3月FOMCは政策ミスなり
金融システム危機は第三局面も
3月26日付の日経朝刊1面トップ「米の中小銀、預金流出最大 大手行・MMFへ15兆円、リーマン時の倍 流動性の不安高まる」をどう解釈すべきか。
現在の米国金融、経済の位置付けと次なる展開の予想という観点から記して置きたい。
ドル円相場の見通しも、この観点をベースにしていくことが重要ではないか。
SVB(シリコンバレーバンクの破綻、それをきっかけとする銀行不安の高まりの背景には、銀行の財務を取り巻く金融環境の大きな変化がある。
歴史的な物価高騰への対応として、FRBは昨年3月以降、連続8回もの急速な利上げを行ってきた。また、短期金利(政策金利)の先行きの大幅上昇を予想して、10年国債利回り(長期金利)は昨年初の1.4%台から10月には4.2%台まで急上昇した。
その結果、銀行が保有する国債、政府機関債(住宅ローン担保証券が中心)などの債券に、大きな含み損が発生してしまった。
そうした債券を売却すれば実現損となり、含み損を抱えたままでも大手行では、規制上の自己資本が毀損されるなどの財務上の問題が発生した。
この局面が「第一局面」。
やがて短期金利の急速な引き上げによって長短金利差は縮小し、さらに長短金利が逆転する逆イールドが生じた。
短期で資金を調達し、貸出や長期債への投資など、長期で運用するビジネスモデルを持つ銀行にとって、逆イールドは利鞘を縮小させ、資金収益を悪化させた。
「第一局面」から銀行の財務環境が一段と厳しさを増すのが、この「第二局面」であり、現在はこの局面から次の局面に移る段階にある。
FRBが金融引き締めを行うときには常に長短金利差の縮小、あるいは逆イールドが深まる。
しかし今回はSVBの破綻の直前で、2年と10年国債の金利差は1980年代初頭以来のマイナス幅まで達していた。
さらに、高い物価上昇率が続く中で、FRBが利下げに転じる時期が遅れ、逆イールドが長期化するとの観測が銀行の資金収益の見通しを厳しいものとさせている。
このように、長期金利上昇による債券損失の拡大と逆イールドによる資金収益の悪化のいわば「二重苦」が、銀行(特に中堅行以下)の財務を圧迫する局面で今回のSVB破綻が生じたのである。
他行と比べて資産全体に占める債券投資の割合が高く、しかも価格リスクが大きく、逆イールド下で逆鞘が一段と大きくなる長期の債券投資に傾倒していたことから、SVBにとってこの「二重苦」は命取りに等しかった。
しかし、苦しみはすべての米銀に共通している。
3月26日の日経1面トップ記事は、すなわち次の「第3局面」入りを示唆しているものだ。「第3局面」に入っていけば、銀行不安、信用不安はさらに高まる可能性がある。
それは、今までの大幅利上げによって、いよいよ米国経済が悪化するステージだ。景気が悪化すれば、貸出先企業の信用リスクが高まり、銀行の貸出資産が劣化する。
そこで今度は信用コストの上昇が銀行の収益環境を損ねる局面へと入っていく。「二重苦」は「三重苦」に転化するのである。
その際には、経営基盤が脆弱な米国の中小、中堅銀行の経営不安や破綻が続き、信用不安が再度高まる可能性がある。
この「第三局面」に進めば、信用不安、市場の動揺の第2弾が生じる可能性がある。
FRBは今回も25bpの利上げを決定した。
金融機関にとっては、さらなる収益環境の悪化につながるわけで流動性資金の確保で、FRBなどが協力しても、景況が急速に鈍化してくればザルに水をあけているが如しなのである。
米国の預金者が、こうした読みを強め出したというのが3月26日の日経記事の意味なのである。
「もうFRBに期待できない」との見方が金融市場の動揺を増幅し始めたことを意味する。
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2023/03/28の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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