設計料が無料といわれたら要注意~建築計画~
設計料無料という言葉を、耳にしたり目にしたりする事があると思います。設計施工一貫方式の場合、受注に有利に働くよう設計料無料と謳ったり、非常に安価な金額を提示したりする例が、いまだ後を絶ちません。設計図が湧いて出てくることはありません。どこかで誰かが作成しています。作業量の多寡はあると思いますが、ゼロではない以上、その方の給料が無料ということはありません。
皆さんは、生活の糧としている仕事を無料で引き受けるでしょうか。あり得ない安価で引き受けるでしょうか。考えるまでもないと思います。表に出ない設計料は、隠されているにすぎません。過少に示された設計料も同様に、不足分はどこかに隠れています。工事費のどこかに隠されているのでしょう。建築主には見えないように、捻出しているにすぎません。ここに誠実さを見ることはできません。
サービスして無料にしていると言うかもしれません。それは無料にできる程度の費用と考えるべきでしょう。何もしないに等しいほどの作業量なのかもしれません。サービスには限界があります。訳もなく安いのに、高価なものが手に入ると考える人はいないでしょう。タダ同然の作業時間で作られた設計に、品質を期待することは、滑稽と言わざるを得ません。それ相応なのです。隠すのには訳があると思いませんか。単なる受注の上で有利に運ぶためなのか、その裏に何があるのか。設計料無料で得をしたと考えるか、否か。嘘があると気が付くか、否か。ここが分かれ道です。
設計・監理が品質を担っています
設計図が無くては、建物を建てることができません。その設計図の質が建築の質を担っているとも言えます。そのために必要な業務時間を国交省が提示していますが、その時間は無料にできるほど少ないものではありません。官庁関係の場合、設計監理に対する報酬の見積額がその基準に基づく予定価格を大きく下回った場合は、適正な業務が不可能と判断され失格となります。一部の官庁では2割引きを超えた場合失格とする旨、明示されているほどなのです。
官庁でも民間でも、設計監理の業務内容に違いは有りません。民間であっても著しく少ない業務時間で、まともな設計や監理を行うことは不可能なのです。設計料と言っていますが、これには監理料も含まれるのが常識です。設計料無料には、もれなく監理料無料がついてきます。それは監理を行わないと受け止めるべきでしょう。行ったとしても形だけのものになり、品質はどこかに飛んでしまいます。
監理が大切なことは、これまでお知らせした通りです。結果は、誰もが知るレオパレス21や大和ハウスなど、最近の建設会社の不正事件が教えています。設計と監理の質が高く維持されて初めて、良質な建築を造ることができます。もちろん誠意ある施工が伴うことが求められますが、設計を軽んじ、監理を軽んじて嘘とも言えそうな対応をとる方々の工事が、信頼に値するものか考えるまでもありません。
品質を保つことができないことを思えば、設計料無料を有難がっている場合ではありません。設計料無料とは、まともな設計・監理はやりません、と宣言しているようなものなのです。建築資産を得る上で、設計料無料や安価な提示に良いことは何もありません。その言葉を聞いたら警戒する気持ちが必要です。品質に直結する重要な問題なのです。
長期保証は全てが無料なわけではない
それではハウスメーカーの長期保証についてはどうでしょうか。30年保証や60年保証等長期の保証が目を引きますが、全てを無料で保証をしているわけではありません。住宅の場合「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定められた構造と雨漏りに関しては、ハウスメーカーに限らず全ての建設会社が10年間無料保証をしなければならないことになっています。法律で定められたもの以外、10年を超えた場合の保証に関しては考え方が様々です。
メーカーによっては指定の時期に指定の点検を有料で行い、必要な工事をした場合に保証を延長するというものや、保証の対象外のものが多数を占めるのが実情です。そして免責事項があることも忘れてはなりません。全てを無料で行うと表明している会社があるとすれば、よほど工事に自信があり問題は起きないと考えているのでしょうか。劣化はどのようなものでも避けることはできません。そこには何かしらの問題が出てきます。30年間何もないことはありえません。条件の精査が必要でしょう。
保証とは言え、無料で働く人はいません。工事を行うにはどこからか費用を捻出する必要があります。建築主から頂かず、どこから捻出するのでしょうか。当初の工事費に前もって必要な費用が含まれていると考えることが妥当でしょう。それを得なことと感じるか損と感じるか。疑問を持つことで判断が変わるかもしれません。
長期保証は得なことばかりではない
まだ時期的に不要な工事であっても、定期点検の時期が定められておりハウスメーカーに保証の上で必要ですよと言われれば、工事をせざるを得ないでしょう。工事は建てたハウスメーカーが行います。
ここに競争は働きませんので、言い値で工事を行わざるをえません。時に2~3割も高いことがあるとの報告もなされています。高いからと工事をやらなければ保証はしませんと言われるだけです。建築主の都合は優先されず、結局割高な出費をすることになるでしょう。
ハウスメーカーにとって、定期点検を行い自社が納得する改修工事を行えば、保証を延長することに何ら支障はありません。定期点検と改修工事を繰り返し、保証できるレベルを維持するシステムは、ハウスメーカーにとって、お客様を囲い込み利益を生むシステムなのです。多くの業者に改修の見積もりを取ることができれば、必要な時に廉価な会社に改修工事の依頼をすることができます。やらなくてよい工事はやらなくて済みます。先延ばしも可能です。第三者に監理をしてもらえば問題のない工事が可能です。
ただより高いものはない
設計料無料や、ハウスメーカーの保証は同じ構図なのです。見方を変えることでベストなことなのかどうか見えてくると思います。誰と住まい造りをすることが有益なのか、雑念を取り払い本質において判断をすることができると思います。ただより高いものはありません。まずは味方になってくれる建築士を探して下さい。