金利、利子とは何だろう?
子供のためのお金のリテラシー教育 お金について考えてみよう
ここでは「お金」にまつわる、いろいろなお話をします。一見バラバラのお話のように見えるかもしれません。しかし、話が進んでいくにつれて、ジグソーパズルのピースのように、一つの絵を形作るために、お互いに関連しあっていることがわかってくるでしょう。ここで読んだことが、既に自分の持っている知識と結びつくこともあれば、日常生活の中で、連載の内容と関連する出来事を見聞きして、納得することもあるでしょう。そういう時に、頭の中で知識のネットワークが強化されます。この連載を読んで、興味を持ったり、疑問に思ったりしたら、続きは、自分で調べてみましょう。
「1億円あれば一生働かなくても良い」と言われた時代
金利とは、お金を借りる時(貸す時)に発生する利子を計算するための率です。借りたお金(貸したお金)を元金といいます。利子は次のようにして計算します。
元金×金利=利子
例:100万円×3%=3万円
普通に金利という言葉を使う場合は、1年間分の率を表しています。年利ともいいます。
銀行から年利3%で100万円お金を借りて1年後に返す約束をしたならば、1年後には3万円の利子を含めて103万円を返すことになります。(実際には、月々分割しての返済となり、少し計算が複雑になります)また銀行に年利3%で100万円を1年間預けたならば、1年後には103万円を受け取ることができます。
30年~50年くらい前までは「1億円を銀行に預ければ、働かなくても利子だけで一生、生活できる」と言われていました。たとえば、1974年には定期貯金の金利が7.5%でしたので、1年間の利子は750万円にもなりました。利子にかかる税金を引いても600万円。
毎年これだけ受け取れるのであれば十分に生活できますよね。1990年(6%)までは金利が高かった時代が続きましたが、それ以降は急速に下がっていき2000年以降は現在のような超低金利時代となっています。
現在、最も定期貯金の金利の高い銀行でも0.2%くらいのようです。これだと1億円を預けた場合の利子は20万円、税金を引くと16万円ですからこれではとても1年間も生活することはできません。もしも、預ける額が100万円ならば1600円にしかなりませんし、10万円なら160円です。お金を銀行に預けておくだけで増えることを実感できる時代ではなくなっています。
利子というものはなぜあるのか?
それについては、いろいろな考え方がありますが、代表的な考えた方として次の2つがあります。
(1)利子は、お金を貸した人が受けとる手数料。
言い換えるならばお金のレンタル料ということになります。100万円を年利3%で貸し出すということは、100万円の1年間のレンタル料金が3万円ということです。
(2)利子は、お金を貸した人の利益機会の損失に対する補填金。
貸し手は自分でそのお金を使って商売をして利益を生み出せたはずなのに、貸し出したために利益を生み出せなくなった。それは利益機会の損失であるので、それに対する補填である。
これは私の私見ですが、はるか昔、お金もまだない時代に、人々がまだ小さな共同体(むら)で暮らしていた頃、食べ物の貯えがなくなった人や、魚釣りや狩りの道具をなくした人が、そういうものを借りて、返す時にお礼として木の実などを付けて返した(借りたものより多く返した)のが利子の始まりなのかなと思います。
歴史上残っている利子の記録
歴史上記録に残っている事としては、今から5000年以上も前のメソポタミア文明では、すでに利子が存在していたことが分かっています。
当時の貧しい農民が大麦の収穫の時期になるまで収入がなく暮らしていけないので、商人から大麦や銀(当時のお金にあたるもの)を借りていたという記録が残っています。現在の金利に換算すると、大麦では1/3(=33.3%)、銀なら1/5(=20%)と法律に定められていました。ものすごい高金利ですね。
日本では、奈良時代に出挙(すいこ)という制度が当時の律令の中に定められています。これは、種もみ(稲の種)を農民に貸し出す制度です。農民は種もみを政府や民間人から借りて稲作を行い、収穫の時に利子分の種もみをつけて返します。この時の利率は、なんと政府から借りる場合は50%、一般人から借りる場合は100%までは許されたとのこと。100%とは、倍返しですから驚きです。
西洋に目を向けてみると、キリスト教の世界では非常に長い間、お金を貸した人から利子をとることが禁止されていた時代が続きました。聖書に、同朋の人や貧しい人から利子を取ってはいけないという記述があるからです。
しかし、経済の発展には不可欠なお金の貸し借りに必ず伴う利子というものを禁止できなくなり、約800年ほど前には、公会議(各国の教会の代表者による会議)によって認められることになりました。そのときは、利子というものを、お金の返却に時間がかかることへの罰金や、両替の手数料ということにして、これを受け取ることを許可したのです。
イスラム教の世界でも同様にして利子をとることは禁止でしたが、独特の方法で見かけ上の利子を回避しながら実質的には利子を取るということができていました。
この仕組みは非常に簡単です。Aさんは、Bさんにある商品を売り、お金を受け取ります。そして、後日、同じ商品を今度はAさんが最初の値段よりも高い値段で買い、Bさんにお金を払うというものです。
このときの差額が実際には利子にあたるわけですが、見かけ上は売り買いの取引が2回行われたにすぎません。おそらく商品は何でもよかったはずです。非常にうまい方法です。現代の世界の経済についても調べてみると、金利はあらゆるところに顔を出してきます。金利というものは、そのくらい、経済にとって非常に大事な考え方になります。
低金利の時代で助かること
現在、超低金利の時代ですので、銀行にお金を預けてもほとんど利子がつかないような状態ですが、逆にお金を借りる場合にはとても助かる時代でもあります。過去の住宅ローンの金利を調べ見たところ1984年まで遡って調べることができ、1995年くらいまで4%以上という時代が続き、その後は急速に下がっていたことが分かりました。
例えば、3500万円で家をかうのに、自分で用意できるお金が500万であったとしましょう。そうすると不足分の3000万円は銀行から借りることになります。これを30年間で返済することにします。元利均等払いという計算方式で月々の返済額を計算してみます。
1991年、1995年、2010年の3つのケースで比較してみます。
1991年 8.5%
毎月 22万4058円 総返済額 9410万3522円
1995年 4.0%
毎月 13万2832円 総返済額 5578万9377円
2020年 0.6%
毎月 7万9208円 総返済額 3326万7429円
1991年の場合には月々の負担が非常に重い上に、最終的に総返済額は借りたお金の3倍以上にもなってしまいます。それが現在では、月々の支払額も返済総額も大幅に減っていることがわかるでしょう。1991年に住宅ローンを組んだ人は、その後の金利の低下で金利の低いローンに借り換えて助かっているはずです。
さらに、現在は住宅ローン減税という制度があり、家を購入すると、10年間の間、ローンの残金の1%分が毎年戻ってきます。上記の2020年のケースだと、総返済額のうち300万円近くが戻ってくる可能性があります(住宅ローンを借りている人のもともとの納税額によって違うので一概にはいえません)
というわけで、昔に比べると今は、低金利によって助かる場合も大いにあるということです。逆に言えば、今後、急に金利が上昇した場合は、お金を借りる人にとっては大変なことになってしまいます。金利というものは、わたしたちの生活に大きな影響を及ぼすものですので、関心を持ってほしいと思います。