日銀利上げ戦略実施は早まる!
市場の多くは失望なり
12月19日に日銀政策決定会合と総裁記者会見、同22日に「11月の消費者物価」が発表された。
これらは日銀の次の政策姿勢を見定めるためにも、またドル円相場の当面(数ヵ月先)を予測するためにも、極めて注目されていた。
しかし、一般的な市場の評価は「政策姿勢に変化はなく、ドル円で円が130円大台に突入することもあるまい」との見方が大勢を占めることとなった。
果たして、その見方どおりとなるのか。
野村総研の考え方
まずは、一般的な市場の見解を記していこう(以下は野村総研の考え方)。
日銀の真意に関する総裁への質問は、さっそく記者会見の冒頭で幹事社によって出された。それに対する植田総裁の説明は、「政策姿勢に変化はない」ことを示すものであった。
金融市場の受け止めについては「コメントを控える」としたが、「物価目標の達成がなお見通せない現状では、金融緩和を粘り強く続けていく」、「先行きの経済、物価の不確実性は高く、政策は決め打ちできない」、「政策は毎回の会合で判断していく」といった総裁の説明は、マイナス金利解除が近づいているとの金融市場の一部の見方とかなり距離があるものだ。
金融市場では、インタビュー記事を受けて、マイナス金利解除の時期についての見通しを、かなり前倒しする動きは過剰反応だったとの修正を余儀なくされた可能性が高い。
「年内にも政策修正の判断ができるようになる可能性はゼロではない」と、発言したことの意図について植田総裁は、「政策判断は毎回の会合で、合議制のもとで行われるものである中、総裁が政策変更の時期について予め言及することは、会合での議論を縛ることになってしまう。そこで時期は特定できないことを伝える主旨の発言だった」と説明した。
金融市場は発言の狙いを誤解したと言えるのではないか。記者会見を受けて、早期マイナス金利解除の見通しは再び、相応に修正されるだろう。
11月のコアCPI(前年同月比)は+2.5%と10月の+2.9%を大きく下回り、2022年中頃まで水準で低下した。
これは概ね事前予想通りの結果だ。前月比でエネルギー価格が下落したことがコアCPIが11月に大きく低下したことの主因だ。
この要因によって、11月の総合指数の前年同月比は前月と比べて0.13%押し下げられた。
エネルギー価格は、海外でのエネルギー価格、為替動向、政府の補助金政策の変更などによって毎月大きく振れる傾向がある。
他方、この先の物価のトレンドを見る上で注目したいのは、生鮮食品を除く食料品価格の上昇ペースが着実に鈍ってきていることだ。
11月分についても、それは総合指数の前年同月比を前月と比べて0.18%押し下げている。生鮮食品を除く食料品価格の前年同月比は8月の+9.2%から、11月は+6.7%まで低下してきた。
食料品関連の輸入品の価格上昇を製品価格に転嫁する動きが一巡する中、海外での食料品価格が下落し、為替相場でも円安傾向に歯止めが掛かっていることから、この先も生鮮食品を除く食料品の上昇率は低下傾向を辿るだろう。
食料品に限らず、財の価格の上昇率は先行き着実に低下していくことが予想される。
足下の物価上昇率の上振れは、輸入物価の大幅上昇、いわゆる輸入インフレを起点にしたものだが、その輸入物価上昇率は前年比で2桁ペースの下落が続いている状況だ。
この価格上昇率の低下傾向が鮮明になる一方、宿泊費の上昇が、11月の総合指数の前年同月比を前月と比べて+0.1%押し上げるなど、サービス価格の上昇率は引き続き上振れしている。
物価上昇率が高まる局面で、サービス価格の上昇率が財価格の上昇率に遅れて高まるのは、よく見られる現象だ。
しかし、この先、サービス価格の上昇率の高まりが、財の価格上昇率の低下を凌駕して、物価上昇率全体を再び高める可能性は高くないだろう。
24年1月のコアCPIは前年同月比+2.2%~2.3%まで低下し、24年10月には+1%台まで低下すると予想される。
この先のサービス価格の動向に大きな影響を与えるのは賃金の動向である。
24年の春闘でも賃金上昇率は高水準となることが予想されるが、今年の水準から大幅に加速し、それがサービス価格及び物価上昇率全体に大きな上昇圧力をかけるとは考えにくい。
賃金上昇率を決める大きな要因である物価上昇率が低下することが賃上げの逆風となろう。
24年の春闘で主要企業の賃上げ率は、定昇込見の全体で+3.9%、ベアで+2.5%と23年のそれぞれ+3.6%、+2%強をやや上回ると予想するが、大幅な加速は見込めない。
さらに、物価上昇率が先行き一段と低下していく中で、25年の賃金上昇率は全体で+2%台後半、ベアで+1%台前半にとどまると現時点では見ておきたい。
輸入インフレを起点とする物価上昇が、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇へと転化していき、日銀が指摘する、いわゆる「第1の力」から「第2の力」へと橋渡しされていく中で、2%の物価目標達成が見通せるようになる可能性は低いだろう。
また、一般に言われる賃金上昇率と物価上昇率が、相乗的に高まるという「物価と賃金の好循環」が実現する可能性は低いものと考える。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/12/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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