ウォーレン・バフェットから学ぶ長期目線の投資法
今回は、ウォーレン・バフェットの投資法を紹介する。ウォーレン・バフェットは複雑で難解な投資方法を駆使して大成功したのではなく、シンプルで理解しやすい戦略を採用している投資家だ。彼の投資方法を学ぶことは初心者にとっても大変有益といえるだろう。
ウォーレン・バフェットとは
ウォーレン・バフェットは、世界最大の持株会社であるアメリカのバークシャー・ハサウェイ社の会長兼CEOを務める人物だ。アメリカだけでなく、世界で最も成功した投資家の一人である。
1956年に彼が初めて設立した投資パートナーシップへの彼自身の出資額はわずか100ドルだった。しかし、投資で成功を重ねたバフェットの総資産額は現在675億ドルに達している。アメリカの大手経済誌・フォーブズが発表した世界長者番付2020年版では、世界第4位にランキングされているのだ。
これだけの資産を持ちながら、1957年に購入した家に今も住んでいて、暮らしぶりは非常に質素。マクドナルドのハンバーガーと、投資先でもあるコカ・コーラをこよなく愛している。
バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイは元々紡績業を営む企業だった。バフェットが1965年に会長就任以降、紡績業から撤退し、現在では投資事業だけでなく保険事業や鉄道事業など、複数の事業を営む持株会社となっている。
バークシャー・ハサウェイの会長として、バフェットは株主に向けて毎年「株主の手紙」を公表している。バフェットの投資哲学の一端を知ることができる内容となっており、バフェットの信者には必読の書だ。
バークシャー・ハサウェイのホームページに原文が掲載され、インターネットで日本語訳も簡単に見つかる。「株主の手紙」の内容をまとめた本も発売されているので、興味がある方は読んでみると良いだろう。
ウォーレン・バフェットの投資法
これほどの大成功を収めたバフェットだが、彼の投資法は決して難解でも複雑でもない。バフェットの投資は一般的に「バリュー投資」に分類される。つまり、本来の価値より割安になっている株式を購入する方法だ。
ただし、ただ株価が安い企業なら何でも買うわけではなく、バフェットが買うのは素晴らしい会社に限定している。素晴らしい企業が何らかの要因で一時的に割安になっている時や、これから成長が見込めるが株価に十分反映されていないと判断した場合に株式を購入するのだ。
重要な点なので繰り返すが、バフェットは割安であることよりも素晴らしい企業であることを重要視している。実際、彼が投資を行うアップルについて、バフェット自身割安でないことを認めた上で投資を行なっている。
ここから、バフェットの投資法の特徴について、①投資対象とする企業、②ポートフォリオの分散、③保有期間の3つに分けて紹介しよう。
バフェットは「素晴らしい企業」しか投資しない
バフェットは「素晴らしい企業」のみを投資先とする。では、バフェットが考える「素晴らしい企業」とは何だろう。
バフェット氏の息子の元夫人で、バフェット氏の下で10年超投資に従事したメアリー・バフェットの著書「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」によれば、バフェットの選定する銘柄は「消費者独占企業」と定義されている。
消費者独占企業は、強力なブランド力が特徴だ。バフェットのポートフォリオを見てみると、コカ・コーラやクラフト・ハインツなど日本でも製品に馴染みがあるような会社を中心に構成されている。
また、バフェットは「自分が理解できる会社にしか投資をしない」という方針を守っており、長らくIT関連の銘柄には投資をしてこなかった。
バフェットは金融や分析のプロであるウォール街の証券アナリストの意見や、他の投資家の動向に左右されることなく、自らの丹念な財務分析を通じ、投資すべき企業を選定することで、自分が投資するに足ると納得できた時だけ投資をしている。
分散させないポートフォリオ
その他、バフェットの投資法の特徴として挙げられるのは、集中投資だ。一般的に、分散投資は投資のセオリーとされている。しかし、バフェットは「分散は無知に対するヘッジ」と考えており、彼の株式ポートフォリオは上位2社で50%を超えるほど集中的に投資が行われている。
2020年3月時点で、彼のポートフォリオで最も大きい銘柄は、iPhoneやMacで有名なアップルで、何と全体の40.9%だ。次いで、バンク・オブ・アメリカが10.8%、コカ・コーラが9.2%となっている。
ただし、バフェットが分散投資に否定的なのはプロの投資家に対してだ。「株主への手紙」では、一般的な投資家については低コストのS&P500に連動するインデックスを購入することを勧めている。
保有期間は「永久」
バフェットの投資方法は、投資期間にも特徴がある。バフェットは頻繁な銘柄の入れ替えを嫌い、原則として対象企業の株式を永久に保有することを前提に投資をしてきた。
先にも触れたコカ・コーラは1988年から投資を継続しており、実に30年以上保有し続けているのだ。短期的な相場の上下で利益を得ようとするのではなく、長期的に富を生み出す銘柄を見定め、じっくりと長期保有することを方針としている。
バフェットの保有銘柄と最近の投資活動
そんな彼が現在投資しているポートフォリオは、バークシャー・ハサウェイの米国証券取引委員会に対する提出書類で四半期ごとに確認できる。
直近では2020年5月に、バークシャー・ハサウェイの2020年3月末時点のポートフォリオが公開された。先ほど触れた通り、最も大きな割合を占めるのはアップルで全体の40.9%、次いでバック・オブ・アメリカが10.8%と2社で過半数を占める集中投資ポートフォリオを組んでいる。
最近では、約40億ドル相当保有していた大手航空会社の株式を全部売却した。さらに、リーマン・ショックが発生した2008年より保有してきたゴールドマン・サックスの株式を84%売却したことも話題となった。
また、バークシャー・ハサウェイは、足下では現金の保有比率を拡大させている。実際、新型コロナ・ウィルスの影響で相場が急落したにもかかわらず、積極的な投資に動かなかった。今後、バフェットが手元の資金をどのように投資していくのか注目が集まる。
バフェットは投資家にとって生きた教材
バフェットは2020年5月時点で89歳となっており、すでにいつ引退してもおかしくない年齢に達しているが、今でも現役で投資活動を継続している。
最近では、新型コロナ・ウィルスの感染拡大により、大きな影響を受けている航空会社の株式を全て売却したことが話題になった。(バフェットは、ユナイテッド航空・アメリカン航空・サウスウエスト航空の株式を保有していた)
また、3ヶ月ごとに保有銘柄も公開されているので、伝説の投資家の銘柄選定や考え方を、それほど大きなタイムラグがなく見ることができる。まさに投資家にとって生きた教材といえるだろう。
バフェットは主に株式投資で成果を挙げてきた投資家だが、FXなど株式以外の資産を投資対象とする投資家であっても参考にできる点がたくさんある。
例えば、FXであれば、最終的に通貨の価値が対象国の経済成長を反映するとすれば、今後成長する国の通貨を長期間保有するという手法でバフェットの考え方を取り入れることができる。
冒頭に述べた通り、バフェットは世界で最も著名で最も成功した投資家のうちの一人だ。彼の投資法は様々な書籍やウェブサイトで研究されているので、ぜひご自身の投資活動のレベルアップに活用してみよう。