公開日 2023年12月27日

2023年の国際情勢とその影響

2024年も国際社会の分断を深める要因であり続けるとみられるイスラエルとパレスチナの対立の動向およびその影響について考察する。
2023年の国際情勢とその影響

2023年の国際社会は、ロシアのウクライナ侵攻が継続する中、イスラエルとハマス等のパレスチナ武装組織との紛争に直面した年であったといえる。

2022年にはじまったロシアのウクライナ侵攻は、武力による国境変更は許されないという国連憲章を絵空事にしかねない出来事であり、2023年のイスラエルのガザ地区への攻撃は国際人道法の実効性を弱める方向の解釈ものとで行われている。

世界経済については、国際通貨基金(IMF)が10月の世界経済見通しで経済成長を3.0%と発表しており、2022年の3.5%から低下している。

さらに、気候変動問題では、南極の棚氷から分離していた氷山A23aの移動開始や、永久凍土の融解にともなう炭疽菌の放出など、生態系への影響が危惧される事態が起きている。

国際社会は複合危機の中にあるといえる。

2024年は、引き続き懸念材料であり続けるとみられる上記の要素に加え、台湾総統・議会選挙(1月13日)、イラン議会選挙(3月1日)、ロシア大統領選挙(3月17日)、韓国議会選挙(4月)、EU議会選挙(6月)、米国大統領選挙(11月)と政治変化が起きる可能性のある選挙が予定されている。

近年、国家間、国家と非国家組織、非国家組織間の紛争の多発、戦闘関連死者、難民・避難民も増加傾向にある。

来年の変化の方向いかんでは、この傾向がさらに強まり、国際協調による問題解決が一層困難になると考えられる。

以下では、2024年も国際社会の分断を深める要因であり続けるとみられるイスラエルとパレスチナの対立の動向およびその影響について考察する。

ガザ地区攻撃が国際秩序をゆるがしている

イスラエルによるガザ地区攻撃で多くの犠牲者が出ている中、バイデン米政権が国連安保理などでイスラエル擁護の立場を取り続けていることで、停戦への道筋は見えないままとなっている。

それだけではない、国連の権威と機能は著しく低下し、国際的規範の維持さえ難しくなっている。

国連憲章の第1章には
「国際の平和及び安全の維持」
「人民の同権及び自決の原則の尊重」
「人権及び基本的自由」の尊重が掲げられている。

自衛権のもとガザ地区で武力行使を継続しているイスラエルのネタニヤフ政権、および、それを戦略面、情報提供、空母の配備、弾薬提供などで支援しているバイデン米政権の行動は、憲章の第1章に加え第7章で示されている武力行使のプロセスから逸脱している。

一方、国連総会決議や、グローバルサウスが参加する国際会議では、パレスチナ民族の自決の原則が尊重され、イスラエルの武力行使は著しく均衡を欠いており人権を害しているとの見解が示されたものの、停戦を実現するには至っていない。

現在のガザ地区の紛争は、国連憲章と世界人権宣言という第2次世界大戦後の国際社会の秩序の中核規範を崩壊させつつある。

イスラエル・ハマス等の紛争では、オスロ合意に反対するネタニヤフ政権下でパレスチナ国家樹立に向けた交渉が進展せず、国際社会がパレスチナの自決が未解決であることを忘却していた結果といえる。

そして、中東地域の紛争解決の魔法の杖のように語られた米国のトランプ前大統領、バイデン現大統領が進めたイスラエルとアラブ諸国との国交正常化が、パレスチナの人びとを追いつめ、現在の状況を生み出したと見ることもできるだろう。

イスラエルとハマス等の戦闘状況

10月7日、ハマスをはじめとする複数のパレスチナ武装組織が、イスラエル南部の街や軍事基地を急襲し、イスラエル人1200人を殺害、240人近くを身柄拘束してパレスチナ自治地域のガザ地区に連れ去った。

イスラエルは、同日、自衛権のもとガザ地区に空爆を開始した。その後、イスラエル軍は10月28日にガザ地区でのハマスの壊滅を目的に地上戦を展開した。

戦闘は7日間の一時休止をはさみ、12月1日の再開後はガザ地区南部を含む全域に拡大した。戦闘被害は、ガザ保健当局の12月23日の発表では、同地区でのパレスチナ人死者が2万57人に達した。

また、世界食糧計画(WFP)の12月21日の報告によると、ガザ地区の住民の半数が飢えに苦しんでいる。

一方、イスラエル側は、ガザ地区への地上戦で12月12日までに105人(うち20人は友軍の誤射)の兵士が死亡している。ハマス等のイスラム武装勢力による身柄拘束者については、これまでに105人が解放された。

その後、身柄拘束者の解放をめぐり、カタル、エジプトの仲介で交渉は続いているが、大きな進展はない。身柄拘束者は、現在も100人以上いるとみられており、戦闘の中で死亡するケースも生じている。

このため、イスラエル国内では、身柄拘束者の解放を優先させずガザ地区への激しい攻撃を続けるネタニヤフ政権への批判が高まっている。

こうした人道危機が起きている中、国際社会は平和努力として、国連安全保障理事会はガザ地区における協議で、11月15日に「人道的戦闘休止の拡大」を求める決議案を採択した。

その後、12月9日にはグテーレス事務局長が、安保理に対し、「人道停戦」を宣言するようにと、国連憲章99条にもとづく異例の要請を行った。

しかし、米国が停戦への反対姿勢を貫き、安保理は停戦を導くことができず、「テロとの戦い」を主張するイスラエルによるガザ地区の破壊を黙認し続けている。

12月22日、安保理は、度重なる調整を経て、1.緊急人道支援、2.敵対行為の停止に向けた環境作りの推進を盛り込んだ決議を採択したが、「停戦」への道は見えていない。

今後の動向

今後の注目点は、イスラエルのガザ地区での地上戦の展開後に
メディアでも取り上げられるようになった
(1)戦闘はいつ終わるのか、
(2)ガザ地区の自治をどう回復させるのかの2点である。

(1)については、12月10日、ネタニヤフ首相が、ハマス等のパレスチナ戦闘員の投降者がでていることから「ハマスの終わりのはじまり」を迎えていると述べている。

この発言を裏付けるように、12月21日、イスラエル軍は、殺害したハマスの戦闘員が8000人に達したと発表した。

そして、翌22日には、ガラント国防相が、北部では軍事目標を達成しつつあると説明し、新たな地域への作戦拡大を表明している。

なお、イスラエル・メディアは、現在の地上戦での軍の展開は1月末までに完了させるのが軍の意向だとも報じている。

(2)に関して、イスラエル・メディアは、イスラエル当局の話として、地上戦が鎮静化した後にはイスラエル軍がガザ地区に緩衝地帯を設置し、暫定的に戦闘部隊を配置するとの考えを紹介している。

ただし、イスラエル軍は長期駐留はせず、ハマスに代わる新体制に同地の自治を委ねるとの考えだとされている。

今後のガザ地区をだれが管理するかについては、これまで、(1)パレスチナ暫定政府(PA)、(2)国連、(3)イスラエル、(4)ガザ住民、(5)アラブ諸国が挙げられている。

この点について、ネタニヤフ首相は、12月12日、ビデオ演説で、「ハマスやファタハの土地にはならない」と述べ、パレスチナ勢力の統治に反対の考えを表明した。

一方、・・・

全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2023年12月24日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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