ビットコインの採掘とは?
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ここでは「お金」にまつわる、いろいろなお話をします。一見バラバラのお話のように見えるかもしれません。しかし、話が進んでいくにつれて、ジグソーパズルのピースのように、一つの絵を形作るために、お互いに関連しあっていることがわかってくるでしょう。ここで読んだことが、既に自分の持っている知識と結びつくこともあれば、日常生活の中で、連載の内容と関連する出来事を見聞きして、納得することもあるでしょう。そういう時に、頭の中で知識のネットワークが強化されます。この連載を読んで、興味を持ったり、疑問に思ったりしたら、続きは、自分で調べてみましょう。
ジェットコースターのような値動き
2016年、私がビットコインについて注目始めた頃はまだ1ビットコイン=約5万円くらいでした。それが年の終わりころには暴騰して120万円以上にもなり、とても驚きましたが、その後は大暴落となり2018年には約35万円位になってしまいました。
しかし、その後また上昇、2021年1月には約350万円へと再び大暴騰!このようなジェットコースターのような値動きとともに、ビットコインの事がだんだんと世間一般的に知られるようになってきたようです。
ただし、ビットコインとは一体何なのかについてはよくわからない人も多いようです。ビットコインを電子マネーと同じものと考えている人もいますが、ビットコインは電子マネーではありません。また、ビットコインに興味を持つようになると、ビットコインは、自分でマイニング「採掘」して手に入れることができると聞いたけれども、どういうこと?と疑問を持たれる方も多いようです。実は私もその一人でした。
そこで今回は、今後の世界でもっと普及するかもしれない(そうならないかもしれませんが)ビットコインについて、特にマイニング(採掘)という独特の仕組みについて重点的にお話したいと思います。
ビットコインとは何なのか?
ビットコインなどの「仮想通貨」について、これは通貨ではないので誤解を避けるために、法律によって2020年5月からは、「暗号資産」と呼ぶことが決まりました。現在、世界には実に1000種類を超える暗号資産が存在していますが、規模の大きさで飛びぬけているのが、ビットコインです。
まず、暗号資産とは何なのかというと、
■ネット上でやりとりできる財産的な価値である。それは、
- 代金の支払いに利用できる。
- 法定通貨(円やドルなど)と交換できる。
- 電子的に記録され、移転できる。
- 法定通貨ではない。
というものです。(日本銀行による説明より)
しかし、これだけでは漠然としていますよね。暗号資産の仕組みはそれぞれ違いがありますが、ここでは、ビットコインのしくみについて簡単な説明をしていきます。
ビットコインは2008年ごろに「サトシ・ナカモト」という謎の人物(多くの人がナカモトさんではないかと推測されましたが違うようです。現在もその正体は不明)が発表した論文に基づいて作られた仕組みです。この仕組みは以下のようになっています。
ビットコインの発行をし、全体を管理する責任者(会社)は、いません。ビットコインは、ビットコインの運営に参加する人(会社)のネットワークによって運営されているのです。これらの人々(会社)のことをマイナー(採掘者)と呼びます。世界中に散らばって存在するマイナー(採掘者)は、インターネットでつながっています。
マイナーのコンピュータではマイニング(採掘)のプログラムが動いていて、そこには「ブロックチェーン」が保存されます。ブロックチェーンとは、ビットコインが誕生してから現在この瞬間までの期間の世界中のあらゆるビットコインの取引が記録された台帳です(いつ、どのアドレスからどのアドレスにいくらのビットコインが送られたかという記録)
誰かがビットコインを他の誰かのアドレスに送付しようとすると、その依頼がマイナーのネットワークに入ってきます。世界中の個々の送付依頼はひとまとまりにされて、マイナーからの承認を待ちます。
その承認をするためには、マイニングプログラムが出した暗号を解かなくてはなりません。送付依頼がある程度まとまったときに、暗号が出題され、すべてのマイナーが一斉に答えを探し始めます。
ビットコインのマイニング(採掘)とは?
ビットコインでは、「ハッシュ関数」という特別な関数を使って暗号の問題が作られます。(ハッシュ関数にはいつくかの種類がありますが、ここではビットコインで使われているよりも簡単なハッシュ関数を例に説明します)関数とは、ある値を入力すると、その値を一定の手続きで計算した結果を出力するものです。
このハッシュ関数に、たとえば、「tky2020」と入力すると「7f9f9f683c5c2bb4973cab46df1bf04c」という文字列が出てきます。
しかし、その逆にハッシュ関数から出力された文字列、たとえば、「fdec4afc58337b3221441daac94ca1cc」という文字列が与えられた場合に、その文字列を作り出すための「元の文字列」が何なのかを見つけるのが非常に難しいのです。
通常の関数であれば、出力値をみて、入力値を求めることができます。関数が実行する手順(計算)を逆向きに進めることで入力値を求める事ができる場合もありますし、入力値を求めるための一定の公式にあてはめて求めることができる場合もあります。
しかし、ハッシュ関数は、その手順は公開されているのにも関わらず、元の文字列を見つけるための公式や手順が存在しないのです。答えをみつけるためには、とにかくいろんな文字列を片端からどんどんハッシュ関数に入力して、出題と同じものが出力されるまで試すしかないのです。
よって、ビットコインにおける送付依頼のまとまりを承認するための暗号解読とは、ごく簡単に言えば、次の例のようになります。
- 問題。ハッシュ関数に入力すると出力が「fdec4afc58337b3221441daac94ca1cc」になる文字列は何か?
- 解き方。ハッシュ関数にいろいろな文字列を入力して試す。出力が問題の文字列と一致すればそれが答え。
- この例では正解は、「861ge7」です。
答えを見つけたマイナーは、「答えを見つけた!それは861ge7だ!」という宣言をします。この宣言は直ちに他のマイナーたちに届きます。他のマイナーたちはこれをハッシュ関数に入力すれば出力が「fdec4afc58337b3221441daac94ca1cc」になることはすぐに確認できるので、この答えを承認します。
こうやって、一番初めに答えを見つけたマイナーが「勝者」になります。そして、ビットコイン送付依頼のまとまりが承認されて、一つの「ブロック」として成立します。このブロックは、ブロックチェーンに追加されて、ブロックチェーンが伸びることになります。
実は、この新しく成立したブロックの中には、ブロックを成立させた人(暗号解き競争の勝者)のアドレスにビットコインを送ることが、マイニングプログラムによって書き込まれています。これが新たなビットコインの発行です。これは、膨大な計算をしてブロックを作ってくれた(依頼を承認してくれた)ことへの「報酬」なのです。このことを金(ゴールド)の採掘に例えて、ビットコインの採掘と表現しているわけです。
そしてまた、次の送付の依頼のまとまりを認証してブロックを成立させるための暗号解き競争が始まります。この繰り返しを延々と続けていくのがビットコインの仕組みです。
この暗号解き競争は、その時々でのマイニングに参加しているコンピュータの計算力に合わせて難しさが自動的に調整されるため、およそ10分間で回答が得られるようになっています。約10分ごとに新しいブロックができます。
勝者の得る報酬は、ビットコイン誕生の頃は50枚でしたが、それは、約4年ごとに半分になるようにプログラムされていて、2016年には25枚、2020年5月からは、6.25枚になっています。つまり、現在、世界のマイナーの誰かが10分ごとに6.25枚を受け取っていることになります。(1枚300万円ならば、1875万円相当)
ビットコインの仕組みをささえているもの
以前は、個人のパソコンでも暗号解き競争に勝ちビットコインを採掘することができたようです。ただし現在では、何千台ものコンピュータを稼働させている非常に大掛かりなマイニング業者が主流になっているので、個人で参加することはできても、暗号解き競争に勝つのは非常に困難になっています。
ビットコインのマイニングのために世界のマイナーのコンピュータが行っている計算速度を表す「ハッシュレート」というデータがあります。2021年1月時点では、その数値は約148EH/S (1EH/S は1秒間に100京回の計算)となっていて、世界中でマイニングのために膨大な計算が行われていることがわかります。
マイニング業者は、マイニングで得られたビットコインを売却して現金化し、それを会社の経費(コンピュータ、電気代、施設の維持費、人件費など)とし、残った分が会社の利益になります。競争に勝つためには動作が早いコンピュータが大量に必要ですし、大量のコンピュータを動かすためには多くの電気代がかかります。そのため、有力なマイニング業者は中国などの電気代の安い地域に多く存在しています。
ここまでお読みになってわかるように、ビットコインの仕組みを支えているのは、世界中で常に暗号解き競争をして膨大な計算をし続けているマイニング業者のコンピュータであり、それを維持しているのは電力だということです。極端な話、「ビットコインの価値の裏付けとは使われた電気代である」とまで言う人もいるくらいです。実は、すでにマイニング業者の消費する電力量は莫大なものになっているので、いつまで電力の供給が維持できるのかが、将来的な不安の要素にもなっているようです。
なお、ビットコインの発行数は上限が決まっていて、2100万枚です。それ以上発行されることはありません。2021年初めには、すでに1850万枚以上が発行済です。4年ごとに発行枚数が半分になっていくので、すぐには2100万枚には到達せず、最後のビットコインが発行されるのは2040年頃の予定です。
今後、ビットコインがどこまで普及するのかわかりませんが、ビットコインが何によって支えられているのかは知っておいたほうが良いと思います。
*参考
こちらのサイトで、世界のビットコイン送付依頼と、それを承認して新たなブロックが作られブロックチェーンに追加されていく様子をリアルタイムで確認することができます。このサイトでは、採掘のことを「発掘」と表現しています。誰かが発掘に成功すると、画面下のブロックの並びの左端に新たなブロックが追加されます。
https://chainflyer.bitflyer.com/