鳥瞰すべきマイナカードの怖さ
閣議決定による国家の暴走
閣議決定とは、内閣総理大臣及びその他の国務大臣をもって、組織する合議体たる内閣の会議(閣議)で内閣の権限事項を決定することであり、憲法又は法律が内閣の意思決定を当然必要としている事項、例えば、法律案及び政令の決定は例外なく閣議決定の方式によることになる。
また、特に法令上の根拠がなくても、重要な政策に関する事項は閣議決定で決められることが多くなっている。
「今国会で60本の法案のうち58本が成立した」と報道は伝えているが、これは閣議決定した法案のうち、国会で審議すべき重要法案が60本中、58本が可決成立したという意味であって、閣議決定した法案や政令は年間、何百本もある。
逐一、全法案を国会審議していたら物理的に時間が無くなるので、閣議決定した多くの法案・政令は、そのまま法令化される。
国民の大多数は、「えっ?いつ、そんなことが決まったの?どこで誰が決めたんだ!」ということになっているのは、この「閣議決定」のためだ。
報道機関も滅多に記事化しないし、仮に掲載したとしても生硬な官報レベルのベタ記事なんぞ読むはずがないのである。
実は、この民主主義国家の便法こそが、とんでもない「国家の暴走」を招くのである。マイナンバー制度、マイナカード化も典型的な例である。
マイナポータルは必見なり
今年3月4日、「道路交通法改正案」が閣議決定された。24年度末までに運転免許証とマイナカードを一体化させることになった。
3月7日には、今後年金や給付金の受け取り口座も国民が拒否しない限り、マイナンバーと自動的に紐づけられることも閣議決定された。
さらには「マイナンバーを通して得た国民の個人情報をこちら(政府)が、何に使うかについては、国会を通さずにその範囲を拡大できるようにする」との文言も挿入された。
しかし、マイナンバーの利用範囲は税金、社会保障、災害対策の3分野だけである。
その大前提を閣議決定で見事に否定し、何の情報でも紐づけ出来るようにしたのだから中国の専制政治体制と同じである。
しかも「規定された事務に準ずる事務」であれば、法律を変えなくても省令の見直しだけで、マイナンバーの利用範囲(つまり、紐づけ分野)を変えられることになった。
一方でマイナンバーを巡り、21年以降、さまざまなトラブルが発生している。
デジタル化社会の浸透が行政やビジネスの生産性を、飛躍的に向上させるとの想いが強い有識者たちは、「ヒューマン・エラーにすぎない。防止策をしっかり構築すればいいだけのこと」と、泰然としているが、恐らくヒューマン・エラーではない基本的な制度エラーに、膨張していくのは必至であろう。
主なトラブルと政府の対応は以下の通り。
(1)マイナ保険証に別人の医療情報を紐づけ=7312件
→マイナンバーと、紐づく保険証情報を総点検
(2)コンビニで別人の証明書を誤交付=14件
→問題のあるシステムを使用していた123自治体の点検が終了
(3)公金受取口座を別人のマイナンバーに紐付け 748件
→誤登録を防止するシステム改修を近く終了
(4)マイナポイントを別人に誤付与 172件
→ポイントを正しく受け取れるよう対応
(5)マイナ保険証のトラブルで無保険扱いで医療費をひとまず10割請求 1700件余り
→そのような対応を避けるよう指示(6月中)する予定
(6)公金受取口座に家族名義の口座を紐付 13万件余り
→9月末までに、本人名義の口座へ変更するよう呼びかけ(但し実務上は難しい)
(7)年金情報を別人のマイナンバーに紐づけ 1件
→同様の事案がないか確認
(8)同姓同名の別人にマイナカードを交付 2件
→事務フローのチェックリストを、自治体へ配布予定
(9)別人の障害者手帳情報を紐づけ 62件
→同様の事案がないか確認
問題は、政府が決定した「マイナンバー情報総点検本部(本部長=河野デジタル相)が、これまでに問題が見つかった事項のデータだけでなく、マイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」で情報を閲覧できる(本人が暗証番号を入力するとできる)29項目すべてに点検範囲を拡大すると決め、今秋までに総点検を終えるとのこと。
本部をデジタル庁に置き、総務省、厚労省などが合同で点検や自治体との連携に当たる。
そこで、読者の皆さんに申し上げる。この「マイナポータル」29項目を是非、閲覧していただき度い。恐らく腰を抜かすことになる。
「えーっ、こんなことも把握されているのか!」と驚愕するはず。と同時に、その内容に間違いがあるかどうかを、どうして入力・紐づけをした公務員・委託業者側がわかるのか。わかるはずがない。
つまり、マイナンバー情報の総点検には既にマイナカードを保有している、8千万人の「本人」がマイナポータルの内容をチェックするしかないのである。
そうなると正誤の判断以前の問題として、「俺・私はこんな多くの個人情報が、マイナカードに紐づけされるなんて知らされていない!」とブーイングの嵐になるだろう。
したがっていい加減な「総点検」で終止符を打ちたいのが政府の本音なり。果たして結末は…
「閣議決定」の持つ意味は計り知れなく重いのである。
マイナ保険証の最終目的とは
パソコンやスマホで情報を検索すると、たちどころに関連した情報が押し寄せてくる。YouTubeなどで好みの映像を見ると、次々に関連した映像が示される。
自分の好みの情報に取り囲まれることを「フィルターバブル」という。それだけ個人情報が筒抜けになっているのである。インターネットを利用すればするほど、プライバシーは裸になっていく。
自動掃除機「ルンバ」を稼働させれば、室内の構造が外部に丸見えになってしまう。スマートメーターから発信される情報で、その家庭の行動パターンが丸見えになっている。
学校で行なわれるタブレットを用いた授業で試験問題に解答すると、タブレットの扱い方や触れ方も含めて、学力判定だけでなく性格判定までも行なわれる。
インターネットやクレジットカードなどで商品を購入すると、相手先にデータが蓄積され、消費者一人ひとりの好みや体の情報、さらには人格といったプライバシーまで、企業によって把握されるようになってしまった。
AIによる分析で、独身、交際中、既婚、離婚したなどの情報はすぐわかるという。
元アマゾンの技術者によると、フェイスブックの「いいね」の押し方で、政治的傾向やIQ、性格指向までわかるという。
日本という監視社会の中で、じわりじわりとプライバシーは蝕まれている。その侵害が究極のプライバシーと呼ばれる遺伝子にまでおよび始めた。
それを可能にしたのが、日々膨大な量が蓄積され続けているビッグデータと、そのデータを利用したAIによる解析である。
全ての人々の生涯管理へ
6月2日、従来の健康保険証を廃止し、マイナカードとの一体化をもたらすマイナンバー法等改正案が国会で可決成立した。
これにより・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/06/26の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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