中国経済の内実が浮上するリスク
明らかに経済が変調に
世界第2位のGDP大国=中国の経済が変調を来したとすれば、世界の金融・外為・株式市場に大きな影響を及ぼすだけに警戒を要する。
足下では製造業・非製造業ともに企業マインドは頭打ちの動きを強めていることが、確認されており、年明け直後こそ「スタートダッシュ」を切ることが出来た中国経済は、早くも息切れの様相を強めていると捉えられる。
足下の中国経済を巡っては、ゼロコロナ終了による経済活動の正常化が進んでいるにも拘らず、若年層を中心とする雇用環境の厳しさに加え、地方部を中心に不動産市況は、弱含む動きが続くなど資産デフレに家計部門や不動産セクターに対する逆資産効果も重なり、家計消費の足かせとなる状況が続いている。
こうした状況は足下の中国経済におけるディスインフレ圧力に繋がっているが、中国のみならず、世界経済の減速懸念の高まりを反映して、商品市況に調整圧力が強まる動きが確認されていることは、いよいよ同国経済がデフレ基調を強める可能性を示唆している。
他方、当局は4月の経済指標の公表に際して足下の景気が、上向いていることを好感する考えをみせる一方、過去に遡って不自然な形で経済指標が改定されており、実態と数字の間に乖離が生じている可能性も考えられ、景気判断を誤らせるとともに、導き出される政策的な「処方せん」にズレが生じることも懸念される。
さらに、足下の中国国内においてはオミクロン株派生型(XBB株)による感染が、再拡大しており、6月末にかけて感染拡大の動きが広がるとの見方が示される一方、昨年末以降のゼロコロナ終了を受けた検査数の減少により、感染実態は不透明な状況が続いている。
仮にそうした不透明感が国民の間に疑心暗鬼を招くとともに、経済活動に悪影響を与える事態となれば、先行きの景気に一段と下押し圧力が掛かることも考えられる。
中国経済のアキレス腱とは
中国には克服できない問題点がある。それは人口の高齢化、中進国のジレンマ、資本の過剰流動性、債務のバブル化である。
中でも足下で懸念されているのは「債務のバブル化」であり、土地バブルの崩壊として浮上している。中国の2022年のGDP成長率は3.0%と政府の目標(5.5%前後)の半分程度にとどまった。
李強首相によれば、2023年は5.2%成長を維持できるとし、その要因として、民営企業活動の活性化、経済開放の推進を挙げた。政府の報告によると、2023年1-3月の経済成長率は4.5%、輸出額の伸びは0.5%となっている。
一方、JPモルガンチェースは23年の中国のGDP成長率を5.6%と予測している。しかし、このデータには中国から欧米向けの海運量が大幅に減少していることは反映されていないと思われる。
その理由の1つに、中国の統計には多くの矛盾が存在し、上層部が決めた経済成長率を担当部署が辻褄を合せるように調整しているとされている。
「公表された経済成長率は、その半分が実際の数値だ」と伝える米欧のエコノミストは何人もいる。ただ、世界経済の資金循環から算出される毎年の「世界のGDP成長率」(IMFや世銀が公表)の「誤差・脱漏」項目の中でしか、その誤魔化しが反映されてこないので、なかなか実態は把握できない。
習近平国家主席の就任後、中国国家統計局は数万の統計を発表しなくなった。その主な理由は、中国の統計は多くの辻褄合わせの結果、数多くの矛盾が生じ、透明度と信頼性が低下しているためと考えられている。
ただ、経済知識の深い前首相=李克強氏が考案した「李克強指数」(鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費量の推移をベースとした数値)だけは、経済実態に近いとされている。
そうした中、地方財政の崩壊危機が米欧のエコノミストから指摘されている。
地方政府は経済成長を高めるため、インフラ建設投資に走ってきた。当然、財政赤字は拡大。膨らんだ負債バブルに歯止めをかけようと、今度は土地(使用権)をデベロッパーに売却し、財政の補填に回し始めた。
この結果、そうしたデベロッパーが建てた“爛尾楼”(未完成建物)や、“鬼城”(ゴーストタウン)と呼ばれる空き家が増え続けている。
鬼城という言葉は英タイム誌(2010年4月)が、内モンゴル自治区の高層マンション群などの、ゴーストタウン化を報じたことで、その名を世界に知られることになった。
地方政府はGDPのうちのGRP(域内総生産)を拡大させるため、民間デベロッパーに土地を売却。デベロッパーは大規模マンションの開発を行い、そこに転売目的の投資家が殺到した。
この手法により、中央政府に課された経済成長率などの目標は達成した。しかし、100万人が住めると言われた2014年ごろの「カンバシ(康巴什)新区」(内モンゴル自治区)の人口は10万人程度で頭打ちとなってしまった。
このような展開が中国各地で広がり、需要と供給のバランスは明白に崩れ、実に中国全土で34億人分(中国の全人口は14億5千万人で、そろそろピークアウトの時系列に突入する)に相当する空き家を抱えるに至った。
不動産バブルの崩壊で地方財政は危機に直面している。地方政府は債務を銀行に押しつけた結果、「不良債権」が発生。
銀行は「不良債権」を資産管理会社(AMC=アセット・マネジメント・カンパニー)に渡し、AMCは今後、売却・担保処分・債務再編・償却などの手法で膨大な月日をかけて処理することになる。
しかし、この時に大きな問題が生じる。地方の財政収入の多くは土地の販売に依存してきたため、多くの地方政府は深刻な財政赤字に直面するようになった。
多くの地方政府は公共交通サービスであるバス運行を停止、医療保険による個人口座に振り込まれる補助金を削減するなどで対処を試みた。
その結果、高齢者による大規模デモが多発。中国の医療保険は個人口座に振り込まれる補助金と運用に使われる基金の2つに分かれている。
地方政府は補助金の支払いを削減する一方で、基金の比率を高めたが、補助金を収入の一部とみなしていた高齢者には負の影響が大きいため、こうした大規模デモになるのは当然であろう。
財政問題とは別に地方における食糧不足も深刻化している。・・・
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2023/06/07の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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