円高・円安とは?
子供のためのお金のリテラシー教育 お金について考えてみよう
ここでは「お金」にまつわる、いろいろなお話をします。一見バラバラのお話のように見えるかもしれません。しかし、話が進んでいくにつれて、ジグソーパズルのピースのように、一つの絵を形作るために、お互いに関連しあっていることがわかってくるでしょう。ここで読んだことが、既に自分の持っている知識と結びつくこともあれば、日常生活の中で、連載の内容と関連する出来事を見聞きして、納得することもあるでしょう。そういう時に、頭の中で知識のネットワークが強化されます。この連載を読んで、興味を持ったり、疑問に思ったりしたら、続きは、自分で調べてみましょう。
外国為替レート
テレビやネットで、「本日の外国為替市場では、1ドル=103円60銭で取引されています」というようなニュースを見ることがあるでしょう。これは、米国の通貨であるドルと日本の円を交換するときに、1ドルと103円60銭(103.60円)が等価交換されているということです。別の見方をすると、日本側から見た場合、1ドルを103円60銭で買うことができるという意味にもなります。
通貨と通貨の交換するときの比率のこと外国為替レート、または単に為替レートと呼びます。為替レートは、月曜日の朝から土曜日の朝まで、毎日24時間休みなく刻々と動いています。
大幅な円高が進んだ
現在ではこのようにして、為替レートは変動していますが、1973年までは一定のレートに固定されていました。そのころまでは、1ドル=360円に固定されていたのです。この原稿を書いている時点では1ドルは103円台ですので、かなり違いますね。
このことを指して、昔に比べて、いまは大幅な円高(ドル安)になっていると言います。これは、ドルに対する円の価値が高まったということです。以下、2つ例をみてみましょう。
アメリカ製のスマートフォンの価格が現地では1000ドルです。これが日本で売られるときの販売価格は、1ドル=360円ならば、36万円にもなってしまいますが、1ドル=103円ならば、10万3千円で買えます。3台でも余裕で買えますね。
アメリカ人家族が日本に観光旅行に来ました。滞在中の費用として現金36万円を用意したいと考えました。1ドル=360円の時ならば、1000ドルで交換できました(36万÷360)しかし、1ドル=103円ならば、約3495ドルも必要です。
この例で分かるように、昔に比べると、現在は、大幅な円高・ドル安になっているのです。(どうして大幅な円高になったのかについては、複雑なので、今回は触れません)
輸出企業にとっては円安のほうが良い
円高になると外国から輸入するものが安く買えますので、日本人にとってはとても良いことのように思えます。しかし、良いことばかりではありません。特に、日本の製品を外国に輸出している企業にとっては円安の方が良いのです。
今よりも、円安の1ドル=120円になった場合、円高の1ドル=80円になった場合で考えてみましょう。ある会社が日本で生産している自動車をアメリカに輸出しています。現地で1台3万ドルで販売してます。この売り上げ金を日本の国内に送金してもドルのままでは日本の国内で使えないので、銀行で円に両替します。そうすると、1ドル=103円ならば、309万円の受取です。
それが、円安になって1ドル=120円になったならば、受取は360万円となり、54万円分も多くなります。何も努力をしなくてもそれだけ利益が多くなるわけです。(これを円安差益といます)
また、現地での販売価格を値下げして、2万7千ドルで販売したとしても、324万円ですから、円での受け取りは増やせるし、値下げ効果によりアメリカの自動車会社よりよりも有利になり、販売量を増やしさらに利益を上げることができるでしょう。
しかし逆に、円高になって、1ドル=80円ならば、受取は240万円となり、受取額が激減します。もしも従来通り309万円受取りしたければ、現地での販売価格を約3万9千ドル近くまで値上げするしかありません。これでは販売量も減ってしまうでしょう。
このようにして、日本の輸出企業にとっては、円安のほうが利益が上げやすくなりまし、円高では苦しくなります。たとえば、トヨタ自動車は1円の円安/円高で利益が400億円も増減すると言われています。
高金利の外貨貯金は本当に得なのか?
次に外貨貯金に対する円高/円安の影響を考えてみましょう。前にお話したように現在は超低金利の時代なので、銀行に貯金をしておくだけではほとんどお金が増えません。しかし、外国には日本よりも高い金利の国があります。
そういう国の通貨で貯金をすると高金利で貯金をすることができます。そのためにはわざわざ外国に行かなくても、日本の多くの銀行で外貨貯金を扱っていますので、それを利用すればよいのです。
これは、銀行で円を外貨に両替して、外貨で貯金ができる仕組みです。そうすると外貨貯金の高金利を得られますが、ここで気をつけないといけないのは、貯金をした時と、おろすときの為替レートの違いにより、利益が出る時もあり、損失をすることがあるという事です。
たとえば、ある銀行でトルコリラ(トルコ共和国の通貨)で貯金をすると5%の高金利で貯金をすることができます。そこでこの高金利目当てで、1年間の定期貯金で100万円分のトルコリラ貯金をすることにします。
預け入れる時の為替レートが1トルコリラ=14円(原稿執筆時点ではほぼこのくらいのレート)であるならば、100万円は、71429トルコリラに両替して貯金することになります。そして1年後に5%の金利が付いて75000トルコリラになります。
これが貯金した時と同じ為替レートならば、105万円に両替しておろすことができます。無事に5%の利子が得られました。めでたしめでたしで、外貨貯金を選んだ甲斐がありました。
ところが、もしも2020年11月の頃のように1トルコリラ=12円になっていたら(円高/トルコリラ安)になっていたらどうなるでしょうか。その場合は75000トルコリラ=90万円にしかなりません。10万円の損失になります。反対に、2020年6月ころのように1トルコリラ=16円になっていたら(円安/トルコリラ高)、120万円にもなります。30万円の大幅な利益になります。
このように外貨貯金は、高金利ではありますが、貯金開始以降の円高または円安の動きによって、受け取る額が大きく違ってくることに注意するべきでしょう。
円高/円安はわたしたちの暮らしのいろいろなところに影響を及ぼしています。今後、円高/円安どちらに進んで行くのか、それともあまり変化がないのか、注意してみておくとよいと思います。(注)実際には、貯金の利子には税金がかかりますし、円と外貨の両替には手数料がかかりますが、ここではそれらについては省いて書いています。