ダブルデフレの中国に要注意
7月の物価が、前年比マイナスに中国が今デフレの脅威に直面していることに疑いの余地はなくなった。
7月の物価統計でCPI(消費者物価)までもが、10か月連続で前年比マイナスにあるPPI(生産者物価)と同じく、マイナスに転じた。
2年5カ月ぶりのことであり、中国経済の健全性に対する懸念が強まった。
世界の多くの地域でインフレ圧力が高まっていることを考えると、中国で物価が下落しているというニュースは少し衝撃的かもしれない。
だが、世界2位の経済大国が抱える問題はその多くが中国独特のもので、根が深い。その解決は容易でないかもしれない。
米国や他の主要国では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の、経済再開に伴い、インフレ率が急上昇した。一部のエコノミストは今年初め、厳格なコロナ規制を昨年末に取りやめた中国でも同じことが起こると予想していた。
しかし、実際はそうなっていない。個人消費の伸びは依然として鈍く、長引く不動産不況が信頼感を低下させ、人々は高額商品の購入を控え、家具や家電製品の価格に影響を与えている。
世界的な商品相場の低迷と、中国政府が長年にわたって電力セクター抑制してきたころからエネルギー価格も下落している。
自動車メーカー間の価格競争がデフレ圧力に拍車をかけており、企業もパンデミック期に積み上がった過剰在庫を減らすために値下げをおこなっている。
ただ、全面的に物価が下落しているわけではない。
旅行や飲食店などのサービス業への支出はコロナ規制終了後に急増しており、これらの分野では物価上昇が続いている。安くなる物価なら消費者にとっては好ましいのではないか。そう思いがちだがそれは明らかに違う。
物価が安くなることは一見、消費者にとって好ましいように思えるが、だからといって必ずしも消費者が買い物を始めるとは限らない。様々な商品の価格が長期間にわたって下落すると、人々は家電製品のような高額商品はずっと値下がりし続け、購入を先延ばしするのが最善だと考えるようになる。
そうなると経済活動はさらに抑制され、企業は値下がりを余儀なくされる。その影響は消費者にも及び、いずれ所得が減るか職を失うことになり、その結果、支出が減り、危険な縮小スパイラルに陥る。
物価下落は、一般的に売上高や利益の減少を招き、企業は投資や雇用を抑制する。デフレはまた、経済における「実質金利」、つまりインフレ調整後の金利水準を押し上げる。
企業向けの融資コストが上昇すれば、企業の投資意欲が減退し、ひいては需要が抑制され、デフレがさらに進行する。一部のエコノミストは、このような「負債デフレ」が不況や恐慌の引き金になると考えている。
日本は1990年代に物価下落が定着し、経済の長期停滞に陥った。持続可能な方法で経済成長を促すにはどうすればいいかという問題に日本は今も取り組んでいる。
日銀によるマイナス金利の導入はほとんど効果がなく、今年に入って金融政策に新たな微調整が加えられている。
中国での食料価格などの急落は、7月のCPI押し下げ圧力に大きく寄与したが、これらの物価下落の影響は年内の残りの期間に薄れるとみるエコノミストもいる。
一方のPPIは22年10月以降、前年比で下落し続いており、デフレが長期化している。
一般的に中国のインフレ率はこの10年ほど低水準で推移しており、エコノミストはその理由として、家計の高い貯蓄率と工業生産能力の急拡大につながる投資の多さを挙げている。
こうした状況に対し、中国当局はどう対処しつつあるのか。
8月15日、人民銀行が6月に続いて今年2回目の利下げに踏み切った。政策金利と位置づける中期貸出制度(MLF)1年物金利を15bp引き下げて2.50%とした。下げ幅も6月の10bpから拡大。
利下げで企業や個人の金利負担を軽くし、景気を下支えする狙いがある。ただ、人民元下落や地方政府の債務残高増加など幾つかの制約に直面しているのも事実。景気刺激を狙った財政支援も財政の逼迫を踏まえ、控えめになっている。
つまり、・・・
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2023/08/23の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。