生産能力を現在の3倍近くにまでに引上げる
中国の再生可能エネルギーの計画がものすごいスピードで、アクセルを踏んでやるということで、銅の消費量はかなり増えるだろうという試算があります。
世界における精錬後の銅の消費量は20年の2340万トンから30年には3330万トンに増加
アメリカも追加経済対策1.9兆ドルがこの間決まったばかりですが、もうすでにインフラ投資とか次のパッケージで3兆ドルから4兆ドルというニュースが出てきています。
その3兆ドル4兆ドルがそのまま決まるとは思わないですが、インフラ対策でまた次の財政出動があることは見えているので、アメリカの財政出動とインフラといったらインフライコール銅ということで、銅価格はおそらく歴史的な高値を超えていくような流れだとみています。
銅鉱山株上昇~米フリーポート・マクモラン今年90%上昇
銅は「Dr.カッパー」と呼ばれ、先行指標と言われています。銅の鉱山株もアメリカのフリーポートマクモランは、今年だけで90%上がっています。
脱炭素計画と資源需要
国内ではエネオスグループ(5020)が元気
日本でもエネオスがすごい元気になってきました。このチャートは月足なので、元気になってきたといっても月足で陽線3本、4本ぐらいしか立っていないので、まだ初動だと思います。
私もついこの間までエネオスは終わった銘柄でガソリンとかスタンドとのイメージでしたが、エネオスは今、グループ傘下にJX金属があって、水素ステーション、環境リサイクル、風力発電、水素までやっています。
モビリティ、メガソーラーなど色々グループでやっているのですが、グループ傘下のJX金属というのは、チリの銅山の権益を物産から買っています。ですから銅が上がればエネオスが上がるという時代になっています。
なぜこのような動きになっているかというと、世界がカーボンニュートラル、国のエネルギー政策を推し進めているからです。これは日本の経済産業省から取って来たイメージ図ですが、太陽光パネルとか水電解プラントとか、アンモニアとか、今までとは全く違う新しい発電エネルギーの生産の在り方と言うのが模索されています。
こういったところにどういうエネルギーというかコモディティが必要になってくるかっていうのが、これからすごく壮大なテーマになってくるのかなと思われます。銅とかレアアース、非鉄金属というのは結構使われるケースがあるので、こういうところはコモディティ分野で広く物色されていく可能性があるのではないかと思っています。
コモディティの大豆とかとうもろこしも脱炭素銘柄と言われていて、食べるものと別の方法で燃やして取り出しています。そういった穀物もエネルギーに転換する部分があることを考えると、上がってきているというのはそういう側面もあるかもしれません。
技術はすごい勢いで進んでいるので、世界がどういう計画で動いているかとか、技術がどのように進化しているかというのを見ておかないと分からなくなってしまうと思います。
ただ軸足は脱酸素ということで、銅、レアアース、非鉄金属は使うだろうという流れなので、多分金利が上がっていくだろうとは思います。それはどうしてかと言うと銅金レシオですね。
銅金レシオと米長期債利回り
これは債券王ことジェフリー・ガンドラックさんがよく注目されている指標です。赤い線が10年債利回り、青いラインが銅金レシオといって、「銅÷金」で出てくるレシオです。これがすごい相関関係で、銅金レシオが上がると金利が上がっていて面白いのです。
金は景気というより、どちらかと言うと投機的な金融資産という側面が大きいので、実需の側面がある銅とは少し性格が違います。
そのゴールドの部分を抜いて、レシオにした銅金レシオで考えると、本当の実需を表しているのではないか、本当の景気の良さを表しているのではないかという説明が成り立つらしいです。
そうすると、景気やインフレを軸に、新たな政策のカーボンニュートラルなどでそこにお金がどんどん集まります。ドル金利が上がり、日本の金利は政策的に固定ということで、ドル円相場は上がっていくだろうと思われます。
3月リバランス明け、4月新年度から本邦機関投資家の米債買いが始まる!?
こちらは4月から日本の機関投資家がどうするかなというのを想像するというチャートです。ヘッジコスト込みの米国債投資した青いラインと、日本国債に投資している赤いラインで比べても、ヘッジコスト込みと言うことは為替関係無しで考えても米債の方が圧倒的にスプレッド優位です。
日本国債を買っている場合ではないというのが想像できます。ヘッジもする部分もあるかもしれないですが、ヘッジしないで裸でやった場合はドル円相場で円安のインパクトになります。だから4月からも機関投資家などが米債に向かうだろうという予想がされているので、今からあまり下がらないで買っている人たちがいるのではないかと思います。
ドル円は現在調整中 押し目メドは
こちらはドル円の日足チャートです。昨日(3/24)に用意したチャートなので、上の黄色いラインがちょっと抜けかかっています。もっと押して、フィボナッチを引いて107.14円とか106.77円辺りまで下がったら買おうと思っていましたが、下がらなかったので、ドル円の今までとは違う強さを見せつけられている感じがします。
ということでもう今日ドル円を買ってしまっているので、最初のターゲットはコロナショックの前の高値112円ちょっとのところをまず目指して、ここを超えたら本当に2015年のアベノミクス、日銀バズーカの時の125円と言うのもあるかもしれません。
テールリスク
ただ、気を付けておかなくてはならないテールリスクが何点かあります。あまり起こらないとは思うけど、起こったら困るよねというのがテールリスクです。
新型コロナ感染再拡大~イタリア・フランスの再ロックダウンとドイツロックダウン延長で「原油下落」
新型コロナでは、すでに金融政策も財政政策も沢山行っているので、これから相場が大きく動くということは、おそらくないというところまで来ていると思います。
ただヨーロッパに関してはまたロックダウンが始まったり、ドイツもロックダウンの延長があったりということで、こういうところにあまり資金が向かわないので、今ドルに向かっていたりします。それがまた円に向かうようなことが無ければよいなということがありますね。
米国さらなる財政拡大(インフラ投資)と増税パッケージの中味
先ほどもお話しましたインフラ投資などをフルで盛り込んで3兆ドルから4兆ドルの追加の財政出動の検討に入っています。
それを真水でまた全部出すわけにはいかないので、増税すると思われますが、アメリカが増税に踏み切った時に、株に与えるインパクトとかキャピタルゲイン税とかをやると思います。そのような材料が出て来た時に、どういう混乱が起きるのかというのを少し心構えとして気にしておいた方がよいです。
中国の台湾侵攻の可能性
これはアメリカの上院軍事委員会でアクイリノ海軍大将が、中国の台湾侵攻について、「我々が考えるよりもその時期が迫っている」「海の状態から考えると春だ」と発言されていました。
こういう有事のリスクはどうにもできません。特に台湾は、今ものすごく不足している半導体の拠点でもあるので、半導体も止まりますし、貿易量の3分の2が影響するのではないかとアメリカは言っています。
これがもし突発的に起こった時に何が起きるかというと、今はあまり動いていない金などが逆に注目される可能性があると思っています。
特にドル円は全然動かない時代が長く続いたので、久しぶりに大きなトレンドが見られるかもしれません。コモディティや資産はとにかくカネ余りなので、すごいダイナミズムがこれから生まれる可能性があります。大転換の時代にきているのかもしれません。