お金で苦労し続ける理由とは~銀行員が考えていること~
融資するときに銀行員が考えていること
「もし自分の家族や友人など親しい人だったら、絶対貸さないのに……」
意外かも知れませんが、そんなことを考えながら、それでも融資するケースは少なくありません。融資の判断をしている銀行員もみなさんと同じ人間ですから、いろんなことを感じながら融資の可否を決定しています。
多くの場合銀行は営利企業。利益を上げないと潰れてしまいます。また、毎月のノルマを達成する為に融資の営業担当も何とか貸出OKの認可を取ろうとして必死に審議書を上げてきます。
そんな銀行側の内部事情もありつつ、最終的に銀行は担保を取ったり、連帯保証人を取ったりなど諸々の条件を付けて実損が出ないように計算し形を整えます。そして、結局その融資は実行されるのです。
融資が実行された直後から借りた人(「債務者」と呼びます。)は何年も、何十年も返済に追われて生きて行くことになります。長期間にわたる借金返済の経済的精神的負担は相当大きなものです。
負担感を感じないように銀行は融資するときには目先の金利の低さや毎月の返済額の低さの方へ意識が向くように説明し、営業トークを進めていきます。
借金の利息として支払う金額はトータルにするとかなりの金額になりますが、そのことを積極的に説明することはあまりありません。債務者が「無理なく返済できる金額」ではなく、最終的に担保売却も含めて「回収できる金額」を融資していると言った適正水準を超えた借金であれば尚更です。
銀行が見ているポイント、顧客属性
まず、最初にお伝えしたいのは、お金を融資する時の「銀行の本音」です。お金を貸す側の本音が分かると、覆い隠されている借金に潜むリスクを予め知ることができます。
その結果、場合によっては借りる金額を必要最低限に減額したり、一旦借りるのを止めるという選択をするのがベストであるケースは案外多いものです。
銀行の本音は銀行が見ているポイント、顧客属性に表れています。銀行の融資部で毎日何千万円、何億円もの金額の融資に携わっていると、さまざまな顧客属性の案件をつぶさに見ることになります。金融機関独特の表現ですので、少し詳しくご説明します。
顧客属性とは
- 就業形態(給与所得者、法人経営者、自営業者など、給与所得者の場合は正社員か契約社員か、派遣社員、パート/アルバイトかなど)
- 勤務先(公務員、上場企業、不安定分野業種か、歩合やインセンティブの割合が多い給与形態かなど)
- 勤務年数、転職回数、キャリアの継続と専門性の有無
- 年収水準(直近の金額と過去数年間の推移、向こう1年間の見込み)
- 年齢(借入時、完済時、定年退職時年齢、嘱託雇用の期限)
- 他の金融機関等からの借入状況
- 家族構成(扶養家族の有無と人数および年齢、経済的理由などで自立できない家族の有無など)
- 納税実績等(税金の滞納はないか、健康保険料はきちんと支払っているか)
- 保有資産(預貯金、有価証券等の金融資産や不動産など)
- 運転免許証の発行回数、顔写真、保管状態(汚れや破損の有無)
融資する際には、こうした個別の項目をもれなくチェックし、その上で全体を総合的に検討します。これらの結果、借入希望者が完済まで遅延することなく返済する人物かどうかの判断が可能となります。同時に属性の類似性の高い過去の債務者や延滞発生者などのデータと突き合わせも適宜行います。
また、自行の既存顧客であれば過去の取引履歴も見落としません。返済に遅れがあれば当然マイナスになりますし、逆に長期間にわたってコツコツと積立預金をするなど継続的な取引することは意外と属性評価でプラスとなるケースもあります。
詳しく説明して来ましたが一言で表現すると「その顧客がどれくらい信用できる人なのか。融資したお金をきちんと返済してくれる人なのかを見極める時に目を付ける個人の特性等のポイント」ということになります。
人生の大きなライフイベントと借金
多くの場合、借金をしてまでお金を調達する必要があるのは、大きなライフイベントがある時です。
「ライフイベント」とは一体どんなことを指しているのかと言うと
- 住宅の購入(自宅やセカンドハウス、別荘など)
- 自家用車の購入
- 子どもの教育(塾代、受験料、学費)
- 結婚や離婚
- 収益用賃貸ワンルームマンションなど投資物件の購入
- 老後の生活費の不足分の補填資金の確保
- 念願だった海外旅行などに使う余裕資金の調達
- 老後の晩年を過ごす施設の入居費用の備え
- 相続時に必要となる債務の返済費用や遺産分割協議の内容によって発生する代償金の支払いなど
ざっと見ただけでも、人生には実に多くのライフイベントがあることがご理解頂けると思います。それぞれの内容はこのシリーズの中で、特に重要なものを選んで具体的に分かり易く解説していきます。ここでは「意外と人生の節目でお金が必要となることがあるんだな!」ということをご理解頂ければと思います。
人生の中の大きな出来事に関連して、それまで隠されていたお金の問題が顕在化します。そこには悲喜こもごも様々な人間模様が展開されることが少なくありません。お金、特に借金の背後にはドロドロとしたリアルな人間ドラマがあります。
お金の奴隷にならないで、お金を活かすためには
銀行をはじめとした金融機関は、常にその人の本当の返済能力に最も適した金額の融資をしている訳ではありません。多くの場合、適正水準を超えた債務を負わせることによって「お金の奴隷」を作り出してしまっています。
筆者はこの事実に日々心を痛めています。この連載を書くことに決めた理由のひとつにこのことがあります。多くの人にお金との賢い付き合い方を知って欲しいと考えています。
お金に振り回されたり支配されたりすることなく、知恵と知識を持ってきちんとお金を管理し活かすことができる「お金を正しく従える主体性をもった存在」になって頂くことを強く願っています。
金融リテラシー(お金に関する基本的な知識や判断する力)を身に付けずに暮らしていくと、あなたはお金で一生損をすることになってしまいます。決して大袈裟なおどし文句ではありません。なぜならお金にまつわる取引、例えば融資や金融商品の販売にはとても巧妙な説明やストーリーが売る側には予め用意されているからです。
それらの説明や勧誘は、債務者や金融商品の購入者には気づきにくいような形で巧みに進められて行きます。ですから皆さんがそのことに気付かないのは無理もないことなのです。
そして、金融機関の利益は皆さんの損失であることが多いのも事実です。この損失は毎月の家計や老後への準備資金などを減少させる経済的な側面だけでなく、あなたの大切な時間を奪うという形で人生全般に及びます。
お金の心配をしている時間は少しでも少ない方が良いのは言うまでもありません。お金を効果的に活用することは人生の豊かさにもつながります。
お金について理解が深まり、知恵が増せば、あなたの人生におけるお金に関する混乱が無くなって行きます。そうすれば大切な時間、エネルギー、賜物(「たまもの」生まれつき各人に与えられている能力や適性、個性)を天からの使命に沿って生きる人生そのものに注ぎ込むことができます。
みなさんの人生が他の誰かに搾取され貧しいものになることなく、豊かで実り多きものになることを願ってやみません。
このシリーズを通じてお伝えすることによって、みなさんがお金の呪縛から自由になり、最高傑作として喜びに満ちた人生を生きることに少しでもお役に立てばこれ以上の喜びはありません。
健全なお金との付き合い方とは
次回以降、まずは「健全なお金との付き合い方」とはどんなものなのか?
なぜ多くの人々がお金と付き合う中で間違った選択をしてしまうのか?
その背景や心理的要因についてご一緒に考えて行きたいと思います。