日銀政策修正で円安加速はなぜなのか
日銀修正策甘く、日米金利差拡大と
対ドルで円相場は節目で且つ、介入警戒ラインとされる145円を突破(8月14日)した。
市場の見方は7月28日の日銀会合への思惑から相応の円上昇を見込んでいた(筆者を含め)が、結局、138円06銭をタッチしただけで、その後はアッという間の円売りモードとなった。
確かに日銀会合後の市場の関心が米国金利動向に戻ったことは事実であり、主要通貨も軒並み、下落傾向となったことが、それを立証している。
この尺度から今後を展望すると1ドル150円も近いという見通しになるという。では、この見方の概要を記しておこう。
7月28日に日銀が政策修正を決めた。長期金利の変動幅を事実上、0.50~1.00%まで容認する政策だと理解されたが、その後、円安が継続している。
日本の金利上昇だけでみれば、それは円高要因と受け取られやすい。では、なぜ、円高方向への政策修正が決定されたのに、為替レートは円安に向かうのか。
まず、日銀の決定についてだが、為替市場では7月の会合を前にして、7月7日頃から金融緩和の修正観測が広がって、ドル円レートが円高方向に修正された経緯がある。
より具体的には、事前には長期金利の変動幅が上下0.75%に拡大されて、日米長期金利差が縮小する予想が生じて、それが円高を促された。
実際には0.50%~1.00%までの範囲で日銀が長期金利の変動幅を認めていくものだった。これは、いきなり0.75%の長期金利を認めるというよりも、徐々に0.50~1.00%の範囲内で、金利上昇を容認するものという点で、より緩和的だと捉えた。
実際、7月31日は長期金利が0.60%程度に上がったのをみて、日銀は臨時のオペ(国債買入れ)を打った。臨時の買入れ3000億円を追加して、金利上昇圧力を抑えにかかった。
金利上昇ペースが速いときは日銀が牽制してくるという現実を市場が、しっかりと刻み込んだのである。
また、円安の反応は、日銀の政策修正が事前予想より緩和的だったことも、反動として出てきた面も色濃い。さらに、時間軸も多少変化した。
連続指値オペの発動ラインを1.00%にすると、おそらく長期金利がそこにタッチするのは相当にさらに先になるだろう。
ならば、次の段階の政策修正は先になるということだ。
これは、変動幅を0.75%に引き上げて、その後で1.00%にする場合よりも時間をかけるのではないかとの推察につながった。
日銀は、決定会合毎の上限変更ではなく、市場にある程度は任せることによって長期金利の落ち着きどころを探ろうとしていると、読み抜いたのである。
そうした手法の方が激変を回避できるため、大きな為替変動を引き起こしにくくなることは確かだ。
市場は、この日銀のアクションの狙いを見事に見抜いたのであるが、逆に、この日銀のテクニックが、その後の円安のスピードをフォローすることとなった。
日銀が、どれほど金利上昇をコントロールするのかは、まだ定かではないが急激な金利上昇を容認しないことが伝わる度に、為替は円安に振れやすいと解釈された。
長期金利の上昇が0.50~1.00%の範囲でゆっくりと進むとしても、そのペースをスムージングするために大量の資金供給が行われるという構図は、海外筋から見れば「主要先進国で唯一の政策金利マイナス国で、しかも、金利上昇を抑える為大量の資金供給を継続しているのは日本だけだ」と、判断するわけで、円売りを促進させるのは当然ということになる。
このロジックは、記者会見で植田総裁が述べていた話と重なる。
物価上昇リスクが長期金利上昇を促すとき、金利上昇を抑えようとすると、逆に金融緩和(追加的資金供給)が促されて、円安を通じて物価上昇リスクを大きくしてしまう。
植田総裁は、そうした矛盾をなるべく回避するために、変動幅を0.50~1.00%に広げていくと説明していた。
結局、どこまで円安が進むかは、日銀の金利上昇抑制にかかっている。もしも、0.50~1.00%の間での上昇に時間をかけようとすると円安は一段と進行する。
米国の金利動向に大きく左右されることは間違いないが、仮に米国金利が現状か、それ以上の利回りとなるのであれば1ドル150円も通過点にすぎなくなる。
しかも市場の主流的見方が主に、そのシナリオになりつつある。最近の焦点はFRBの利上げの打ち止めである。
7月は25bp(0.25%)の利上げを実施したので、6月時の見通しに沿えば、年内あと1回ということになる。9月、10月、12月のいずれかのタイミングでの実施となる。
しかし、・・・
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2023/08/17の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。