関西電力に巣くうヤメ検弁護士の悪業
大物検察OB二人を提訴
だが、予想通り混迷を深め、数年先の「事件封印」へのプロセスとなりつつある。東京電力による福島原発問題と同じ道を歩むのは目に見えている。
しかし、ここで日本の検察権力が関電にどう関与してきたのかを知ることは、今後の「菅政権」下での「政官財」に関わる様々な事件に検察がどう反応していくのかを見定める尺度となる・・・
関電は6月19日、金品を受領していた八木前会長、岩根前社長、森元相談役の歴代3社長と豊松元副社長、白井元取締役の旧経営陣5人に対し約19億円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。不祥事を起こした大企業が元経営陣の法的責任を追及することに踏み切ったわけである。
ところが、これがさらに事態をややこしくした。提訴の内容に納得がいかなかった株主5人が6月23日、関電が訴えた元経営陣5人を含む現旧の役員22人を相手取り、約92億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を大阪地裁に起こしたのである。
株主らの代理人を務める河合弁護士は同日、会見で提訴の経緯を「関電が起こした訴訟は、請求金額も責任追及の範囲も手ぬるい。そこで我々が独自に訴訟を起こした。我々が起こした訴訟は、先に関電が起こした訴訟と併合される。これで、関電と旧経営陣らが慣れ合いで和解できなくなった」と説明した。訴訟を通じて問題の真相を徹底解明するつもりなのである。
そんな注目の訴訟では、大手マスコミが追及しない重要なポイントが一つある。それは被告22人の中に、大物検察OBである二人の弁護士が含まれ、53億円などの支払を求められていることだ。一人は土肥孝治氏(87歳)。元検事総長で、「関西検察のドン」と異名を持つ。関電では2003年6月~2019年6月までの実に13年にわたり社外監査役を務めていた。
もう一人は、佐々木茂夫氏(75歳)。検察官時代は札幌、福岡、大阪の三高検の検事長を歴住した。土肥氏の後任として関電の社外監査役となり、現在は社外取締役を務めている。
では、この二人が報告されていることがなぜ重要なのか。それは、関電の金品受領問題は刑事訴追されて当然な事案なのに、検察がまったく捜査に動かないからだ。そしてその事情は、関電が大物検察OBの天下りを受け入れるなど、検察とただならぬ関係にあるからではないかと疑われているからである。つまり、この株主訴訟は、この点にメスを入れることも期待されているわけである。
調査委員会委員長も札付きヤメ検
では、そもそも関電と検察の関係はどのようなものなのか。金品受領問題の経緯を振り返るなかで検証する。この問題が発覚したきっかけは2018年1月、金沢国税局が高浜町の建設会社「吉田建設」に対して行った税務調査だった。吉田建設は関電の原発関連工事を数多く請け負っている会社だが、問題の森山栄治氏(福井県高浜町元助役1977年~87年)に「工事受注手数料」などとして約3億円を支払っていた。
森山氏は高浜町の顔であり、福井県議会や国会議員にも広い人脈を有していた人物で、同社の顧問も務めていた。そして同社が原発の関連工事を受注する際、約3億円の手数料を取るほどの大きな貢献をしていたわけである。
そこで、金沢国税局が同年6月、森山氏の自宅を調べたところ、森山氏が関電の役員らに送金するなどしていたことを示すメモが見つかり、実際にそういう金の流れがあることが判明した。森山氏を質すと、「関電には、お世話になっているから」と説明したという。つまり、関電が吉田建設に原発関連工事を発注して代金を支払い、この「原発マネー」の一部が吉田建設から森山氏を通じて関電の役員らに「還流」されていた疑いが浮き彫りになったということだ。
ところが、関電はこの重大な問題を公表しなかった。問題が表面化したのは翌年19年9月26日、共同通信が加盟社に配信したスクープ記事によってであった。そのため、関電はこの問題を「隠ぺい」していたことでも批判にさらされた。
共同通信のスクープがあった翌日、岩根社長(当時)らは会見を開き、「2011年から2018年までに金品を受領していた役員は、私を含めて20人いて、受け取った総額は3億2千万円です」と明かしたが、金品を受け取っていた自分以外の役員の名前は、個人情報を口実に「回答を差し控えます」と繰り返した。また、「儀礼の範囲内以外の金はすでに返却している」と主張し、自らの辞任を否定した。この会見により、関電に対する世間の批判はさらに強まった。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
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(この記事は 2020年9月27日に書かれたものです)