米国経済ランディングの行くえ
「米景気は早晩腰折れし、年後半には株安に転じる。」
年初には多くのエコノミストらが23年の相場を展望してこう言った。
22年10月には債券市場でも早々に、3ヵ月物の利回りが10年物を上回る「逆イールド」が発生した。FRBも重視する景気後退サインは明らかにともっている。
地銀の相次ぐ破綻、政府の債務上限問題…。悪材料も重なったが、それでも株高基調が続く。米経済が良い意味で市場の描く最悪シナリオを裏切り続けたからだ。
米景気はなぜ悪化しないのか。そのミステリーを解くヒントの一つが最近になって見えてきた。
米消費者は新型コロナウィルス禍前よりなお豊かである-。
JPモルガンチェース研究所が900万人分の顧客口座を分析し、わかった新傾向だという。
23年3月末時点で4つにわけた所得階層のすべてで、銀行預金の中央値は19年より10~15%多かった。調査を担った専門家らはみる。大盤振る舞いのコロナ対策が依然、米経済を支えているというのだ。
20~21年に米政府は現金給付や失業保険の拡大といった景気刺激策に力を注いだ。
IMFのまとめでは総額6兆ドル弱におよぶ。コロナ流行中の行動制限も重なり、多くの消費者は現金をため込んだ。その後、物価や借り入れコストが急上昇しても、米市民らが支出を続けられた理由だ。
エンジンである消費が常に回り、米経済はたびかさなる危機を乗り越えてきた。7月20日付日経夕刊(ウォール街 ラウンドアップ。)
確かにNYダウ平均株価は22年3月以来の高値を付け、7月25日まで12連騰と6年5ヵ月ぶりの高値追いとなっている。
7月25・26日のFOMCで11回目の追加利上げ必至の状況でも「織り込み済」だという。
インフレ下でも好況という、信じ難き現実は年末に向けても続くのだろうか。続くとすれば、米金利も下がらないゆえ、ドルは基本的に強いままとなるが…
景気抑制への三つの懸念
秋口には三つの大きな景気を抑制する要因がある。
一つは、学生ローンの徳政令(大統領令)取り消しだ。
バイデン政権は22年8月に一度は4300億ドルの学生ローン残高について、返済不要という徳政令を出した。
しかし、今年6月に最高裁(前トランプ大統領が保守系の牙城に入れ替えた)が、これを違憲とした司法判断を示したため徳政令は取り消された。
結果として10月以降に新たに年間700~2160億ドルの返済が始まると推計されている。推計値の幅が広いのは、制度の複雑さに起因する。中間値は約1400億ドルで直近の名目GDP比は0.5%である。
二つ目は、コロナ禍でバラまいた給付金が年内に遂に底をつく可能性が高いことだ。
利上げや物価の高騰にもかかわらず、米国で個人消費が大きく減速しなかった最大の要因は、このバラマキを原資とする過剰貯蓄の存在だった。
米国全体の流動性預金残高は年内にはトレンドラインにまで減少するだろう。
これをもってコロナ禍に積み上がった給付金は使い尽くされるとみていい。
そして三つ目は、 ・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/07/26の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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