ポンドとユーロの見通しは難解
BOEが8月利下げへ転換
6月20日以降、ポンドが対ドルで突如、下げに転じ、1.26ドル台で推移している。
原因は、この日のBOEのMPC(金融政策委員会)で次回(8月)での利下げの可能性が、示唆されたほか、メンバー間のパワーバランスもハト派に傾いたことが主因だった。
BOEの声明文・議事要旨を5月会合分と今会合分で比較すると、その変化が明白に浮き彫りされる。
5月会合
(1)民間セクターの賃金増加率は振れを伴いながらも減速し、
の指標も賃金増加率が緩和をしていることを示している。
(2)MPCは今後発表されるデータと、それがインフレ持続によるリスクが、
後退しているという評価にどのような情報を提供するかを検討する。
6月会合
(1)最新のデータでは、賃金の伸びを示す一連の指標が全体として、
引き続き緩和の方向に向かっていることが示された。
(2)8月の予測作成作業の一環として、委員は入手可能な全ての情報と、
それがインフレ持続によるリスクが後退しているとの評価にどのように影響するかを検討する。
(3)(金利据え置きを支持した)一部のメンバーにとって、
サービス価格の上振れはディスインフレの見通しを大きく変えるものではなかった。
こうしたメンバーにとって、今回の決定は微妙なバランスになった。
つまり、BOEの一部メンバーは最近のサービスインフレの上振れを、さほど懸念していない可能性を示唆している。
この背景については、最近のサービス価格の強さは、振れの大きい品目や、インフレ連動で年1回、自動的に価格改定されるような品目によるところが大きく、需給に基づく基調的な物価上昇圧力が必ずしも反映していない可能性が指摘された。
また、議事要旨では政策金利据え置きを支持した一部のメンバーが、利下げ開始に傾きつつあることが示唆された。
その上で、金利ガイダンスは概ね前回会合と同じ表現が維持されたが、「8月の予測作成作業の一環として」という文言が追加され、経済・物価の最新予測を公表する次回8月会合での利下げ開始を検討することが示されたと解釈できる。
これは大方の予測が外れたことになる。意外にもハト派的な結果となったのである。
この結果を受け、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ=翌日物金利先物)が、織り込む8月会合での25bpの利下げ確率は前日の3割から一気に6割まで上昇、ポンドも1.26ドル台へと下落した次第だ。
労働党政権の政策は織り込んだのか
市場筋の多くは保守党と政策の方向性は大きく変わらないと見ている。
労働党は2019年の総選挙での大敗以降、左派色を薄め中道路線へと転換してきたことから、大幅な政策転換が起きる可能性は少ない。
また、中道路線へと転換した労働党は、財政面でもかつてほどには、「大きな政府」(財政出動を柱とした政策主導)を志向していない。
財政規律を重視する姿勢を示していることに加え、法人税、所得税、国民保険料、付加価値税については税率を引き上げないことを明言している。
現時点での公約に基づく限り、大規模な拡張財政へと転換する可能性は低く、少なくとも経済に対する政権交代の影響は限定的なものになると考えられる。
ただし、保守党は労働党の政策に関して、公約実現には財源が不足しており増税が必要であることを国民に訴えている。
保守党の主張はあくまで選挙戦におけるアピールであろうが、保守党が2023年秋、24年春と立て続けに実施した減税の影響もあり、政権交代となっても労働党政権が使える財源は限られる。
22年に保守党のトラス前政権の下で出された財源の裏付けのない財政政策が、金融市場の混乱(トラス・ショック)を招いた経験から、とりわけ英国では財政悪化に対する金融市場の監視の目は厳しい。
労働党新政権発足当初は別にして、本当の意味での労働党による財政政策の大枠は、11月に公表される秋季予算と思われ、ひとまず、それまでは経済政策面からの懸念はないものと織り込んでいるようだ。
以上からポンドドルは1.24ドル近辺までの下落はありうる状況となった。
ポンドのロングポジションが重いだけに調整幅はやや大きいかもしれない。ただ、売りの深追いは避けるべきである。
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2024/6/27の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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