露ワグネルのアフリカでの実態
ロシアの民間軍事会社ワグネル(創設者=プリゴジン)の動向が、ロシアVSウクライナ戦争のなかで数多く報道されてきたが、いまだに実像の骨格が見えていない。
そうした中、西アフリカ・ニジェールで、7月上旬に軍事クーデターが起き、地域情勢の不安定化に周辺国や欧米が懸念を強めている。
ニジェールなどアフリカ西部の旧フランス植民地では、近年、クーデターが相次いでおり、ロシア民間軍事会社ワグネルが各国の軍部と、親密な関係を築いて影響力を拡大しているとも指摘されている。
以下に、アフリカにおけるワグネル、プリコジンの動向を記すことで、この組織の性格と方向性を浮き彫りにしたい。(尚、必ずアフリカの地図を見ながら、読み進んでいただき度い)。
ワグネルは2017年頃からアフリカ諸国に進出し、現地政府との契約により軍事訓練、武器・軍事ロジスティクス供与、要人保護、対テロ活動、反政府勢力鎮圧などを行なってきた。
進出先であるスーダン、リビア、マリ、中央アフリカ、モザンビーク、マダガスカルといった国々は、
(1)政治情勢が不安定であり内戦や紛争が続いている
(2)中央政府が脆弱であり、国軍・治安機関以外の軍事勢力
(反政府政府力、テロ組織など)が活動している
(3)豊富な天然資源(金、鉱物、石油、ウランなど)を有している
といった共通点を抱えている。
またワグネルは情報工作によって現地の反植民地感情を扇動し、欧米や国連の影響力排除を図ってきた。
例えばマリ(現在、クーデター中のニジェールの隣国)では、2020年8月の軍事クーデターの数ヵ月後にワグネルが進出した。
クーデターを受けて欧米諸国が支援を控える一方でロシアとワグネルは関与を強め、マリの軍事政権もワグネルの軍事力を頼るようになった。
その後、マリ国内ではSNSやマスメディアを通じて旧宗主国のフランスをはじめとする欧州諸国や国連への反発が高まったが、ロシアの関与が指摘される。
22年5月にマリ軍事政権は、フランスとの防衛協定の破棄を発表、その後8月には対テロ作戦に従事してきた駐留仏軍がマリから撤退した。
23年6月には国連マリ多面的統合安定化ミッションも期限を迎え、年末までに撤収することが決まった。
米ホワイトハウスのカービーNSC(国家安全保障会議)戦略広報調整官は、プリコジンが国連ミッションの活動終了に向けて、マリ政府に働きかけたことを把握していると述べた。
なお、ワグネルが影響力を強める中央アフリカからも、駐留仏軍が22年12月に撤退を完了させた。
22年7月23日、米財務省はマリにおけるワグネルの活動拡大を促進したとして、同国の国防相、空軍参謀長、同服参謀長を制裁対象とすると発表した。
ワグネルはシリアの空軍基地やリビア国内の複数の基地をハブとして利用し、アフリカ諸国に展開してきた。
地中海を挟んで欧州の対岸にあるリビアが、ワグネルのアフリカ進出の拠点になっていることを西側諸国は強く懸念している。
23年1月には、米バーンズCIA長官がリビアを訪問し、東部を実効支配し、ロシアと強いつながりを持つ「リビア国民軍」司令官との間で、ワグネルの撤退について協議した。
バーンズ長官は同司令官を含む関係者に対し、ワグネルとのいかなる協力関係に対しても明確かつ厳重な警告を伝えたという。
バーンズ長官の訪問直後に米国はワグネルを「国際犯罪組織」に指定し、圧力を強めた。
なお、リビアへの進出は2017年頃からと見られるが、これはリビア政府との契約によるものではなく、当時リビア内戦に介入し、「リビア国民軍」LNA司令官を支援していたUAE(アラブ首長国連邦)が資金提供を行なったとされる。
天然資源利権とロジスティクス
ワグネルを受け入れる多くのアフリカ諸国は財政難であり、十分な支払い能力を有していないことから、同社は治安維持や各種軍事活動の見返りとして、金やダイヤモンドといった資源の採掘権を獲得してきた。
例えば米CSIS(戦略国際問題研)の分析によると、ワグネルは2018年初頭に中央アフリカ共和国に進出して以来、金とダイヤモンドの採掘権を確保し、また木材産業に深く関与するようになった。
正確な計算は難しいものの、中央アフリカの事業だけで最大10億ドルの年間利益を得ることができるとの試算もある。
ワグネル関連企業は22年、一大金鉱山での採掘事業を拡大するための新たな許可を取得し、採掘能力を拡大させている。
また、同国ではこれまで地元の武装勢力がカカオ豆やコーヒー豆などの輸出用農作物に、独自に課税していたが、これをワグネルが乗っ取って徴税しているとされる。
ここで留意すべきは、 ・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/08/16の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。