ドル安の流れに変化はない
年初に一言。
昨年は卯年で「跳ねる年」だとし、日本経済・政治に明るい希望を抱いてスタートしたも、跳ねたのは物価だけ。株価は確かに8千円ほど(日経平均)上昇したも出遅れ分を多少取り戻しただけのこと。
今年は辰年で「立ち上がる・昇る」年だという。しかし、年頭からの大地震と首都空港での惨事により、アッと言う間に意気消沈の心なり。それでも明るい展望を持って生活していかねばならないのが庶民ということなのでしょう。
さて、1月3日に公表された12月FOMC(12月12・13日)の議事要旨によってドルが再び上昇。米国金利も長期金利を中心に反騰、株価も頭打ちの状況となった。ドル円も12月28日に付けた140円27銭から1月5日の145円98銭まで5円以上も戻している。
もちろん、元日の能登半島地震による日銀の政策対応修正予測もあるが、まずもって、FOMC議事録要旨で一体、何がどう市場心理を変えたのかについて言及しておかねばなるまい。
ただ、外為市場は「これは市場の大勢がFOMCの結果を必要以上にハト派的解釈に片寄っていたため、目敏い投機筋が、その修正必至と読んでポジションをメイクしていたことによるもので、トレンドそのものを変える動きではない」と分析していることも事実であり、動揺することもあるまい。
市場の解釈違い
12月のFOMCについては当リポート(12月21日号)で詳しくお伝えしており、市場の見方は「いいとこ取り」の可能性があり要注意だと記した。その上で利下げ開始は現段階で6月が妥当だとし、3月の利下げを相当織り込んでいる市場をけん制したつもりである。
日経紙もFOMC直後から市場の解釈に疑問符をつけていたが、議事録要旨発表後の1月5日紙で次の通りに指摘した。
FOMCでは、すべてのメンバーが24年内の利下げシナリオを示した経済見通しを、「極めて不確実」と強調したうえで追加利上げもあり得ると指摘していたことが判明した。数人が「政策金利を据え置く期間は今の想定より長くなるかもしれない」とも述べた。
12月会合では3回連続で利下げの時期を議論したと説明した。市場の利下げ期待を追認する発言と受け止められていた。
議事要旨によると、メンバーは利下げを始めた後も「物価が(2%の)、目標に向い続けると明確になるまでは金融引き締めを続ける」という点でおおむね一致した。パウエル議長が開始したと言った「利下げ議論」は、各メンバーが金利見通しを示した程度だったようだ。
市場では「議長は発信の仕方を間違えた」との声も出た。実際、FOMC会合後、参加したメンバーの何人かは明らかに市場の見方をけん制していた。
「米景気が大きく落ち込むことなくインフレ目標をクリアーできる、24年3月に利下げをするとの観測は時期尚早だ」
(12月15日NY連銀ウィリアムズ総裁)
「FOMCの予測に対する反応に困惑している、インフレの目標には依然戻っていないし、FOMCでは今後の利下げに付いて議論していない」
(12月18日シカゴ連銀グールズビー総裁)
「市場は少し先走っている」
(同18日クリーブランド連銀メスター総裁)
「政策金利は24年に3回下げたとしても、かなり限定的な水準にとどまるだろう、24年のどのタイミングで利下げへと政策スタンスを転じるかを推測するのは時期尚早だ」
(同18日SF連銀デイリー総裁)
「利下げに着手することは重要だが、今すぐではない。現行水準で一定期間様子見すべきだ。景気減速の度合いは政府発表のデータが示すよりは深いようだ」
(12月20日フィラデルフィア連銀ハーカー総裁)
しかし、市場の反応はほとんどなく、「無視」に近い扱いに終始していたのである。ドルの実効指数(DXY)も12月27日には101ポイント割れ、(FOMC直前は103.80ポイント)まで下げていた。
FRBとしては、1月3日のFOMC議事録要旨発表で何としても、市場の解釈を修正しなければならないと判断したのであろう。
12月雇用統計で市場は一段と動揺
利下げ観測をさらに後退させることになったのは1月5日に公表された米国12月分雇用統計だった、それは、米国の労働市場がなお良好であることを示唆するものとなったからだ。
失業率は3.7%で前月比横ばいのなか、非農業部門雇用者数は前月比21万6千人増となり、事前予想の平均値17万5千人増を大きく上回った。
医療、政府、建設、娯楽・ホスピタリティなどで雇用の増加が目立った。他方で、時間当たり賃金は前月比+0.4%と事前予想の同+0.3%を上回った。
しかし、この統計の中には雇用情勢の悪化を示唆する指標も多くみられており、労働市場が徐々に冷え込んでいることも確認された。労働参加率(生産年齢人口に占める労働力人口〘就労者+完全失業者〙の割合)は、0.3ポイント低下の62.5%と、実に約3年ぶりの大幅低下となった
同参加率は、比較的若い世代と中高年齢層で特に下げた。また失業者が仕事を探す期間は長期化し、家計調査に基づく雇用者数は前月比3万人減と2020年4月以来の大幅減少となった。
賃金インフレの動向を読む上で重要な平均時給は前月比+0.44%(11月+0.35%)と加速し、前年比でも+4.1%(11月+4.0%)へと伸び率を高めた。
瞬間風速を示す3ヵ月前比年率は+4.31%と反発し(11月+3.3%)、同3ヵ月平均も+3.72へと加速したが、これは過去数ヵ月の急減速に対する反動であろう。
求人件数の減少傾向や自発的離職率(数値の上昇は待遇改善を求めて労働者の転職活動が、活発化していることを示す)の低下といった賃金インフレの沈静化を示すデータを踏まえれば、今後も減速傾向を辿る公算が大きい。
12月雇用統計それ自体はFRBの利下げを強く促す結果では無かったが、それでもインフレ率が低下する中、景気への配慮を踏まえれば年央までの利下げ開始の蓋然性は高い。
米10年債金利は年末までに急低下した反動から再び4%大台に戻しているが、4.5%を上回るような状況は想定しにくい。
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2024/1/11の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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