ゾルタン・ポズサー(Zoltan Pozsar)【27】OPEC+=BRICs+となれば原油は予言どおりBRICSの支配下に!
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加盟国の意見対立の結果2024年からBRICS11がスタート
BRICS会議に40カ国以上が参加を申請していたわけですが、色々と内部で動きがあったようです。「各国の利害の対立」が見えてきました。
まず「フランスのマクロン大統領の参加は拒否」されたそうです。ロイターに書かれているようにロシアと他の記事にありましたが中国が「スパイ疑惑で反対」にまわったようです。
次に「新規加盟国についても意見対立」があったそうです。「参加には5カ国の同意が必要」であり、中国が10カ国の参加を要請したのに対しインドは3カ国で、妥協点としてロイターに書かれているように、2024年1月1日からアルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)の6カ国の参加が認められ「BRICS11」となるようです。
添付記事によると購買力平価GDPは世界の36%となりG7を追い抜き、人口では47%とほぼ半分を占めるそうです。ゾルタンの主張していた「G7」対「グローバルサウス」体制が実現したようです。しかし、「G7以上に内部対立は存在」するようです。国境問題を抱える「中国とインドは二国間会談」を実施しました。
ロシアはエジプト、中国はイラン・サウジ・UAE、中国とブラジルがアルゼンチン、南アフリカがエチオピアの参加を支持したそうです。インドは宗教的対立が原因でしょうが、「エジプト・サウジ・UAEの参加には消極的」だったようです。
ゾルタンはBRICS+としてサウジとトルコまたはエジプトの名前を挙げていました。昨年12月の習近平主席の湾岸会議出席とそれに続く今年1月の北京でのサウジとイランの国交回復、ブラジルとアルゼンチンの共同通貨構想で「サウジ、エジプト、UAE、イラン、アルゼンチンは想定内」でした。
「想定外はエチオピアの参加とトルコの不参加」です。トルコメディアにあるように「40カ国以上がBRICS参加に興味を、22カ国が正式に参加を表明」していますが、「トルコは1人の使節を送っただけ」だったようです。トルコのBRICSへの関心はエルドアン大統領とプーチン大統領との個人的関係だけであり、「22カ国の中には名前があがっていない」ようです。
スウェーデンのNATO参加にもコーラン焼却事件で反対していましたが、7月には承認、これが米国のウクライナへのF16戦闘機供与へ繋がったそうです。「トルコは西側陣営に留まることを選択」したようで、西側にとって久しぶりの良いニュースといえるのではないでしょうか?
次回の会合は2024年11月にロシアのカザンで開催されるようです。
バイデン政権の強硬策は短期的には成功、中長期は?
国際的制裁を受けている「イランの参加によりBRICS加入は西側と対抗する事」だと米国から受け止められます。それが「トルコの参加をとどまらせた」のでしょう。
インドも、中国からの「サプライチェーンの移転など米国からの恩恵」を受けています。ロシアからの原油購入にネオコンを始め米国は怒っており、米国の制裁を恐れて「BRICS共同通貨への反対」を表明したそうです。
ゾルタンの過去の記事にあったように西側の搾取に怒り「レアメタル版OPEC構想」を唱えていたインドネシアのジョコ大統領。BRICS会議には出席したのですが、添付記事 にあるように先進国と途上国の格差はやめるべきなどと主張しましたが、「BRICSへの参加を迷っている」との声明を発表しています。
これはホワイトハウスのリリース にあるように、バイデン大統領のインドでのG20参加の途中にあたる「インドネシアでのASEAN会議の突然の不参加(ハリス副大統領が参加)が影響」したと言われています。インドネシアは以前の報道では「ベトナムやアルジェリア等の16カ国の申請メンバーの1国」でした。
このように「バイデン大統領のプレッシャーで翻意した前例が韓国」です。現政権になっても中国への半導体制裁にも1年の猶予をもらうなどの中立的態度でしたが、ゾルタンが解説した北朝鮮のミサイル発射の威圧が続く中での米軍撤退の可能性に躊躇したのか8月にはキャンプ・デービットで「日米韓3国の同盟強化」が決まりました。
日経アジアの記事に書かれているように、これは「3国の中国と北朝鮮の脅威に対抗する安全保障同盟」と捉えられています。「アジア版NATO」という記事も見かけました。「韓国は米国を選んだ」ようです。
朝日新聞の記事には東京電力による原発の処理水放出による「日本の海産物全面禁輸は想定外」とされていますが、「この同盟への報復なのは明らか」です。東洋経済の記事にあるように中国の反発が「尖閣問題以来」なのは「安全保障問題に関わる」からです。国内の不満を逸らすとありますが、海洋汚染の問題が海産物だけでなく「化粧品の不買運動に広がるには論理的に無理」があるでしょう。
このように「バイデン政権の圧力は、トルコ、インド、インドネシア、韓国が西側に留まるなど表向きは成功」しています。しかし、「各国の心の中はどう」なのでしょうか? サウジのように反発してBRICS側に参加した国もあるわけです。「ASEAN会議への不参加はアジアへの軽視」だという批判も出ています。
自国通貨取引や一帯一路の進展などで脱ドル化は進むが完全な脱ドル化は不可能!
中国に対する脅威から「ロシアとインドとの反対でBRICSコインは見送り」となりました。代わりにブラジルと新開発銀行は不満だそうですが「BRICSブロック圏内での自国通貨の使用促進」が決まっています。
「貿易においての自国通貨の使用が進んでいる」ことは何度も説明してきました。新たなニュースとしては旧ソ連構成国からなるユーラシア経済連合 間の取引では「90%がロシア・ルーブル建て」だそうです。ロイターに書かれていますが、「UAEからの原油輸入が初の米ドルではなくインドルピー建て」となっています。インドは他国ともルピー建て取引を行いたいそうです。
「BRICSの原材料輸出国から精製後の製品輸出国になる」という構想は以前から書いているように「中国の一帯一路構想」と合致しています。中国によるサウジの「ビジョン2030」や他の湾岸国やイランへの支援などで開始されています。ロイターの記事に書かれているように習近平主席はアフリカ同盟との会議に出席、「アフリカの工業化を支援する」と発表しています。
ロイターにありますが新開発銀行が8月の南アフリカランド建て債券に続き10月までにインドルピー建ての債券を発行するようです。UAEやブラジル、ロシアの通貨建ても続くそうです。
このように表面化はしていませんが、「脱ドル化はどんどん進んでいる」ようです。しかし、これらは「BRICSと将来の加盟国からなるブロック経済圏内部」の話です。フランスがBRICS諸国と自国通貨取引を始めたという例外はありますが、米国の輸入先首位がメキシコ、2位がカナダとなったように「ブロック経済化が進展」しています。「西側諸国との取引が米ドル建て中心なことには変化がない」でしょう。
原油の支配権がBRICS+に奪われ、オイルショックの再来も?
そしてゾルタンの予言していた「ペトロダラーの終焉とペトロ人民元の夜明け」が現実化してきました。
まず「ロシア原油禁輸の制裁」はロシア、中国、インド、イラン、サウジ、湾岸諸国がBRICSメンバーとなったことで「効果がなくなって」います。ゾルタンの主張したとおり安く原油を仕入れた「中国やインドは利益」を得て、そこから輸出される原油ではなく精油を輸入する「欧州の負担が増加」しています。
今回の「BRICS11の確立」でゾルタンの予言どおり「コモディティの占有が促進」されています。実は「エチオピアは鉱物資源国」のようです。特に原油においては上記のGDPと人口の添付記事に書かれていますが「39%の輸出、46%の埋蔵量、48%の生産」を占めるそうです。
さらに来年参加すると予想される「ベネズエラ、アルジェリア、カザフスタンを加えると石油とガスの9割をコントロール」することになるそうです。
ゾルタンの予言どおり、「コモディティを支配するBRICS+が制裁する立場、G7が制裁される立場」と逆転するわけです。「OPEC+=BRICS+」となり強力なカルテルが形成されます。
そしてゾルタンが以前の記事で触れていた「原油輸出航路拠点もBRICSが抑える」ことになるようです。ロシアの北極海、湾岸諸国の紅海、イランのペルシア湾、エジプトのスエズ運河がBRICSの支配下となります。インドネシアの不参加で免れましたが、インド湾から中国へと続く「海のシルクロード」が完成に近づいています。カルテルが強気にでたり、この原油輸出航路が妨害されると「1970年代のオイルショックの再来」もありうるわけです。原油やガスを輸入に頼る「日本や欧州は困難な立場」に立たされていくのかもしれません。
BRICSの動きからは目を離せなくなってきました。
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