FRBの利上げペース加速は正しいか
米労働市場、遂に減速か
FRBの利上げ期間長期化とそれに伴うターミナル・レート(政策金利の頂点)のさらなる高水準が市場を席捲している。
当然ながらドル円相場の先行きに対しても、それまでの「1ドル=120円方向」から一転し、「1ドル=140円方向」へというのが多数派となった。
こうした読みの変化の柱となっているのが、米労働需給逼迫による賃金上昇圧力の粘着性(執拗性)を背景としたインフレの高止まりであることは、FRB議長の指摘からも明白である。
しかし、この構造にようやく終止符の兆しが見え始めた。
求人サイト大手のジップリクルーター(以下Z社)と、リクルートHD(以下R社)のデータによると、両社のサイトに搭載された昨年終盤の求人広告数の減少幅は、米労働省が発表した同期間の求人件数の減少幅よりも大きかった。
両社のレポートによると、求人件数は今年に入ってさらに減少している。
7日に発表の労働省の雇用動態調査(JOLTS)でも求人件数が減少し、今年の雇用減速が明らかになる可能性がある。
求人と雇用に関する政府データの堅調さは米経済が過熱し、高インフレが加速すると、FRB当局者が判断しているわけで、FRBは景気を減速させ、物価圧力を抑えるために金利を引き上げている。
今後、政府統計の動向が求人サイト大手2社のデータと一致すれば、FRB当局者は積極的な措置を取る必要性が後退する可能性がある。
労働省は7日に1月の求人数、9日に2月の雇用統計を発表するが、飲食店や病院、高齢者施設、保育所などの増員により、12月の求人数は増加し、1月の雇用者数も大幅増となった。
これは労働市場が依然として好調なことを示している。
ただ、テクノロジーや金融業界などでは大手企業が人員削減を発表、メタやアルファベット、マイクロソフトはいずれも今年、大幅な人員縮小に乗り出している。
求人情報会社が発表する数字は1ヵ月遅れで発表される政府統計よりもタイムリーだ。それらの指標は通常、長期的には同じ方向に動くが、その度合いは異なる。
エコノミストは将来の雇用に関する手掛りを得ようと労働需要の指標を注視している。
労働省が発表した12月の求人数は1100万件と、コロナ禍直前(20年2月)の水準を57%上回った。求人件数は数ヵ月にわたり下降基調だったが12月に上向いた(ピークは22年3月の1190万件)。
米求人情報サイト大手Z社とR社は、見解が異なった。
「12月の求人件数はコロナ前を26%上回る水準にとどまり、1月と2月はさらに減少した」と伝え(Z社)、Z社の親会社インディード社も、Z社ほどではないが、政府の数字よりも大きな落ち込みを見せた。
企業がとりわけ有料の求人広告を減らしていることを示し、欠員補充に多額の投資をすることに消極的になっている。
他の民間データからも求人件数の減少がうかがえる。
中小企業を代表するNFIB(全米自営業社連盟)や、企業が自社のウェブサイトに掲載した求人情報を調査しているリンクアップのデータも、求人件数が政府の最近の統計よりも大きく落ち込んでいることを示している。
Z社によると求人件数の減少が最も大きかったのがテクノロジーと金融の各業界。
テクノロジー業界の求人件数は、22年5月にはコロナ前の水準を約90%上回っていたが、先月はコロナ前の水準に戻り、金融業界も21年終盤はコロナ前を約80%上回っていたが、現在はコロナ前を下回っているという。
Z社のCEOは「われわれは明らかにマクロ経済の減速のさなかにあり、オンライン求人は実質的に全米で冷え込んでいる。一方で求職者は急増している。
雇用が減れば、求職者が仕事を見つけるのに時間がかかるようになる。それが実際、われわれが目にしているものだ」(3月1日)と述べている。
求人数を巡る民間調査との乖離
FRBは労働市場を減速させようとしている。
短期金利を引き上げることで家計と企業の支出を冷え込ませ、労働需要や賃金圧力、インフレを抑えようとしている。
経済とインフレを適度に減速させることがその狙いだ。求人件数の減少はその目標が達成に向かい始めた兆しかもしれない。
ただ、この傾向が広範な人員削減に発展すれば、FRBが期待していた減速はリセッションと失業率の上昇に転じる可能性もある。
それを左右する要因はいくつかある。
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(2023/03/08の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。)
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