欧州パンデミック第2波とユーロ通貨への影響
欧州パンデミック第2波とユーロ通貨
ユーロ圏で新型コロナウィルスの感染が再拡大している。9月当初は1日の新規感染者数が2万人程度だったが、今は15万人を超える日も出てきた。特にフランスとスペインの増加が目立つ。勢いは日を追うごとに増しており、現状では死者数の増加こそ抑えられているが、病院の受け入れ態勢が徐々に限界に近付いている。
春先のような医療崩壊が起きた場合、一気に死者数が急増する危険領域が間近に来ているとも言えよう。仏政府は10月14日に非常事態宣言を発布し夜間外出を禁止。17日からは9都市圏、24日からは38の県(4600万人)に拡大し、11月下旬まで続ける。スペインも25日、全土に非常事態宣言を発布し、夜間外出禁止はどうやら来年5月まで続きそうである。
ベルギー、オランダも4週間の全国飲食店営業停止措置の只中にある。ただ、その一方でイタリアは24日から1ヵ月間、飲食店の営業時間短縮と通勤、通学以外の移動の自粛を要請し、映画館、ジムなどの営業停止という限定的な措置に踏み切ったにすぎず、ドイツはもっと規制は緩やかである。
英オックスフォード大学が算出している「対応厳格度(コロナへの規制)指数」によると、ユーロ圏主要国(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア)の規制厳格度は米国と比較すると依然として緩和的だ。ビジネス活動をほぼ完全にストップさせ、ロックダウン政策をとった春先と同様にはしたくないとの「経済優先」指向は止むを得ないのだが、そうしたスタンスが8月以降のパンデミック第2波を増幅させてしまったことも事実だ。
ユーロ圏の小売売上高や鉱工業生産を見ると4月が最悪期で、5月以降は持ち直している。したがって4-6月期と比べると7-9月期の景気回復は鮮明に映るが、8-9月ではペースダウンが見られる。特に、先行きの見通しになるほど慎重な見方が強まっている。
やはり、コロナ感染の第2波が現実のものとなる中、行動制限が強まるにつれ、そのような傾向が一段と顕在化していくのは必至だ。8月のユーロ圏の小売売上高は、前月比+4.4%と2ヵ月ぶりにプラスに転じ、再びコロナ危機前の水準を上回った。
通信販売、インターネットが同+12.4%と3カ月ぶり、衣料品が同+7.7%と2ヵ月ぶりに増加し牽引役となった。コロナ危機で外出規制が取られ、ソーシャルディスタンシングが推奨される状況下では、実店舗での購買は敬遠され、通信販売、ネット経由が構造的に増えているのは、どこの国、地域でも共通した現象である。
9月の新車販売はイタリアが例外的に堅調推移する一方、スペイン、フランスは前月比マイナスである。新規感染者数が急増している地域、消費者マインドの弱い地域において販売が低迷している。足下の状況が一段と悪化している点を踏まえると、10-12月期の販売見通しは慎重にならざるを得ないだろう。10月のユーロ圏消費者信頼感指数は事前予想を下振れし、5月以来の低水準になった。
一方、10月のユーロ圏総合PMI(購買担当者景況感指数)は49.4と3ヵ月連続で前月から低下し、4ヵ月ぶりに業況判断の分岐点(50)を下回った。同時に発表されたドイツ、フランスの同指数も前月より低下しており、欧州の景況感が再び悪化しつつあることが示された。特にサービス業の10月欧州PMIは46.2と前月比▼1.8ポイント。ドイツの同PMIも48.9と前月比▼1.7ポイント、フランスも▼1.0ポイントとなり、明らかにパンデミックの拡大が影響していることが立証された。
一方で製造業の10月PMIは54.4と市場の悪化予想に反して、改善基調を維持。とりわけドイツ(58.0)の力強さが際立った。中国を中心とする外需回復を支えとした生産活動の好調さが示され、市場心理の悪化に一定の歯止めをかける結果になった。
26日の欧州株式市場は、さすがにパンデミック第2波の動きを反映しドイツDAX指数が前日比▼3.7%など大きく下げたが、通貨ユーロは前日の1.186ドルから1.1806ドルと若干の下げにとどまった。これは、米追加経済対策や大統領選、英・EU間の通商協議など極めて不透明な材料が重なっている中で「米国の強力な緩和は続く=ドル安」との共通認識があるからだろう。
今週はECB理事会(29日)が開催される。足下ではパンデミック第2波による経済への打撃の全容が見えていないほか、ユーロ圏の物価低迷の一因と指摘されるユーロ高についても一服感がある。こうした中、今回の理事会での金融政策の変更(緩和)は考えにくい。したがって、欧州パンデミック第2波=ユーロ売りの構図は通用しにくい。
もちろん、足下でのフランス、スペイン、イタリアの行動規制強化に追い込まれる中、ECB声明や総裁記者会見で追加緩和の必要性について切迫感のある表現がなされた場合は1ユーロ=1.17ドル割れ程度の下押しはあろうが、ユーロ安のトレンドに変わることはなかろう。かと言って、ユーロの上値もロングポジションの相変わらずの重さから1.19ドルあたりが当面の限界と見る。
米共和党は上院でも敗北へ
大統領選の行くえは、現在も全く予測がつかない。トランプ大統領の場合は特に言行が大きく振れる人物であるだけに有権者の側の尺度があまりに多岐にわたっている。それこそ投票(郵送・期日前投票含む)直前の判定でしかない。
もちろん、福音派やユダヤ系住民という准固定票もあるが、バイデン候補に決定的な魅力とパワーがないだけに「潜在心理」的な浮動票を集めることも考えられる。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
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(この記事は 2020年10月28日に書かれたものです)