米ドル高構造はいつまでなのか
1ドル161円17銭(4月29日)から5月3日の151円86銭まで9円幅の円上昇となった。
日本の財務省・日銀による介入は、市場の予想以上に腰の入ったものだった。
ただ、事前に米国の了解を全面的に取り付けたかのように日本側は伝えていたが、5月4日の時点でイエレン米財務長官が、「こうした介入は稀であるべきで、協議が行われることが期待される」とコメントした。
それはそうだろう。
大統領選を控えた米国民の多くが「物価上昇」に閉口していて、何としてもインフレを抑え込みたいバイデン政権としてはドル高が望ましいのは当然だ。介入もいい加減にしておかないと、「為替操作国」の対象にされかねまい。
それにしても1990年以来となる150円台までドル高円安が増幅されてきたのは、どうしてなのか。
今後の大きな流れを見定める上で、ザックリとした要因を挙げておかねばなるまい。
世界的インフレ圧力
第一に、世界的に数十年来のインフレ圧力が高まったことがある。
世界経済においては冷戦が終結してグローバリゼーションが進展し始めた1990年代後半から、2000年代初頭以降、世界的にインフレ率が低位安定し始め、主要国の長期金利もそれ以前に比べて低位安定し始めた。
この間、日本では“失われた30年”が始まる中で、ディスインフレ傾向が強まり、超低金政策が開始されていたが、2008年のリーマン・ショック以降は米国などでも、ディスインフレ傾向が強まり、低金利政策やQE(量的金融緩和)などが実施されるに至った。
主要国と日本の金利差レンジは特に2000年代以降、次第に切り下がりドル円相場は75円~125円程度でレンジ相場を形成していた。
ところが2020年代以降、コロナ・ショック後の世界経済の構造変化や、ロシアによるウクライナ侵攻後の資産・一次産品の上昇などを受けて、1980年代初頭の第二次オイルショック以来のインフレ圧力が世界的に顕在化した。
前述の通り主要国と日本の金利差が大幅に拡大し、ドル円相場については過去数十年でみられなかった水準へ上昇し始めたのである。
特に2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後からドル円相場が、1ドル120円台を超えて大きく上昇し始めたプライスアクションに鑑みれば、原油や天然ガスなどの世界的な需給構造が大きく影響を受け、世界的なインフレ圧力の底上げにつながるリスクを市場が強く織り込んだ可能性が窺える。
米経済独り勝ちでのドル高
第二に、米国経済独り勝ちによるドル高であるとの視点だ。
ここ数年の円安で円相場はドル以外の通貨に対しても大きく下落した。
但し、ドル円相場が150~160円台と1990年以来34年ぶりのドル高水準をつけたのに対し、英ポンド円は一時、1ポンド=200円近辺2008年以来約16年ぶりの英ポンド高円安水準、豪ドル円も一時、104円台と2013年以来の約11年ぶりの豪ドル高円安水準にとどまり、ドルに比べて対円上昇幅は限定的に止まっている。
つまり・・・
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2024/5/9の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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