円上昇は線香花火で終わりなのか
YCCの運用柔軟化を決定
7月28日、日銀は金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟化する措置を決定した。
これまで日銀は10年債利回りの変動幅を0%の目標値から「±0.5%程度」としていたが、「±0.5%程度」を目途とする、とより柔軟化した。
これは、+0.5%を上回る利回り上昇を認めない姿勢を維持すれば、利回りが上昇して上限に接近する局面で日銀が大量の国債買い入れを強いられ、それが日銀のバランスシートを拡大させる、国債市場の機能を低下させる、事実上の財政ファイナンスの傾向を強めてしまう、といった形で副作用を高める。
そうした副作用、弊害を減らすことが、今回のYCCの運用の柔軟化の狙いなのだろう。それを長期国債利回りが安定している今のタイミングで、先手を打って実行したというところか。
他方、今まで0.5%で実施していた毎営業日指値オペを1.0%の水準で行うと修正した。これは「±0.5%程度」の変動幅を柔軟化したうえで、+1.0%までの利回り上昇を認める決定のように見える。
しかし実際には1%は最後の守り、歯止めであり、日銀はそこまでの利回り上昇を容認するとは考えられない。
毎営業日指値オペを続ける一方、引き続き、「各年限において、機動的に(国債)買い入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する」としている。
日銀がどの水準まで10年債利回りを容認するのかについて、これから市場がそれを試すことになるだろう。
機動的な指値オペがどの水準で実施されるかが、事実上の新しい上限を探るうえで重要となる。
その水準は最も高くて0.70%~0.75%ではあるまいか。
日銀は今回の措置を政策修正ではなく、YCCの運用の柔軟か措置と説明し、金融市場の受け止め方も同様となるだろう。
マイナス金利解除などの本格的な政策修正にはなお距離があるとの金融市場の見方は変わらない。
日銀政策修正のドル円相場の視点
日銀の決定を受けてドル円は乱高下の展開となった。
一旦は138円台前半まで円高ドル安が進んだが、8月1日の海外で143円54銭まで戻しており、日銀会合後の円高は持続しなかった。
7月に入ってからの各種事前報道を受け、市場の期待が既に高まっていた可能性に加え、週末を前にしたポジション整理も海外時間での円安につながった可能性がある。
昨年12月と比較し、利上げ期待思惑が限られたことも円高インパクトを低減したようだ。
また、米経済指標がソフトランディングへの期待を高める内容となっていることも、市場心理改善によるキャリー取引への思惑を維持させ、円買いの動きを限定しやすかったと見られる。
もっとも、・・・
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2023/08/03の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。