世界の政局・経済に激動か
伏魔殿のクレディ・スイス
UBSがクレディ・スイス(CS)を買収することでCSの経営危機問題は、ひとまずヤマを乗り越えた様に見えるが、それは明らかに違う。
世界の金融界の中でアンタッチャブルとされるスイスの大手行が大きく揺れ動いたということは、国際的なアンダーグラウンドで必ず、何かとてつもない動きが始まることを意味する。
それが対ロシア戦略なのか、中国に接近し、且つオイル高で、イニシアティブを強め始めたサウジアラビアへの警告なのか、さらには北朝鮮へのマネーロンダリング資金流入阻止なのか、は全く判断がつかないが、少なくとも只事では済むまい。
スイスはドイツ、フランス、イタリア、オーストリアに囲まれ、近郊にはリヒテンシュタインとモナコという極小の独立国がある。
この地政学からスイスの金融機関は「地球の闇のトンネル」と言われ、リヒテンシュタインとモナコが唯一の出入口になっている。
したがって今回の一連の動きの裏側に得体の知れない大きな本尊が存在していることは、ほぼ間違いあるまい。
大体、CSの筆頭株主がなぜサウジ政府系バンクなのか。UBSにしても内実は誰にも知らされていない。
さてクレディ・スイス(以下CS)は、近年、ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)を巡る有罪判決、モザンビークでの汚職への関与、元従業員と幹部が関与したスパイ・スキャンダル、顧客データのメディアへの大量リークなど不祥事が相次いだ。
さらに破綻した英金融ベンチャーのグリーンシル・キャピタルに関連した巨額損失も生じた。これらは、同行の内部統制の甘さというか、異様なビジネス・モデルを浮き彫りにした。
CSは、経営の抜本的な立て直しを狙って昨年10月27日付でリストラ計画を発表したが、その前後にCSは大きな困難に直面していた。
リストラ策の不透明性、そこでのリストラ費用増加への懸念から、株価が大きく下落していたのである。
同社の株価はリーマンショック前の2007年以降、下落傾向を辿っているが、昨年9月から11月にかけては特に大きく下落した。
足下での株価下落や経営不安はSVBの破綻によって突如引き起こされたものではなく、昨年来の問題がそれをきっかけに一気に露呈化されたという構図である。
無理筋のUBSによる買収
世界の金融危機の引き金となる可能性もあるCSの無秩序な破綻を回避しようとするスイス政府、金融当局の仲介により、先週末の間に買収スキームが一気にまとめられた。
08年のリーマンショック(グローバル金融危機)以降、世界で初めての銀行の大型買収劇となった。買収後は、人員削減などのリストラが避けられないとみられる。
特に問題を抱えていたCSの投資銀行部門は大幅に縮小される見込みだ。スイス当局は、週明け(3月20日)までと期限を切る形で両行に統合を強く働きかけていた。
また、合意できない場合にはCSの国有化も選択肢になる、としていた。CSは近年、一連の損失、不祥事、訴訟に見舞われ、顧客、市場からの信頼感を大きく低下させていた。
昨年10月発表のリストラ策でも信頼を回復することはできず、昨年10-12月期には巨額の顧客預金の流出が起こっていた。
足元では米国の銀行破綻をきっかけに、同行の経営不安が再燃し、再び顧客預金の流出が加速し、また、他の金融機関が、カウンターパーティ・リスク(同類と見られるリスク)を強く警戒して、同行との取引を控える動きを見せていた。
先週末時点で、同行はもはや自力で経営を立て直すことが難しい状況にあったとみられる。買収は30億スイスフラン規模の株式交換方式による。
17日終値でCSの時価総額は約74億フランであったことから、半分以下の値段で買収されることになる。交渉過程でCSは安値で買われることに抵抗していたとされる。
他方、UBSはさらに低い10億フランでの買収を主張していたとされ、買収に対する慎重さがうかがわれた。
そうした慎重姿勢のUBSに買収を受け入れさせる条件の一つとして政府が提示したのは、UBSが買収したCSの資産から損失が生じる場合に備え、90億フランの保証を与えることだ。
これは、UBS側が十分な資産査定を行う時間的余裕がないままに、今回の買収を決めなければならなかったことを反映している。
また、この結果、買収に伴い国民負担が生じる可能性が出てきたことから、今回の買収は政府による救済、いわゆるベイルアウトの性格を持つことになる。
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2023/03/23の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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