株はなぜいつでも買いといわれるのか
実際、価値が上がりそうな株を人より先にみつけて保有しておくのが最も効率がよいため、投資の王道のスタイルだと言われている。
「株はいつでも買い」といわれるのも、こうした考え方が根底にあると言ってよい。だが、それだけでなく、実際に株を買ってずっと保有していれば、誰でも儲かる有利な状況も確かにあるのだ。
ダウ平均株価はずっと上昇している!
投資の神様と言われているウォーレン・バフェットは、「今後100年でダウ平均が100万ドルになる」と述べている。現在のところ3万ドルに迫りつつあるが、そのようなことがありえるとは思えない。だが、1900年ごろから現在までが一画面で納まるようなダウ平均株価のチャートを見てほしい。実に勢いの良い、右肩上がりの上昇トレンドを築いている。
これでみれば、リーマン・ショックなど単なる調整にすぎない。「いつ株を買っても、ずっと持っている限り儲かる」と言われても反論できないのだ。
<1900年以降のダウ平均株価の変遷>
日経平均株価で株を買って持ち続けていたらどうなるのか?
日経平均株価はどうだろうか。結論から言えば、日経平均株価は戦後に作られた当初の8000倍になっている。とんでもない数字だが、平均年率7%で増えていくと、10年で2倍、20年で4倍…となって達成できてしまうのだ。複利の法則のすごさを感じるだろう。
日経平均株価はバブル崩壊後の「失われた20年」が目立ち、ダウほどの強さを感じない。しかし、長期的な視線では、日本株も上昇トレンド継続中だと考えるほうがテクニカル分析的にも妥当である。
ただ、投資は自分の取引スタイルの保有期間で利益を出さなければならないところが難しい。その意味では、日経平均株価もダウも「いつでも買い」とは言い切れないのだ。
もしトヨタ株を戦後に買っていたら!?
もう少し具体的な例を見てみよう。1949年にトヨタ株を買った場合だ。幸運にも1949年にトヨタ株を買っていれば、その後の約10年間で約1000倍となり、約30年で1万倍になっている。これぞ投資の醍醐味といった素晴らしいパフォーマンスといえるだろう。現在でも、ソニーや松下、ホンダの株がタンスから発見されて家が建ったといった都市伝説のような話が語られる。
もちろん、これは戦後の焼け野原から奇跡の復興を遂げた日本の光の側面である。それでも、ライブドア騒ぎのように、いつの時代も株の買いで一財産築こうとする人はいるものだ。
買いの方が安全だから
「投資初心者は現物株式だけやったほうがいい」といわれる。現物株式では売りで新規ポジションをとることはできないので「安く買って高く売る」か、もしくは配当や優待券で利益を上げるしかない。しかし、なぜ買いのほうが安全なのだろうか。
信用売りの損失は青天井
市場の人気銘柄になると、買いが買いを呼んで「青天井」のように株価が上昇することがある。もし株を持っていれば大儲けだが、信用売りをしていれば大損だ。しかも、売っていた場合は、短期間で2倍、3倍に株価が上昇することもあるなど損失に限度がない。この点において、投資した額以上の損失が出ない現物株式の買いより、大きなリスクがあるのだ。
空売りが危険といわれるワケ
信用取引では、最大3.3倍までレバレッジがかけられる。つまり、100万円の資金で330万円相当の株式を買ったり売ったりできるのだ。この信用取引を個人投資家が始める理由は、多くの場合、空売り(からうり:株価が下がるほど利益が出る)をしたいからだ。下落相場のときに買いで利益を上げることがむずかしいので信用取引を始める。
資金管理と損切りができれば、信用取引をしてもリスクはコントロールできるだろう。しかし、大きな利益を上げようと、ついレバレッジをかけて過大なリスクを取ってしまう人は多い。そのような投資をしていると、いずれ大きな損失をしてしまうことになる。そして、最悪の場合、借金を負ったり破産してしまったりするのだ。そうなるぐらいなら、信用取引などに手を出さず、いつでも現物株の買いだけやっていたほうが安全というのは確かだろう。
買いのほうが簡単だから
株式取引をする人の多くは、株価の変動によって利益を上げようとする。この場合「売りよりも買いのほうが簡単」だと言われている。なぜ、トレードに求められるスキルが売りと買いとで違うのだろうか。
売りは早かれ買いは遅かれ
投資格言に「売りは早かれ買いは遅かれ」という言葉がある。これは、株価は急に下がってしまうので売りのタイミングを見極めることは難しいが、買いはじっくり様子を見てもチャンスがたくさんあるという意味の言葉だ。
なぜ、このような動きが多いかは一概には言えないが、一つには大口の投資家、投資会社は買いをメインですることが関係していると言われている。安いところをじっくり拾ってくるので、なかなか株価は下げずジワジワ上昇するが、一定水準以上になるとまとめて利益確定をすることで急激に下がることも多い。
もう一つは、買いは将来の思惑で上がるのに対して、売りは赤字決算や不祥事が明るみに出るなど、事実で下げることが多いということだ。悪材料が公になると一気に売り注文が出るので、株価は急激に下がりやすい。
言うまでもなく、いつ大口の利益確定や何かの悪材料が出るかを見極めるのはとても難しいことだ。そのため、上昇トレンドになっている銘柄を探していつでも買いをしていたほうが、簡単だという意見がある。
国策に売りなし
「国策に売りなし」という言葉を知っているだろうか。国の金融政策や経済刺激策などが発表されたときは、逆らって売らずに買いだけをしたほうがいいという言葉だ。確かに、日銀の黒田バズーカーなどに逆らっても、個人投資家は吹き飛ばされてしまうだけなので、この格言に従っておいたほうが無難だ。
忘れてはならないのは、株価が堅調なときだけでなく、急落しているときに国策が出やすいことだ。株価が下落して経済がダメージを負っているときに、多くの場合、国はだまっていない。たとえ、あまり効果がなさそうだとわかっていても何らかの手を打ってくるので、市場はそれに反応して短期間上昇することが多い。
そのため、売っていても戻りが予想外に強くて損切りになってしまうか、わずかな利益でポジションを解消させられることが多い。このことから、たとえ下落トレンドであっても要所要所で買いを狙っていた方が、短期で資金を回せて効率的だという考え方がある。
実際、突然一気に出る売り注文と違い、安値圏で大口投資家が株を買い集める様子は察知しやすいという理由で、相場状況に関係なく買いだけをするトレーダーも少なくないのだ。
株を買えばインカムゲインを得られる
株式投資による利益はキャピタルゲインとインカムゲインの2つである。
Ø キャピタルゲイン:株式の売却差益による利益。株を安く買って高くなったところで売るなど。キャピタルゲインは株の信用売り(空売り)によっても得られる。
Ø インカムゲイン:株を保有することによって得られる利益。株式投資では配当金や株主優待券などにあたる。インカムゲインは株の信用売り(空売り)では発生しない。
2020年現在も日本では超低金利政策が続いている。預貯金に資金を眠らせておくよりは、株を買った方がいいと考える人も多いのではないだろうか。
配当利回りの計算
インカムゲインを見積もるのに活用される指標が配当利回りだ。この計算は簡単で、以下のとおりとなる。
Ø 配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金÷株価×100
たとえば、「あおぞら銀行(8304)」の株式1株当たりの2020年3月期の配当金額は39円であり、株価は2005円(2020年6月11日現在)なので、「配当利回り=39円÷2005円×100=約1.94%」である。もし株価がこの価格以上で推移すると仮定すれば、こういっては何だが、あおぞら銀行の普通預金に預けるよりずっと魅力的である。
優待券のメリットもある
株を持っていると優待券をもらうこともできる。カタログギフトや商品券がもらえたり、お店で割引サービスを受けられたりする。インカムゲインのなかではオマケ程度と考えるのが妥当だが、投資初心者が気楽に長期投資するうえでは楽しみの一つにできるだろう。
他にも優待券に着目するメリットはある。優待券は株主への心ばかりの贈り物のようなもので、長期投資してもらいたいために企業が出すものだ。ここにお金を回せなくなってくると、経営状態が悪いのではないかと予測できるのだ。また、優待券を目当てにさまざまな銘柄に資金を割り当てることで、図らずも優れた分散投資になることもある。
今回は株式投資における買いのメリットについて紹介してきたが、もちろん売りにもメリットはある。自分の投資スタイルに合わせて売買スタイルを確立させることが大切だ。