原油価格が大きく下落する!
サウジの追加減産の真相
原油価格の動向が世界経済の行くえを左右させ、その行くえが原油生産国側の意向を左右させる、という「スイング・プライス」であることは、誰もが知っているし、ときには大国を滅亡(ソ連邦)に導くことさえある。
だが得てして、エネルギー分野の専門家の多くは、目先の需給関係を柱に価格見通しを予測するがゆえ、大きな潮流の存在に気付かないままに見通しを誤ってしまうものである。
2016年1月以降断交状態にあったサウジアラビアとイランは、2ヵ月以内に大使館を再開させることを含め外交関係を回復させる旨、3月10日に合意した(中国等の仲介勢力によるものとされる)。
この合意に基づき6月6日にイランは在リヤド大使館を正式に再開した。
どの国同士も国交回復となれば、両国外務省高官や二国間で深く関係してきた省庁高官が、水面下で現状報告を重ねて大使館再開に至ることは当たり前である。
この国交回復の時期に重なるように6月4日に開催された「OPECプラス会合」閣僚級会合において、OPECプラス産油国は従来2023年末を期限として実施中であった減産措置を若干調整のうえ、2024年末まで延長したほか、当該会合開催に際しサウジは2023年7月(延長の可能性も示唆)に、日量100万バレルの自主的な追加減産規模の拡大を表明した。
その際、OPECの事務局長は「OPEC産油国の原油生産調整の目的は、原油価格を引き上げることではなく、世界石油需要を均衡させることにある」と言明した。
これにより、WTI原油先物は71ドル台から一気に75ドル台へと跳ね上がったが、表面から捉えると、どう考えてもOPECプラスとサウジの追加減産措置は唐突であった。
今になってわかったことだが、産油国イランの動向を知ったサウジが急遽、長期展望の追加減産を決めたのである。
6月8日、英ニュースサイトが「米・イランの核合意巡る合意が近い」と報じた。
ホワイトハウスは同日、イランの核開発を制限する代わりに、経済制裁を緩和する暫定合意に近づいているとの英ニュースサイト報道を否定(ロイター)。
米NSC(国家安全保証会議)の報道官は「この報道は虚偽で誤解を招くもの」と一蹴した。
さらに翌9日には米NSCカービー戦略広報調整官が「ウクライナへの侵攻に際し、ロシアがイランから無人機数百機の供給を受けるなど、両国間での協力関係を強めているものと見られる」との見解も明らかにした。
つまり、「米国がイランと核合意交渉」などあり得ない、というわけだ。だが、8日の英国ニュースサイトの情報は相当に詳しい内容であり、恐らく英国情報機関からの提供だった可能性が高い。
「イランの核合意正常化に向け同国と米国が暫定合意(イランが濃縮度60%以上のウラン濃縮を停止するとともに、IAEA=国際原子力機関との協力を継続する代わりに、米国がイランに対し最大日量100万バレルの原油輸出に加え、凍結中の資産等の利用を認める事)に接近しつつある」との旨。
そして、6月12日、イラン外務省は、「オマーンを仲介役としてイランは米国との間で核合意正常化に向けた協議を継続している」と明らかにした。
サウジの突然の追加減産決定は、この状況を入手したことによるものだった。
米・イラン交渉の柱とは
バイデン政権がイランと水面下で協議を再開していたことが分かった。
イランに拘束されているイラン系米国人の解放や、核開発に歯止めをかけることが狙いだ。
米国とイランの当局者によれば協議が再開される中、イラク政府がイランからの電力・ガスの輸入で25億ユーロ(約3900億円)の支払いを実行することを米政府は承認した。
この資金は米国の経済制裁によって凍結されていた。米当局者は、資金の凍結解除は協議とは無関係だとしている。過去にも凍結が解除されたことがあるが、今回は現地通貨でなくユーロでの実施となった。
関係者によれば昨年12月にNYで米・イラン当局者の協議が始まった後、ホワイトハウス関係者はオマーンを少なくとも3回訪問。オマーン当局者が双方の伝言を仲介した。
バイデン大統領は対イラン経済制裁の解除と引き換えに、同国の核開発を制限する核合意への復帰を選挙公約に掲げていた。
新たな外交努力には、イランとの緊張を緩和する狙いがある。バイデン氏にとっては政治的綱渡りだ。
イランはウクライナでの戦争に使われるドローンをロシアに提供するほか、ウラン濃縮を推進している。
ペルシャ湾岸では石油タンカーを拿捕するなど、今年に入り両国の緊張は激化してきた。
イラン政府は囚人解放と核開発制限を受け入れるのと引き換えに、米国の制裁によって国外にとどまっているエネルギー収入の支払いを求めている。
イラン当局者は、韓国にとどまっている自国の資金70億ドルへのアクセスと、囚人解放とをたびたび結びつけ、イラクで凍結されている石油・ガスダイキンを利用できるようにすることを要求してきた。
この件に詳しい韓国の前政権の当局者によれば、人道目的でこの資金の凍結を解除する方向でイランおよび米国との協議が継続されているという。
紆余曲折を乗り越えてきた
バイデン政権は大統領選が迫る中、イランとの交渉を最優先課題とすることを避けたい考え。正式な合意、またはそこにまで至らない合意でさえ、議会の審議を余儀なくされる可能性がある。
議会では共和党や民主党の一部がイランとの核合意に強く反対している。もし夏の間に緊張が落ち着けば、より広範に及ぶ協議場合によっては2015年の核合意を巡る協議の再開にもつながる可能性がある、と関係者は言う。
ただ、・・・
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2023/07/03の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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